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 それからディアナとは頻繁に顔を合わせるようになったフリーク。彼女は会うたびに何かしらの痣をつけている。どうしてそこまでしてそんな男と一緒にいるのか理解出来ない。
 だがそんな駄目亭主でも側にいるというディアナの決意。理解に苦しむフリークはどうにかして彼女と彼女の夫を放したいという気持ちが沸いた。彼女にはマルタもいる。マルタにまで被害が及ぶのは許しがたい事だ。

 そんな中、フリークは父親が持って来た縁談相手、エリサとの顔合わせの為に高級レストランの個室にいた。
(大人しそうな女だ。いかにも箱入り娘という感じだな)
 それがフリークの感じたエリサの印象だった。目の前で黙って食事をするエリサは、たまにチラチラとこちらを見ている。
(言いたい事があればはっきりと言えばいいものを……)
 フリークにとって意思疎通がはっきりとしない女性と言うのは苦手な部類の相手だ。ディアナのようにはっきりとその表情を表に出してくれる方がまだ扱いやすい。そんな風に、目の前に結婚する相手となる女性を前にしていてもディアナの事を考えていたフリークは、食事をする手がピタリと止まった。
(私はどうしてディアナの事を……)
 その意味が示す答えは出なかった。そしてエリサと一言も会話する事なく食事会も終わり帰宅をした。
 ディアナには自分の持ち合わせていたお金を毎度手渡していた。それで腹いっぱいに食をとってくれたらいい。そんな風に思っていたフリークだが、ディアナは毎度申し訳なさそうにしていた。本当は謝ってなどほしくない。笑顔が見たい。そんな風に思っていた時だった。
「フリーク様……少しいいですか?」
 雇っていた情報屋がフリークに耳打ちした。
「どうやらあのご婦人の旦那……最近女まで買い始めたそうですよ」
「何?」
 ディアナの周辺に何か異変がないか見張らせていたのだが、どうやら何かしらの異変はあったようだ。貧乏生活をするディアナ一家。その夫に女を買う金などないはず。そう思っていたが、ふと自分がディアナに手渡したお金を思い出した。
「成程な……私との事を知っていながら、資金ぶりがいいからと放っているか……」
「どうしますか?」
「そうだな……」
 正直金のことなどどうでもいい。それよりもこれ以上ディアナが悲しむ姿を見たくない。そう思ったフリークは情報屋に耳打ちをした。


 その数日後の事だった。ディアナとマルタが公園にいたのを見つけたフリークは、二人の元へと向かった。
「こんにちわ。フリークさん」
「あぁ」
 珍しく彼女には痣がなかった。だがその目は真っ赤で、少し腫れていた。マルタはいつものように元気よく走り回っている。
「どうかしたのか?」
「えぇ……先日、夫が亡くなったんです」
「そうか……」
「聞かないのですか?何があったか……」
「聞いて欲しいなら聞くが、正直興味はない」
 その答えに「フリークさんらしいです」と微笑を浮かべたディアナ。何も聞かなくても何があったかなどフリークには知っている。そう仕向けたのは自分なのだから。
 ディアナの旦那は買った女と一緒に死んだ。発見されたのは川で、二人で心中したのだと警察は思った。だが本当は違う。警察にも見えない程の薄く細い刃で二人は殺傷された。その刃には毒が塗られ、心臓に達し抜けばすぐに傷が塞がる為、一般的にはわかりにくいだろう。それは全てフリークが手配したものだ。これ以上、ディアナを悲しませない為に……
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