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第九章
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まだ盈月としても悲壮の中にいたが、もっと辛い現実がもたらされていた。
「それは本当なのか?」
「はい……残念ですが……」
仁夢殿にいたのは莉春を診ていた侍医だった。
「楊夫人は今回の流産が原因で、今後懐妊をしても流れてしまう可能性が高いです」
「どうにかならないのか……?」
「こればかりは……薬による流産が原因でなかっただけまだ良かったとしか言えません。もし毒薬でしたら二度と子を成せなくなっていたでしょうから」
今後先子を成せたとしても流れる可能性がある。その事実を莉春はどう受け止めるか。否。今はまだ伝えられないと思った。
「子が成せないわけではありませんが、もし今後を考えるなら今回以上に慎重になる必要があります。楊夫人自身にもそれは受け入れてもらわなくてはいけません」
「わかった。この件については我から莉春に話そう」
用を終え侍医はその場を後にした。莉春の元に向かおうと思った。
事件以後、徳華の死や流産などで疲弊している莉春の元に毎夜向かっていた盈月だが、莉春はその度に涙し、「ごめんなさい」と謝り続けた。
「私が今の莉春にしてやれる事はそう多くない。けど、莉春の傷が少しでも癒えるのならなんなりとする」
旭庄宮を訪れた盈月は、今宵も莉春の側にいた。
「盈月……ごめんなさい。私はせっかくの命も、友も失ったわ」
「それはもういい。莉春。気持ちはわかるがいつまでもそうしていれば子も浮かばれぬ」
「わかってる……でもまだ気持ちを整理するのには時間がかかるみたい」
どれほどの時間が経てばこの悲しみは癒えるのか。莉春には全くわからない。もしかしたら一生癒えないのかもしれない。
だが月日の流れと共に莉春自身、現実を受け入れられるようにはなる。
徳華の死後、喪が明けてしばらくして皇后が莉春の元にやって来た。そして事についての謝罪をしたが、正直形だけなのだろうと思った。だが相手は皇后。これ以上何も望まずその謝罪を受け入れた。
呉太妃は莉春を見舞った時にこうつげた。
「人を呪えばその何倍にもなって自分へ返って来る。その時、取り返しのつかない事になっているかもしれない。それでもいいのですか?」
その言葉があったからか、莉春は踏みとどまる事が出来たのかもしれない。
「莉春様。今日はお天気もいいですし外に出ませんか?」
そう風華に言われ莉春は庭に出る。正直あの事件以後ここに来るのは苦痛だったが、いつまでもそうしてはいられなかった。
事件の起こった場所はあまり手入れをされておらず、雑草も茂っている。
「ここもどうにかしないとね」
「莉春様……ここは潰してしまいますか?」
「ううん。手入れしてここに薔薇を植えて頂戴」
「……かしこまりました」
思い出したくない場所だが、ここには徳華の好きだと言った薔薇を植え、自分への戒めと徳華への弔いとする事にした。
「それは本当なのか?」
「はい……残念ですが……」
仁夢殿にいたのは莉春を診ていた侍医だった。
「楊夫人は今回の流産が原因で、今後懐妊をしても流れてしまう可能性が高いです」
「どうにかならないのか……?」
「こればかりは……薬による流産が原因でなかっただけまだ良かったとしか言えません。もし毒薬でしたら二度と子を成せなくなっていたでしょうから」
今後先子を成せたとしても流れる可能性がある。その事実を莉春はどう受け止めるか。否。今はまだ伝えられないと思った。
「子が成せないわけではありませんが、もし今後を考えるなら今回以上に慎重になる必要があります。楊夫人自身にもそれは受け入れてもらわなくてはいけません」
「わかった。この件については我から莉春に話そう」
用を終え侍医はその場を後にした。莉春の元に向かおうと思った。
事件以後、徳華の死や流産などで疲弊している莉春の元に毎夜向かっていた盈月だが、莉春はその度に涙し、「ごめんなさい」と謝り続けた。
「私が今の莉春にしてやれる事はそう多くない。けど、莉春の傷が少しでも癒えるのならなんなりとする」
旭庄宮を訪れた盈月は、今宵も莉春の側にいた。
「盈月……ごめんなさい。私はせっかくの命も、友も失ったわ」
「それはもういい。莉春。気持ちはわかるがいつまでもそうしていれば子も浮かばれぬ」
「わかってる……でもまだ気持ちを整理するのには時間がかかるみたい」
どれほどの時間が経てばこの悲しみは癒えるのか。莉春には全くわからない。もしかしたら一生癒えないのかもしれない。
だが月日の流れと共に莉春自身、現実を受け入れられるようにはなる。
徳華の死後、喪が明けてしばらくして皇后が莉春の元にやって来た。そして事についての謝罪をしたが、正直形だけなのだろうと思った。だが相手は皇后。これ以上何も望まずその謝罪を受け入れた。
呉太妃は莉春を見舞った時にこうつげた。
「人を呪えばその何倍にもなって自分へ返って来る。その時、取り返しのつかない事になっているかもしれない。それでもいいのですか?」
その言葉があったからか、莉春は踏みとどまる事が出来たのかもしれない。
「莉春様。今日はお天気もいいですし外に出ませんか?」
そう風華に言われ莉春は庭に出る。正直あの事件以後ここに来るのは苦痛だったが、いつまでもそうしてはいられなかった。
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「ここもどうにかしないとね」
「莉春様……ここは潰してしまいますか?」
「ううん。手入れしてここに薔薇を植えて頂戴」
「……かしこまりました」
思い出したくない場所だが、ここには徳華の好きだと言った薔薇を植え、自分への戒めと徳華への弔いとする事にした。
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