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 住まいを超高級マンションへと移してから一週間程が過ぎた。
 まだまだ慣れない事の方が多いが、アレンとの関係は一応良好ではある。この一応というのは日本人と外国人の価値観の違いなのだが……
「あら、随分とお疲れね。もっとシャキッとしなさい」
 そう澤永に指摘されるも、陽菜は引きつった笑みしか浮かべられない。
「あんなハイクラスのマンションに住んで、贅沢三昧なのに、何か不満があるの?」
「あっ、設備は凄いです。いろいろと満足です」
「ふーん……つまりその疲れた表情は夜の方ね?」
 ビクリと肩を震わせた陽菜。とてもわかりやすいと澤永はため息を漏らした。
「あなたね。相手は日本人じゃないんだからそれくらいわかってたでしょ?」
「いや、外国人の方と付き合った事ないから知らないですよ!まさかあんな毎晩……」
 そう。陽菜がお疲れなのは目下夜の営みに関してだ。パートナーとの性行為にそれほど積極的でなく、むしろ週何回などと決めている場合や、セックスレスが多いと言われる日本人。だか外国人の性行為に対する考えは日本人とは全く違うものだった。
「知り合いがオーストラリア人と付き合ってた時、二日もセックスがないとセックスレスだって相手に嘆かれた事があるって聞いたけど……」
「まさにそんな感じです……一緒に暮らすようになってほぼ毎日で、私の体力は限界です」
「うーん……一晩で回数を稼がれるのと、毎晩どちらがいいかよね?まぁ、毎晩回数多くても困るだろうけど」
「そんなの死んでしまいます!」
 世にも恐ろしいといった態度を見せる陽菜。まさかほぼ毎晩のように求められるとも思わなかった。しかも陽菜自身綺麗に流されている。
「知り合いはセックス対策に金柑なんかの柑橘クリーム全身に塗りたくってるって言ってたわ」
「何ですか?その対策……」
 虫除けか何かかと思ってしまったが、セックスが最上の愛情表現でもある外国人にとって、陽菜自身無下にも出来ないが、せめて回数は減らして欲しいところだ。
「まぁ、こればかりは慣れるしかないわね」
「やっぱり慣れですか?」
「彼を好きならあなた自身が努力しなさいよ」
「努力ですか?」
「幸いあなたのマンション、フィットネスジムあるんでしょ?ならそこで体力つけなさいよ」
 フィットネスジムと言われ、存在は知っているがマンションに住むセレブ御用達と思って使おうとも思わなかった。
「わざわざ別のとこに行くよりもいいじゃない。彼が好きなら努力よ。じゃなきゃ他の女に取られるわよ」
 好きを認識したばかりだ。他の人の所に行かれるのは仕方ないと思う反面、それは嫌だと思った。
「わかりました!私、体力つけます!」
 単純明解な陽菜に澤永はクスクスと笑った。おそらく話し合いでセックスの回数を譲歩してもらおうとしても、アレンは悲しそうな表情で「ヒナは僕の事愛してないの?」と聞かれるのが目に見える。ならこちらが体力をつけるまでだ。
 そうと決まれば善は急げなので、今日の夕方に申し込みの手続きをしようと決意した。
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