一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第九章

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 徳華と共に旭庄宮の庭を歩く事にした莉春。離れた場所では風華が待機している。徳華の様子を見て何かあればすぐに対応出来るようにとの事だろう。
「まだここに移ったばかりで、花とか何もまだ植えてないけど、時間を見つけて植えるつもり。その際には徳華の好きな花を植えるわ。どんな花がいい?」
「花?そうね……私は牡丹が好き。って言うのはよく言うけど、実際は薔薇の方が好きよ」
「薔薇?」
「えぇ……薔薇はほって置いても勝手に咲くし、勝手にあちこち弦を伸ばす。弦には毒を持つなんてよく言われているわね。まるであなたみたい」
「徳華……」
「ねぇ、どうして莉春には子が成せて、私には成せなかったのかしら?叔母様からは懐妊にいい薬ってもらったのに……」
 どうやら徳華は自身の生い立ちがここで苦しめる結果になるとは思ってもいなかったようだ。それに叔母である鄭妃の期待に応える事も出来ない。その複雑な心境が徳華を苦しめている。
「けどここにいればいつか徳華にも」
「いつかっていつよ!主上は私を召す事はないわ。自分は子を成したからって自慢なの?しかも相手に取り入って封号までもらって……その全ては私に与えられるものだったのよ」
「徳華!落ち着いて!」
「うるさい!」
 そう言うと徳華は莉春を突き飛ばす。しかも場所が悪かった。そこは短いが階段があり、莉春は階段から落ちた。すぐに風華が駆けつける。
「その者を捕らえて!すぐに侍医も!」
「うっ……徳……華」
 腹を抑えながら莉春は徳華の方を見た。徳華は顔が真っ青な状態ですぐに衛兵に捕らえられた。


 惨事を聞きつけた盈月がすぐに莉春の元に来た。莉春は寝台で眠っている。だが側付きの風華は膝をつき深々と頭を下げている。
「申し訳ありません!私が付いていながら莉春様を……どうか罰をお与え下さい!」
「風華立て。莉春は……」
「それが……打ちどころが悪く……」
 その言葉を聞いて盈月は顔面蒼白になった。まさかこのような事態が起きるとは思いもしなかった。風華は自分に比があるのだと攻め続けた。
「沙汰は追って言う。今は莉春と二人だけにしてくれ」
 部屋には眠る莉春と盈月だけになった。盈月は大きなため息を漏らしながら莉春の手を握った。
「莉春……すまない。そなたを守ると約束したのに、約束が守れなかった」
 涙が溢れた。すると「盈月?」とか細い声が聞こえた。
「莉春!」
「盈月……私……」
「今は何も考えるな」
 何があったのか意識が朦朧としていた莉春だったが、自分がこうなるに至る経緯を思い出して起き上がった。
「赤ちゃん……私の赤ちゃんは……」
「莉春!」
 動揺する莉春を抱きしめた盈月だが、それで何が自分に起こったのか悟ったのだろう。莉春は涙を流した。
「嫌!私の赤ちゃん!嫌!返してよ!私の赤ちゃん!」
 暴れる莉春をただ抱きしめる事しか出来なかった盈月。一通り暴れた莉春は盈月に縋り声を漏らして泣いた。盈月も側で「すまない」と繰り返し涙を流した。
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