30 / 91
30
しおりを挟む
それからディアナとは頻繁に顔を合わせるようになったフリーク。彼女は会うたびに何かしらの痣をつけている。どうしてそこまでしてそんな男と一緒にいるのか理解出来ない。
だがそんな駄目亭主でも側にいるというディアナの決意。理解に苦しむフリークはどうにかして彼女と彼女の夫を放したいという気持ちが沸いた。彼女にはマルタもいる。マルタにまで被害が及ぶのは許しがたい事だ。
そんな中、フリークは父親が持って来た縁談相手、エリサとの顔合わせの為に高級レストランの個室にいた。
(大人しそうな女だ。いかにも箱入り娘という感じだな)
それがフリークの感じたエリサの印象だった。目の前で黙って食事をするエリサは、たまにチラチラとこちらを見ている。
(言いたい事があればはっきりと言えばいいものを……)
フリークにとって意思疎通がはっきりとしない女性と言うのは苦手な部類の相手だ。ディアナのようにはっきりとその表情を表に出してくれる方がまだ扱いやすい。そんな風に、目の前に結婚する相手となる女性を前にしていてもディアナの事を考えていたフリークは、食事をする手がピタリと止まった。
(私はどうしてディアナの事を……)
その意味が示す答えは出なかった。そしてエリサと一言も会話する事なく食事会も終わり帰宅をした。
ディアナには自分の持ち合わせていたお金を毎度手渡していた。それで腹いっぱいに食をとってくれたらいい。そんな風に思っていたフリークだが、ディアナは毎度申し訳なさそうにしていた。本当は謝ってなどほしくない。笑顔が見たい。そんな風に思っていた時だった。
「フリーク様……少しいいですか?」
雇っていた情報屋がフリークに耳打ちした。
「どうやらあのご婦人の旦那……最近女まで買い始めたそうですよ」
「何?」
ディアナの周辺に何か異変がないか見張らせていたのだが、どうやら何かしらの異変はあったようだ。貧乏生活をするディアナ一家。その夫に女を買う金などないはず。そう思っていたが、ふと自分がディアナに手渡したお金を思い出した。
「成程な……私との事を知っていながら、資金ぶりがいいからと放っているか……」
「どうしますか?」
「そうだな……」
正直金のことなどどうでもいい。それよりもこれ以上ディアナが悲しむ姿を見たくない。そう思ったフリークは情報屋に耳打ちをした。
その数日後の事だった。ディアナとマルタが公園にいたのを見つけたフリークは、二人の元へと向かった。
「こんにちわ。フリークさん」
「あぁ」
珍しく彼女には痣がなかった。だがその目は真っ赤で、少し腫れていた。マルタはいつものように元気よく走り回っている。
「どうかしたのか?」
「えぇ……先日、夫が亡くなったんです」
「そうか……」
「聞かないのですか?何があったか……」
「聞いて欲しいなら聞くが、正直興味はない」
その答えに「フリークさんらしいです」と微笑を浮かべたディアナ。何も聞かなくても何があったかなどフリークには知っている。そう仕向けたのは自分なのだから。
ディアナの旦那は買った女と一緒に死んだ。発見されたのは川で、二人で心中したのだと警察は思った。だが本当は違う。警察にも見えない程の薄く細い刃で二人は殺傷された。その刃には毒が塗られ、心臓に達し抜けばすぐに傷が塞がる為、一般的にはわかりにくいだろう。それは全てフリークが手配したものだ。これ以上、ディアナを悲しませない為に……
だがそんな駄目亭主でも側にいるというディアナの決意。理解に苦しむフリークはどうにかして彼女と彼女の夫を放したいという気持ちが沸いた。彼女にはマルタもいる。マルタにまで被害が及ぶのは許しがたい事だ。
そんな中、フリークは父親が持って来た縁談相手、エリサとの顔合わせの為に高級レストランの個室にいた。
(大人しそうな女だ。いかにも箱入り娘という感じだな)
それがフリークの感じたエリサの印象だった。目の前で黙って食事をするエリサは、たまにチラチラとこちらを見ている。
(言いたい事があればはっきりと言えばいいものを……)
フリークにとって意思疎通がはっきりとしない女性と言うのは苦手な部類の相手だ。ディアナのようにはっきりとその表情を表に出してくれる方がまだ扱いやすい。そんな風に、目の前に結婚する相手となる女性を前にしていてもディアナの事を考えていたフリークは、食事をする手がピタリと止まった。
(私はどうしてディアナの事を……)
その意味が示す答えは出なかった。そしてエリサと一言も会話する事なく食事会も終わり帰宅をした。
ディアナには自分の持ち合わせていたお金を毎度手渡していた。それで腹いっぱいに食をとってくれたらいい。そんな風に思っていたフリークだが、ディアナは毎度申し訳なさそうにしていた。本当は謝ってなどほしくない。笑顔が見たい。そんな風に思っていた時だった。
「フリーク様……少しいいですか?」
雇っていた情報屋がフリークに耳打ちした。
「どうやらあのご婦人の旦那……最近女まで買い始めたそうですよ」
「何?」
ディアナの周辺に何か異変がないか見張らせていたのだが、どうやら何かしらの異変はあったようだ。貧乏生活をするディアナ一家。その夫に女を買う金などないはず。そう思っていたが、ふと自分がディアナに手渡したお金を思い出した。
「成程な……私との事を知っていながら、資金ぶりがいいからと放っているか……」
「どうしますか?」
「そうだな……」
正直金のことなどどうでもいい。それよりもこれ以上ディアナが悲しむ姿を見たくない。そう思ったフリークは情報屋に耳打ちをした。
その数日後の事だった。ディアナとマルタが公園にいたのを見つけたフリークは、二人の元へと向かった。
「こんにちわ。フリークさん」
「あぁ」
珍しく彼女には痣がなかった。だがその目は真っ赤で、少し腫れていた。マルタはいつものように元気よく走り回っている。
「どうかしたのか?」
「えぇ……先日、夫が亡くなったんです」
「そうか……」
「聞かないのですか?何があったか……」
「聞いて欲しいなら聞くが、正直興味はない」
その答えに「フリークさんらしいです」と微笑を浮かべたディアナ。何も聞かなくても何があったかなどフリークには知っている。そう仕向けたのは自分なのだから。
ディアナの旦那は買った女と一緒に死んだ。発見されたのは川で、二人で心中したのだと警察は思った。だが本当は違う。警察にも見えない程の薄く細い刃で二人は殺傷された。その刃には毒が塗られ、心臓に達し抜けばすぐに傷が塞がる為、一般的にはわかりにくいだろう。それは全てフリークが手配したものだ。これ以上、ディアナを悲しませない為に……
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました
榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。
私と旦那様は結婚して4年目になります。
可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。
でも旦那様は.........
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる