一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第十一章

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 侯鄭妃崩御の翌日。雨はまだ降っている中での葬儀が行われた。鄭妃の元に莉春や他の夫人達も訪れた。
「偉蓮華様が亡くなって、その後は皇后様。これでこの後宮の主は楊夫人のものね」
 ここに来てまで嫌味を言うのは第四夫人の舜扶貴しゅんふきだ。それを近くで聞いていた第五夫人の李汝悦りじょえつもまた小言を言って来る。
「もしかしたら次は楊夫人が足元を掬われるかもしれませんわ」
「あら、そうなったらこの後宮は呪われているなんて噂がたっていけないわ」
 好き放題に行っている二人に第七夫人の王梁寿おうりょうじゅは「気にしてはいけません」と言ってその場から離れるよう誘導した。


「恵みの雨とは言え、皇后様が亡くなられた事が未だ信じられません」
 旭庄宮で莉春は王梁寿に茶を振舞いながらそう言った。
「噂によれば皇后様は元々病を患っていたとか。その原因は若い頃に亡くなった偉夫人に毒薬を盛られた事によるものとか……」
「どうしてそんな恐ろしい事が後宮では日常茶飯事なのかしら?」
「この後宮では主上の愛こそが女達の生きる意味ではないでしょうか?でも私はせいがいればそれでいいですけどね」
 清とは王梁寿の一人息子の清王だ。身分こそは低いものの、他の嬪妃達が生んだ子供と違い、よく炎珠の世話をしてくれている。
「私も炎珠がいればそれでいいです。もちろん主上の支えにはなりたいと思いますが、それは他の人が持つ愛とは違うかもしれません」
「莉春さんは本当に変わってますね。けど、主上もそういう莉春さんだからこそ寵愛なさるのかもしれません」
 自分にはこれ以上の贅沢はない。このまま炎珠の成長を見届ければそれでいいと思っている。
 二人が話をしていると、炎珠が李星永に手を引かれやって来た。
「お話中失礼します。楊夫人。王夫人」
「顔を上げて頂戴。私こそ炎珠のおもりありがとう」
「母、母!ばばから手紙!」
 そう捲し立てる炎珠の手には、親書の筒が握られていた。誰からの親書かと思い、それを受け取り中を確認すると、それは呉太妃からのものだった。
「炎珠。呉太妃は確かにあなたにとってはおばあ様にあたるかもしれないけど、ばばと言ってはいけません。おばあ様とお呼びなさい」
「あい!」
 わかっているのかわかっていないのか。炎珠は元気よく返事をした。星永自身も今日は皇后の葬儀という事で、いつもとは違う白い服を着ていた。
「莉春さん。呉太妃からの親書にはなんと?」
「あぁ、そうだったわ。えっと……」
 書かれている内容を見て莉春は眉をしかめた。それを見た王梁寿も星永も、ただ事ではないと思った。
「水を使役する国はここより東に存在する書簡が見つかったそうです。ただ……紫水殿の数人の女官はすでに病に侵されている。その中には景美けいび様の名も……」
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