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第九章
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安眠剤を持って眠った莉春を風華に任せ、盈月は仁夢殿へと戻った。戻ると丞黄が盈月の様子を見ながら心配そうに白湯を渡す。
「これを呑むと少しは落ち着きますよ」
「あぁ……こんな事になるとはな。我がした事は間違っていたのだろうか」
「主上……」
別に侯家を敵に回したわけではない。だがこれ以上朝廷での権限を握らせる事だけしたくなかった。それは事実だ。それに侯徳華と莉春は仲が良かった事は盈月も知っている。だからこそ侯徳華にはもっと警戒すべきだったのだろう。
「守ると約束したのに……我は何一つ守る事が出来なかった」
莉春を危険な目に合わせただけでなく、子まで失ってしまった。莉春にとって辛い事だと理解出来るし、自分も悲しい。これからどうすればいいのかも、今は何も考えられなかった。すると宦官の一人が盈月の元にやって来た。
「主上。皇后がお目通り願いたいと」
「わかった」
侯鄭妃が来るであろうことはわかっていた。鄭妃は部屋に入るなり「主上!」と叫びながらその場に膝を折り、叩頭令をした。
「私の監督不行き届きだった為、このような事になりました。どうか私にも罰をお与え下さい!これは侯家の者としてけじめをつけさせてもらいます!」
「顔を上げよ鄭妃」
顔を上げた鄭妃の目は涙を流していた。直接の原因ではないにしろ、一応侯家繋がりの者だ。それに少なからず盈月自身にも責任はあると思っていた。
「そなたが手を下したわけではないが、侯家の者だ。この始末をそなたに任せる」
「ありがとうございます!主上」
再び叩頭令をした鄭妃は、その後は仁夢殿を後にした。涙は嘘のもの。すぐに拭って外で待っていた侍女と共にその足は掖庭の獄へと向かっていた。
「鄭妃様」
「主上は私に寛大だったわ。けど問題は徳華ね。あれほどまでに愚かな者とは。それに侯家にも泥を塗った」
「徳華様は楊莉春の子を流した罪には問われます。この先主上の思し召しはないかと……」
それはは鄭妃にはわかっている。いくら憎いとはいえ、子殺しは大罪だ。もうこの先徳華には何も望めぬだろう。
「殺すなら足取りが掴めないようにするくらいの頭がないとは、侯家の恥さらしよ。けどこの事案について主上は私に一任してくださいましたわ」
「どうなさるのですか?」
「子も成せぬ。罪をも犯し侯家に泥を塗った。もう生きていても意味はないでしょう」
掖庭の獄には様々な罪人がいる。多くはこの弦丘城内で罪を犯した者だ。その罪に応じて対応も様々だが、子殺しの罪を犯した徳華は牢の中で大人しくしていた。
鍵が開けられ中に叔母である鄭妃が入って来た。その表情はあざ笑うでもなく怒るわけでもなく、ただ下等な者を見る眼差しだ。
「あなたは侯家に対して大きな泥を塗ってくれたわね」
「叔母様……」
「もうあなたに期待する事はない。今後先日の目を見る事もないでしょう」
そう言うと鄭妃は卓の上に小さな小瓶を置いた。この小瓶の中身やそれが示す意味は徳華にはわかった。それ以外の道は自分にはないのだ。
「これを呑むと少しは落ち着きますよ」
「あぁ……こんな事になるとはな。我がした事は間違っていたのだろうか」
「主上……」
別に侯家を敵に回したわけではない。だがこれ以上朝廷での権限を握らせる事だけしたくなかった。それは事実だ。それに侯徳華と莉春は仲が良かった事は盈月も知っている。だからこそ侯徳華にはもっと警戒すべきだったのだろう。
「守ると約束したのに……我は何一つ守る事が出来なかった」
莉春を危険な目に合わせただけでなく、子まで失ってしまった。莉春にとって辛い事だと理解出来るし、自分も悲しい。これからどうすればいいのかも、今は何も考えられなかった。すると宦官の一人が盈月の元にやって来た。
「主上。皇后がお目通り願いたいと」
「わかった」
侯鄭妃が来るであろうことはわかっていた。鄭妃は部屋に入るなり「主上!」と叫びながらその場に膝を折り、叩頭令をした。
「私の監督不行き届きだった為、このような事になりました。どうか私にも罰をお与え下さい!これは侯家の者としてけじめをつけさせてもらいます!」
「顔を上げよ鄭妃」
顔を上げた鄭妃の目は涙を流していた。直接の原因ではないにしろ、一応侯家繋がりの者だ。それに少なからず盈月自身にも責任はあると思っていた。
「そなたが手を下したわけではないが、侯家の者だ。この始末をそなたに任せる」
「ありがとうございます!主上」
再び叩頭令をした鄭妃は、その後は仁夢殿を後にした。涙は嘘のもの。すぐに拭って外で待っていた侍女と共にその足は掖庭の獄へと向かっていた。
「鄭妃様」
「主上は私に寛大だったわ。けど問題は徳華ね。あれほどまでに愚かな者とは。それに侯家にも泥を塗った」
「徳華様は楊莉春の子を流した罪には問われます。この先主上の思し召しはないかと……」
それはは鄭妃にはわかっている。いくら憎いとはいえ、子殺しは大罪だ。もうこの先徳華には何も望めぬだろう。
「殺すなら足取りが掴めないようにするくらいの頭がないとは、侯家の恥さらしよ。けどこの事案について主上は私に一任してくださいましたわ」
「どうなさるのですか?」
「子も成せぬ。罪をも犯し侯家に泥を塗った。もう生きていても意味はないでしょう」
掖庭の獄には様々な罪人がいる。多くはこの弦丘城内で罪を犯した者だ。その罪に応じて対応も様々だが、子殺しの罪を犯した徳華は牢の中で大人しくしていた。
鍵が開けられ中に叔母である鄭妃が入って来た。その表情はあざ笑うでもなく怒るわけでもなく、ただ下等な者を見る眼差しだ。
「あなたは侯家に対して大きな泥を塗ってくれたわね」
「叔母様……」
「もうあなたに期待する事はない。今後先日の目を見る事もないでしょう」
そう言うと鄭妃は卓の上に小さな小瓶を置いた。この小瓶の中身やそれが示す意味は徳華にはわかった。それ以外の道は自分にはないのだ。
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