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 ディアナの話を聞き終えたエリサは、その話が事実なら自分はとんでもない事をしたのではと思った。
(フリーク様とディアナさんの間に男女の関係がないとしたなら、私の方が誤ちをおかしたのでは……)
 フリークの気持ちは間違いなくディアナにあっただろう。しかしそれでも一線を超える事はないとディアナも言っていた。だが自分は愛されない寂しさと、その気持ちの拠り所となる人を見つけてしまった。そして男女の仲を交わすようになったが……
(でもきっかけはフリーク様……この事実は早くにわかっていたなら)
 わかっていたところでどうなっていたのか。結局自分は他に逃げていたのかもしれない。
 しかし全ての結果的にエリサはフリークの怒りを買い、マルディアスではなくフリークとの子を身篭ったのだ。
「エリサさん?」
「ご、ごめんなさい……」
「いえ、謝られる事はないのですが、重たい話をしたでしょうね。夫の死や夫がいながらに他の男性と会ったり……」
「そんな!でもディアナさんは子の母として、その方との一線を超える事はなかったじゃないですか」
「そうだとしても、夫に誤解を与えた事は事実で、私にはそれだけが唯一夫に謝りたいと思った事なんです」
 もしフリークと会わなければディアナの夫は死なず、だがしかしディアナもマルタも夫に苦しめられただろう。結果はどの道が良かったのかはわからないが、ディアナはフリークとの出会いに後悔しているのだ。
「ディアナさんは……思っている以上に心が綺麗な人なんですね」
「そんな事ないですよ。私は聖母でも聖女だもない普通の人間です。人を恨む事だってありますから」
 聖女と言われエリサの心は更に沈んだ。この国の繁栄と人々の暮らしを守る為に存在するはずの自分は、誤解と共に自ら罪の道へと進んだ。もうどこにも戻る事は出来ないと改めて実感した。
「さあ、こんな辛気臭い話ばかりしないでもっと娯楽にいきましょう。もう少しでマルタも帰ってくるでしょうし」
 ちょうどマルタはここへ戻る途中で友達に会い、友達と一緒に遊んで来ると言っていたのだ。
「エリサさんは嫌いな食べ物はあるかしら?」
「い、いえ特には……」
「ならお昼は私が適当に作りますね」
 母としてのディアナには女独特の女々しさは感じられない。
 罪をつくりそして子を宿したエリサにできる事は、無事この子供を産み守る事だ。強く優しいディアナのようになりたいとエリサは思った。


「エリサ様がフリーク氏の想い人の家に?」
「はい。調べたところここ二日そこに滞在しています」
 情報屋を使いエリサの居場所を調べるのは容易い。だがまさかディアナの元にいるとはマルディアス自身予想出来なかった。
「わかった。ありがとう」
 そう言ってマルディアスは情報屋に賃金を渡す。さて、これからどうしたものかと考えた。
「少し怯んでいたとは言え、エリサ様は私に好意を抱いていた。なのに音沙汰なく私の元からもいなくなるとは、エリサ様自身に何かあったのか?」
 エリサの真意がわからない以上、これからエリサとの付き合いをどうすればいいのかわからない。
「無理に押しても逃げるだろうな。さて、どうしたものか……」
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