モブだった私、今日からヒロインです！

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「まさか笹川なのかに続き、今度は山下さんがスキャンダルの的ですか……」
　大きなため息と共に週刊誌をアレンのデスクに置いた伊澄。
　朝一番にここに呼び出された陽菜は、渋い表情をしながら陽菜に呼び出した経緯を説明する。
　デスクに置かれた週刊誌の見開きページに、でかでかと写真が掲載され、その写真にはアレンと陽菜が写っていた。
「これ……この前コンビニ行った時の！」
　陽菜は一般人なので目元によくある黒い線が入っているが間違いなくコンビニに行きスイーツを買った時のものだ。
　その見出しには「アレン氏の本命？深夜のコンビニデート」などとご丁寧な書き方をしているが、そもそも深夜帯ではない。二十一時台だ。だがそこは週刊誌なので、エグい事も書かれている。
　笹川なのかは遊びだったのか？それとま笹川なのかと付き合う為のフェイクなのか？二重交際などと、知ってる人からすれば笑える中身だが、知らない人間からしたらアレン最低だの、笹川なのかはどうなの？といった反応だろう。
「あぁ、だから朝からヒースルー本家がやかましく電話してきたのか」
「えっ？どいういう事？」
「つまり日本国内のスキャンダルではなく、世界的な発信をされたみたいだね」
　ケロっととんでもない事を言ってのけるアレンに、陽菜は血の気が失せる。
「プライベートでのアレン様の周囲にはＳＰがいるのでと安心してましたが、まさかそのＳＰの目を掻い潜るとは……」
「それではＳＰをしている意味はないな。解雇にして人員を入れ替えるか」
「そ、そこまでしなくてもいいんじゃ？」
「けど事態はそれ程大きく動いたんですよ」
　そう真剣な表情で言う伊澄の目が怖い。
「ですが一週刊誌にしてはよくここまで我が社のＣＥＯを取り上げるものだと思って調べたら、笹川なのかの時と同じ週刊誌に加え、記事を書いた人物も同じです。これを私は笹川なのかの報復とみますね」
「ほ、報復……何故そんな事」
「簡単ですよ。アレン様へ今後近寄らない様に言った事や、アレン様に素気無くされた事への恨みでしょうね。笹川なのかは自分に対して絶対的自信があるように私には見えますから」
　さすがの観察眼とも言えようか。だがこの事によって伊澄の怒りに火が着いたのも間違いはない。
「まさかここまでわかりやすい喧嘩を売られるとは思ってもみませんでしたがね」
「い、伊澄さん！落ち着いて下さい！」
「私は至って落ち着いていますよ。さて、どうやって懲らしめて差し上げましょうか？」
　本気な伊澄を止めることは無理だとアレンは言うが、当本人は本当に何一つ動じていない。
「まぁ、今後の反応次第ではヒースルーの力が出るかもしれないね」
「そ、そっちの方が怖いわ！」
　世界的財閥と一アイドル。もっと言えば日本の銀行の頭取ご令嬢だ。勝負に出てどちらが負けるかは目に見えてわかる。
「私としては出来るところまでは自分の力でなんとかします」
「わかった」
「いやいや、何サラリとヤクザみたいな話してるんですか？」
「山下さん！貴女先程から無関心ですが、これは貴女にも関わることですよ。いいですか？こらまでと同じはもう無理なのです。大人しく身を引くか、アレン様と一緒になるか。それをよーく考えて下さいね」
　ぴしゃりと言った伊澄の迫力に負けた陽菜は、大人しく「はい」と返事をした。