一輪の白百合をあなたへ

まぁ

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第三章

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「陛下の妃嬪ひひんは現在二人いらっしゃいます。皇后の侯鄭妃こうていひ様と第二夫人で側室の偉蓮華いれんか様。劉家は皇族。侯家もまた劉家の派生の名家。偉家も御史台を歴代仕切っている家元です」
「うわぁ……すごい名前揃いだなぁ……」
「当然です。強い国を作るには強い繋がりも必要なのです。一般女子が志願した所で後宮に仕える侍女にもなれないでしょう」
 盈月を取り囲む名のある名家達。奥方も子もいるとは聞いていたが、二人いるとは。さすが権力者だと思った反面、盈月は奥方とはあまり折り合いがよくない風な事も言っていた。
(でもあれってどう考えても盈月の配慮の問題だよね?)
 きっと奥方達は盈月に振り向いてもらいたいはずだ。だが当の盈月はどこか興味がなさそうだ。
「さて、今日はここまでにしましょう。何か質問は?」
「ないです」
「ではまた来週に」
 そう言うと陵妓は部屋を後にする。莉春も部屋を出て宿舎の方へと向かって歩く。
 この女官採用試験の為の勉強などで本来の下働きの仕事を空ける事になり、水場仕事の斎霧さいむからは嫌味と小言、仕事が二割増しとなった。だが朱里しゅりからは逆らわない方がいいと言われているので、ここは我慢することにした。
 合格してしまえば水場仕事から離れられる。そうすれば斎霧の小言も聞かなくても済むだろう。

――そなたは私の側近にはいない稀有な存在だ。こうして話をするだけでも楽しい

 昨夜盈月に言われた事を思い出した。もちろん盈月の事は誰にも言わないし、今の所同僚の朱里にすら言っていない。
「私なんかと話してて本当に楽しいのかしら?」
 盈月の言葉が本当なのかどうか謎だが、そう思ってくれて少しでも癒されるならそれはそれでもいい。城には莉春のような人物はいないと言っていたが、普通に考えて莉春のようなお転婆はいないだろうと莉春自身も思う。
「でも後宮にいる盈月の奥さん達ってどんな人かしら?どうせ綺麗な人なんだろうけど……今度聞いてみるか」
 次会う約束は来週だ。もちろんこの約束は絶対ではない。もしかしたら来ないかもしれない。
 なんとなく莉春自身も盈月に会える来週が楽しみになっていた。
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