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第十二章
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「周将軍。何度も私は申しましたが、禁軍に入るつもりは……」
「おうおう。確かに星蘭譲りのいい頭らしいが、本当に守りたいものがある時、今の場所じゃ何にも守れないぞ」
「どういう意味ですか?」
「お前第三夫人のとこのお嬢ちゃんの面倒見てるんだってな。一応主上命令とは言え、今の立ち位置じゃ本当に守りたい時守らないぞ」
何が言いたいのかはなんとなくわかる。有能な官吏など沢山いる。それに自分は冠燿の許しがあって官吏でいながら莉春達の側にいる。本来それは出来ないこと。
「お前のいる場所なんざそこの長の門下生が継ぐようなもんだ。だが禁軍は完全実力を俺が通してる。それに俺も歳だ。もう少し待てばすぐに席が空くぞ」
「有り難い申し出ですが、周将軍は私を買いかぶりすぎです。そんな実力などありません」
「これだから官吏のお偉いさんは謙遜ばかり。俺がお前をそう見たんだ。お前には素質がある。まぁ、どうしてもっていうなら仕方ないが、力が欲しけりゃいつでも俺の所へ来い」
そう言って周将軍はその場を後にした。
守りたいものを守る時。あまり実感がないだけなのかもしれないが、今の星永に軍に入る気持ちは全くない。
「その気になれば……という事か」
盧眞房へとやって来た星永が開口一番に何を言い出すかと思えば、水を使役する国についての話だった。
「そなたにしては珍しい事を話すものだな」
「これは私というよりは楊夫人からと言った方が正しいです」
「莉春が?」
星永は莉春が水問題や病問題などについて冠燿の手助けをしたいという事。それにまつわる解決の糸口として紫水殿に書物がある事。そして……
「これは楊夫人が言っていた事ですが、病はすでに紫水殿内にも蔓延しているとか」
「なんだって?」
「女官長の景美もまた病に伏しているとの事です」
その話を聞いて冠燿の表情からみるみる血の気が引いていくのがわかった。
「それが真なら様子を見に……」
「なりません!主上のお体に障ります。あなたはこの国の主なのです。もう少し自覚をお持ち下さい」
「そ、そうだな……」
冠燿にとってもまた景美と言う女官長は特別な存在なのらしい。だからといって一国の主を危険な場所に行かせられない。
「私が様子を見て参ります。ついでに紫水殿にある書物についても確認して参りますので、入殿の許可をお出し下さい」
この惨事に私事を通す事は出来ない。ここは星永に託す事にした冠燿は、すぐに許可を許す旨を書いた書簡を星永に渡す。
「こんな時に神頼みでしか出来ない我は本当に無能だ」
「主上……」
いつもにも増して弱音を吐いた冠燿に、丞黄はその先の言葉を紡げないでいた。
一年前は偉蓮華先立って皇后鄭妃の死。様々な事が一気に起こり、冠燿自身も疲弊していた。
この雨が降り続くのではなく、定期的に降ってくれたらよい。そう丞黄はねがった。
「おうおう。確かに星蘭譲りのいい頭らしいが、本当に守りたいものがある時、今の場所じゃ何にも守れないぞ」
「どういう意味ですか?」
「お前第三夫人のとこのお嬢ちゃんの面倒見てるんだってな。一応主上命令とは言え、今の立ち位置じゃ本当に守りたい時守らないぞ」
何が言いたいのかはなんとなくわかる。有能な官吏など沢山いる。それに自分は冠燿の許しがあって官吏でいながら莉春達の側にいる。本来それは出来ないこと。
「お前のいる場所なんざそこの長の門下生が継ぐようなもんだ。だが禁軍は完全実力を俺が通してる。それに俺も歳だ。もう少し待てばすぐに席が空くぞ」
「有り難い申し出ですが、周将軍は私を買いかぶりすぎです。そんな実力などありません」
「これだから官吏のお偉いさんは謙遜ばかり。俺がお前をそう見たんだ。お前には素質がある。まぁ、どうしてもっていうなら仕方ないが、力が欲しけりゃいつでも俺の所へ来い」
そう言って周将軍はその場を後にした。
守りたいものを守る時。あまり実感がないだけなのかもしれないが、今の星永に軍に入る気持ちは全くない。
「その気になれば……という事か」
盧眞房へとやって来た星永が開口一番に何を言い出すかと思えば、水を使役する国についての話だった。
「そなたにしては珍しい事を話すものだな」
「これは私というよりは楊夫人からと言った方が正しいです」
「莉春が?」
星永は莉春が水問題や病問題などについて冠燿の手助けをしたいという事。それにまつわる解決の糸口として紫水殿に書物がある事。そして……
「これは楊夫人が言っていた事ですが、病はすでに紫水殿内にも蔓延しているとか」
「なんだって?」
「女官長の景美もまた病に伏しているとの事です」
その話を聞いて冠燿の表情からみるみる血の気が引いていくのがわかった。
「それが真なら様子を見に……」
「なりません!主上のお体に障ります。あなたはこの国の主なのです。もう少し自覚をお持ち下さい」
「そ、そうだな……」
冠燿にとってもまた景美と言う女官長は特別な存在なのらしい。だからといって一国の主を危険な場所に行かせられない。
「私が様子を見て参ります。ついでに紫水殿にある書物についても確認して参りますので、入殿の許可をお出し下さい」
この惨事に私事を通す事は出来ない。ここは星永に託す事にした冠燿は、すぐに許可を許す旨を書いた書簡を星永に渡す。
「こんな時に神頼みでしか出来ない我は本当に無能だ」
「主上……」
いつもにも増して弱音を吐いた冠燿に、丞黄はその先の言葉を紡げないでいた。
一年前は偉蓮華先立って皇后鄭妃の死。様々な事が一気に起こり、冠燿自身も疲弊していた。
この雨が降り続くのではなく、定期的に降ってくれたらよい。そう丞黄はねがった。
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