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言い争いをしている陽菜とアレンの席に、四十前後の男性がやって来た。
「ご注文はお決まりでしょうか?ヒースルー様」
「カズ!ホテル支配人がわざわざここまでやって来るとは驚いたよ」
「ちょうど数日ここを離れておりまして、今宵はこちらでお食事をなさると聞いて参りました」
品のいいこの男は東宮寺和史と言って、このホテルのオーナーらしい。だが東宮寺のはこのホテルのオーナーに限らず、日本のホテル王一族なのだと教えてもらった。さすがはセレブはセレブを呼ぶものだと感心していた陽菜。
「本日はいい子羊肉が手に入っているらしいですが、いかがしましょうか?」
「そうだな。ならその肉を使ったコースで、ワインも合うものを見繕ってくれ」
「畏まりました。では失礼します」
注文を受け去って行く東宮寺は、まさに日本の紳士と言うに相応しい出で立ちだ。
「まさか支配人自らが来るとは思いませんでしたよ」
「まぁ、半分は冷やかしだろうけどね。何せああ見えてカズはかなりのドSだからね」
「な、成程……」
このアレンの話をどこまで信じていいのかはわからないが、人は見た目によらないという事だろう。そうしているとまず赤ワインが運ばれて来た。どうやら挨拶だけだったらしく、やって来たのは店の店員だ。
「それじゃヒナ。乾杯」
「乾杯……」
一口飲んで見ると、ブドウのフルーティな味が口の中に広がる。ワインは専門外なのだが、この味というより。アレンが注文したものならかなりの高額ワインだろう。
(なんだか格付けでもしてる気分……)
正直高いか安いかは貧乏舌な陽菜にはわからない。だがきっと高い味はこんなのだろうと記憶に刻む事にした。
そうしてワインの味をかみしめていると、コースの前菜が運ばれて来た。前菜はブイヤベースのゼリー、スープはヴィシソワーズ。メインが子羊肉のクレピット包み焼きだ。おすすめされただけあって、子羊肉はとても美味しく、ワインに合う料理だ。
「こういうの食べた事ないからすごく感動です」
「そう?ヒナとだったらいつでも行くし、連れて行くよ」
「は、はは……でも毎日はきついですよ」
「そうかな?まぁ、美食の国育ちのヒナにはちょっと油強いのかな?」
「かもしれませんね。ごく一般的な日本人にとってフレンチって何かのお祝い事みたいなものですから」
「なら今日は二人だけの夜のお祝いだね」
どこでそんなキザな言葉を覚えたのだろうかと思った。
二人はフレンチを堪能した後、同じ階にあるバーへと向かう。ここではカウンター席でお酒を飲むというスタイルだが、このホテルの別館にあたる場所では、最上階と屋上がバーとなっているようで、そこから夜景を見ながらお酒を楽しむのだとアレンに教えてもらった。
「今度ヒナを連れて行きたいな」
「まぁ、それは伊澄さんがいいと言ってからでしょうね。今ホテルの外を出たら間違いなくパパラッチに問われるでしょうから」
「面倒だよね。どうしてパパラッチっていうのは個人の生活を嗅ぎまわるのが好きなのかな?」
そこはセレブのスキャンダル的なものが一般大衆の好物だからだろう。その一般人にいないアレンにはよく理解出来ない事なのだ。二人でお酒を楽しんだ後、各々のホテルに戻ろうとエレベータ前にいた時だった。
「あっ!いた!」
どこから出しているのだろうと思う程の鼻に着く声が背後から聞こえ振り返ると、そこにはテレビで見るよりも華奢で、薄桃色のワンピースを着た笹川なのかがいた。
「えへっ、会いたくなって会いに来ちゃった!」
「ご注文はお決まりでしょうか?ヒースルー様」
「カズ!ホテル支配人がわざわざここまでやって来るとは驚いたよ」
「ちょうど数日ここを離れておりまして、今宵はこちらでお食事をなさると聞いて参りました」
品のいいこの男は東宮寺和史と言って、このホテルのオーナーらしい。だが東宮寺のはこのホテルのオーナーに限らず、日本のホテル王一族なのだと教えてもらった。さすがはセレブはセレブを呼ぶものだと感心していた陽菜。
「本日はいい子羊肉が手に入っているらしいですが、いかがしましょうか?」
「そうだな。ならその肉を使ったコースで、ワインも合うものを見繕ってくれ」
「畏まりました。では失礼します」
注文を受け去って行く東宮寺は、まさに日本の紳士と言うに相応しい出で立ちだ。
「まさか支配人自らが来るとは思いませんでしたよ」
「まぁ、半分は冷やかしだろうけどね。何せああ見えてカズはかなりのドSだからね」
「な、成程……」
このアレンの話をどこまで信じていいのかはわからないが、人は見た目によらないという事だろう。そうしているとまず赤ワインが運ばれて来た。どうやら挨拶だけだったらしく、やって来たのは店の店員だ。
「それじゃヒナ。乾杯」
「乾杯……」
一口飲んで見ると、ブドウのフルーティな味が口の中に広がる。ワインは専門外なのだが、この味というより。アレンが注文したものならかなりの高額ワインだろう。
(なんだか格付けでもしてる気分……)
正直高いか安いかは貧乏舌な陽菜にはわからない。だがきっと高い味はこんなのだろうと記憶に刻む事にした。
そうしてワインの味をかみしめていると、コースの前菜が運ばれて来た。前菜はブイヤベースのゼリー、スープはヴィシソワーズ。メインが子羊肉のクレピット包み焼きだ。おすすめされただけあって、子羊肉はとても美味しく、ワインに合う料理だ。
「こういうの食べた事ないからすごく感動です」
「そう?ヒナとだったらいつでも行くし、連れて行くよ」
「は、はは……でも毎日はきついですよ」
「そうかな?まぁ、美食の国育ちのヒナにはちょっと油強いのかな?」
「かもしれませんね。ごく一般的な日本人にとってフレンチって何かのお祝い事みたいなものですから」
「なら今日は二人だけの夜のお祝いだね」
どこでそんなキザな言葉を覚えたのだろうかと思った。
二人はフレンチを堪能した後、同じ階にあるバーへと向かう。ここではカウンター席でお酒を飲むというスタイルだが、このホテルの別館にあたる場所では、最上階と屋上がバーとなっているようで、そこから夜景を見ながらお酒を楽しむのだとアレンに教えてもらった。
「今度ヒナを連れて行きたいな」
「まぁ、それは伊澄さんがいいと言ってからでしょうね。今ホテルの外を出たら間違いなくパパラッチに問われるでしょうから」
「面倒だよね。どうしてパパラッチっていうのは個人の生活を嗅ぎまわるのが好きなのかな?」
そこはセレブのスキャンダル的なものが一般大衆の好物だからだろう。その一般人にいないアレンにはよく理解出来ない事なのだ。二人でお酒を楽しんだ後、各々のホテルに戻ろうとエレベータ前にいた時だった。
「あっ!いた!」
どこから出しているのだろうと思う程の鼻に着く声が背後から聞こえ振り返ると、そこにはテレビで見るよりも華奢で、薄桃色のワンピースを着た笹川なのかがいた。
「えへっ、会いたくなって会いに来ちゃった!」
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