上 下
25 / 91

25

しおりを挟む
 目が覚めた時、そこには知らない天井が広がっていた。
「ここは……?」
「気がつきましたか?」
「オルカお姉様……」
 ベッド側に置かれた椅子に座ってエリサを見ていたのはオルカだった。
「あの、ここはもしかして城の中ですか?」
「そうよ。貴女あの後倒れたのよ」
「そ、そうでしたね」
 突然気分が悪くなり、胃のあたりを圧迫されてよくわからないまま倒れたのだ。
「そのままでいいから聞きなさい。貴女はルディアース家のあの者と契りを交わしましたか?」
「お、お姉様?」
「正直におっしゃい」
「……はい」
 その言葉を聞いたオルカは大きなため息を漏らす。どうやらエリサを責めているわけではないようだ。
「もしもレーエンスブル家との縁を切って、ルディアース家に行ったとして貴女はあの者と一生添い遂げる事が出来ますか?」
「さ、先程から何を言ってるのですか?オルカお姉様……」
「答えなさい。これは貴女の今後にも関わる事ですよ」
「もちろん……添い遂げます……」
 少し言葉が詰まってしまったエリサに「そう……」とオリカは言ってエリサの手に自身の手を添えた。
「貴女があの者をどこまで知っているかはわかりませんが、あの者の出自を知っていますか?」
「ど、どういう事ですか?」
「これは王家王族の一部しか知らない話です。マルディアス・ルディアースは本当の意味でのルディアース家の嫡男ではないのです」
 その言葉にエリサは目を点にさせる。それにどうしてそんな事を突然言いだすのか意味がわからなかった。
「あの者の心にあるのはおそらく復讐心。王族に対してのね……」
「ま、待ってください!おっしゃってる意味がわかりません」
「わかりませんか?あの者の母親と、元王は繋がっていたのです」
「えっ?つまり……」
「愛人の子と言った方がわかりやすいかしら?」
 全く知らないし、知られない事実なだけに、エリサは衝撃が強かった。
「で、ですがそれと復讐とがどう繋がるのか……」
「この事を知るのは古参の貴族です。故に大昔ルディアース家はスキャンダルに見舞われました。母親の方は否定しましたが、その当時の当主は頭を相当悩ませて、病を患ったとか?」
 その後、向けられる罵詈雑言や非難に耐えられなくなった母親は自殺。父親も病で数年前に亡くなったそうだ。母親と元王の真意はともかく、父親は母親の言い分をずっと信じていそうだ。
「あの者は古参の貴族を嫌っています。そして母親と、父親の命を奪った貴族へ復讐をするはずです」
「そんな!マルディアス様はそんな事……」
「なら本人にお聞きなさい」
 例え真実として、マルディアスがそれをエリサに話してくれるだろうか。
「それと……貴女の体調ですが、貴女は今、妊娠しているそうよ」
「えっ?」
「あの者との行末を聞いたのはこの為でもあるの。真実を知る覚悟を決めているのかどうかね」
 自分とマルディアスの間に子供?
 エリサの頭が真っ白になった。だがすぐに「違う」と結論を出す。
(この子は……私とマルディアス様の子供じゃない。フリーク様との子供……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。 皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。 他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。 救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。 セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。 だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。 「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」 今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun
恋愛
相思相愛の婚約者と後半年で結婚という時、彼の浮気発覚。そして浮気相手が妊娠…。 婚約は破棄され、私は今日もいきつけの店で一人静かにお酒を飲む。 少し離れた席で、似たような酒の飲み方をする男。 そのうち話すようになり、徐々に距離が縮まる二人。 しかし、男には家庭があった…。 2024/02/03 短編から長編に変更しました。

【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です

堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」  申し訳なさそうに眉を下げながら。  でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、 「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」  別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。  獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。 『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』 『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』  ――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。  だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。  夫であるジョイを愛しているから。  必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。  アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。  顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。  夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。 

旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。 私と旦那様は結婚して4年目になります。 可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。 でも旦那様は.........

婚約者の浮気をゴシップ誌で知った私のその後

桃瀬さら
恋愛
休暇で帰国中のシャーロットは、婚約者の浮気をゴシップ誌で知る。 領地が隣同士、母親同士の仲が良く、同じ年に生まれた子供が男の子と女の子。 偶然が重なり気がついた頃には幼馴染み兼婚約者になっていた。 そんな婚約者は今や貴族社会だけではなく、ゴシップ誌を騒がしたプレイボーイ。 婚約者に婚約破棄を告げ、帰宅するとなぜか上司が家にいた。 上司と共に、違法魔法道具の捜査をする事となったシャーロットは、捜査を通じて上司に惹かれいくが、上司にはある秘密があって…… 婚約破棄したシャーロットが幸せになる物語

処理中です...