モブだった私、今日からヒロインです！

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　アレンのお世話をするようにと言われた陽菜の、おそらく最初の仕事がやって来た。それは否応なしにやってくるものだ。
　寝る前に伊澄から電話が来てよろしくお願いしますと直接言われてしまえばやらざるおえない。
　よしっ！と気合を入れた陽菜は、隣で寝泊まりするアレンの部屋のインターホンを鳴らす。
「アレンCEO。朝です。起きて下さい」
　だが何の返事もない。おかしい……何かあったのか？そんな風に若干心配になった所で、別の部屋の扉が開き、黒スーツの男が陽菜に近寄って来た。
「えっ？まさか……」
　陽菜の部屋と、アレンの部屋を囲むようにして二部屋（ファミリー住まいの部屋）もアレンがジャックしてしまったのではないか？出て来た黒スーツは間違いなくアレンのSPだ。
　SPは陽菜に鍵を渡し、何も言わずに部屋に戻った。
「も、もしかしなくてもこの部屋の鍵よね……開けて起こせって事？」
　罠感満載のこの鍵に陽菜は最大級の警戒を見せる。本音で言えばそのまま放置して会社に行きたい所だが、伊澄から言われているのもあってそれが出来ない。
「えーい！起こして去ればいいよね！」
　腹をくくった陽菜はいざ、鍵穴に鍵を差し回す。ガチャリと音がし、開錠を確認すると、そっと部屋の中に足を踏み入れる。
「し、失礼しまーす……」
　そろりそろりと中に入る。玄関は普通だ。だが廊下の先にあるリビング。そこを見た瞬間にギョッとした。
「な、何……これ……」
　壁にはバカデカいテレビ、ガラスだろうがやたら光沢というか高級感があるテーブルに黒張りの皮のソファ。一応リビングに合わせたのだろうが大きい。天井からはシャンデリアが下げられている。
「ここって独身者とか単身者向けの１LDKだよね？なんでこんな金持ちマンションに置いてあるもののミニチュア版みたいなものが……って、CEO金持ちだわ」
　とても独身者や単身者向けとは思えない調度に唖然としつつ、ここにアレンがいないという事は、その隣にある三畳ほどの部屋にいるという事だ。
「想像出来る分、行きたくないんだけど」
　これは仕事。これは仕事と言い聞かせ、三畳の部屋を開ける。
「う、うわぁぁぁ！」
　そこには部屋いっぱいのベッド。そこに寝転がるアレンは全裸だった。そのあられもない姿に陽菜は戦々恐々とした。
「ん？あれ？ヒナ？」
　さすがに今の陽菜の叫び声でアレンは目覚めたようだ。
「おはようヒナ。朝一番にヒナの顔が見れて嬉しいな」
「ど、どうでもいいですけど、前隠して下さい！」
　目元を手で隠しながら叫ぶ陽菜に、アレンは動揺する事もなく、むしろ堂々として、陽菜の元に近寄った。
「ぎゃあぁぁぁ！こ、来ないで下さい！」
「ひどいなぁ……別に恥ずかしがる事ないのに」
　そういうとアレンは陽菜を抱きしめ、その額にチュッとキスをすると離れた。
「シャワー浴びてくるよ」
　そのままシャワーを浴びに風呂場に向かったアレン。へなへなと座り込む陽菜は顔を真っ赤にしていた。
「こ、こんな心臓に悪いのを毎朝……てか外国人の人ってあんな大きいの？」
　ついどうでもいい下世話な言葉が出てしまった陽菜の一日の始まりは波乱万丈だった。