一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第五章

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「そうだなぁ……今すぐにってわけにはいかないからねぇ。最低でも一年時間が必要かな?」
「一年……おじさんの言う事を飲まないなら?」
「そうだね。きっとそれでもあいつは莉春ちゃんに会いに来るだろうから、このまま紫水殿を辞めて田舎に帰った方がいいだろうね」
「そんな……」
 せっかく掴んだ今の自分。どちらをとってもそれを捨てる。それはとても辛い選択だ。だが田舎に帰る事はその後の人生は普通の人生できっと幸せだろう。もう一方は盈月を救う変わりにあの煉獄れんごくとも言われる後宮に入る事になる。自分がどの道を進めばいいのか。
「私は……」


 弦丘城へと十人余りの才人が宦官かんがんに連れられ入廷する。城の中では桜の花が舞い散る。そんな春うららかな季節だった。
「主上の御なり!」
 十人の才人がその場で膝を着く。すると皇帝の乗った輿が才人の傍を通りすぎるはずだった。輿は才人達の前で止まった。
「しゅ、主上!」
 その場にいた者が驚く中、輿から降りたこの国の皇帝、劉冠耀は一人の才人の前に立つ。
「顔を上げるんだ。莉春」
 名を呼ばれ、顔を上げた莉春。一国の主にその名を初めから覚えられている才人などいない。他の者の眼差しは憧れと嫉妬を孕んでいた。
「主上に拝謁致します」
「よくここに来た。これから待つ困難に打ち勝てるかどうかは莉春次第だ」
「その言葉を胸に刻み精進致します」
 莉春の言葉を聞いた冠耀は、再び輿に乗り去って行く。去った後、莉春達は後宮へと向かう。
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