一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第十三章

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 男が莉春の来た道を辿ると、そこには男が一人賊と戦っている姿を見た。すでに十人余りは事切れているようだが、人数はまだいる。男は帯刀していた剣を抜き加勢に入った。
「助太刀をするぞ!」
 そう言ってやって来た男に星永は驚いた。男は次々と賊を斬る。自分も負けていられぬとばかりに剣を振るった。


 最期の賊が斬られた後、星永は肩で息をしながら男を見た。男は悠然と剣を鞘に納めながら星永の元へとやって来る。
「若いのに見事な剣捌きだ。だがまだまだ忍耐力が足りぬようだな」
「助けてもらい恩にきる。私は李星永。貴方は一体誰ですか?」
「朕はこの先にある国の主、金箔徒きんはくとだ」
「この先の国……では水の都の皇帝であられますか!」
 そう言って星永が膝を折ろうとした時、箔徒は「礼はいらぬ」と言って星永の行動を止めた。
「そなた娘と一緒にいた者であっているか?」
「はい。莉春様は無事ですか?」
「この先にいる。早く向かった方がよいだろう」
 箔徒は星永に手を差し伸べた。星永はその手をとり箔徒の馬に同乗する。
 しばらく馬を走らせた先では莉春が馬から降りて待っていた。莉春も星永の無事を見て安堵した様子で、走って駆けよって来た。
「莉春様。無事で何よりです」
「星永こそ……よかった。怪我もなく無事でいてくれて」
 怪我もなく元気そうで、莉春はその場に座り込んだ。こんなにも怖い思いをしたのは人生で二度目だ。一度目は初めての子を失った時。そして二度目は今だ。
「そなた達の無事が確認出来たら、早くここから立ち去る方がいいだろう。また賊に襲われる」
「あ、あなたは?」
「ふむ。朕は金箔徒。この先の国を治める者だ」
 そう紹介され、莉春もまた星永と同じような行動をとろうとしたので、箔徒はそれを止めた。まさか水の都の皇帝自ら助けらえるとは莉春達は運がいい。
「何やら込み入った話がありそうだな。だが話は後で聞く。ついて来い」


 箔徒について行った先にあったのは水の都と呼ばれる国だった。
 その名の通り整備された川や道。街の至る所に花が咲き誇っていた。一言で言うならば美しい国だった。
「こちらだ。ついて来い」
 言われるがまま向かったのはこの国の高台にある城、白栄城はくえいじょうだった。
「お帰りなさいませ」
「うむ。この者達は来客だ。蒼檸宮そうねいきゅうに茶を運んでくれ」
「かしこまりました」
 事が素早く進む。箔徒に連れられやって来た蒼寧宮で、莉春と星永は振舞われた茶を呑んだ。
「して、そなたらの事を聞いてないな」
「私は李星永。繁栄と豊穣を司る国からやって来ました。こちらはその国の第三夫人、楊夫人です」
「第三夫人?」
 箔徒の反応はごもっともだろう。何故後宮の者がこんな離れた国に共を一人でやって来たのか。普通に考えておかしな組み合わせだ。
「して歪な二人がこんな離れた国に来るのは何用か?まさか駆け落ちとは言わぬだろうな?」
「ち、違います!私はこの国の御使い様からの加護を得る為にこの国へやって来ました!」
「ほう、何やら込み入った話みたいだな。聞かせてもらおう」
 莉春は自分達の国で起こっている現状。そしてこの国に来た理由などを話した。
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