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第一章
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そう言われ、苛立った莉春はさらに大きな声で「すみませーん!」と叫んだ。
「こらっ!なんと品のない事を!」
「だってあなた達が全然取り合ってくれないからじゃない!すみませーん!どなたかいませんか?」
「えぇいやめい!ここで捕らえられたくなければ去れ!」
門扉前で悶着を起こした莉春。流石にこれには中にいた女官達も気が付いたのか、神殿から人が数名姿を見せた。そして一人の女官が近づいた。
「どうなさいましたか?」
「あぁ、この娘が紫水殿の女官になりたいとぬかして……」
「そうでしたが。流石に人が集まってきましたので、一旦こちらの方を中に入れてはくれませんか?」
「ですが……」
「この件に関しては景美様に聞いてみますので」
男は渋々と言った感じで「はぁ……」と言って莉春を中に入れた。
「貴女の事はどうするかお尋ねします。ここではあれなので、神殿の中へといらしてもらえますか?」
「はい!」
女官に導かれるようにして神殿に向かった莉春。
(うわぁ、凄く綺麗!)
優美なしなにぴんとした背筋。見た事のないような綺麗な服に莉春は目を輝かせた。どうしてもここで働きたいと思った。
「それではここでしばらくお待ちください」
通された場所は天井が高く赤いにすで塗られた柱や金装飾。まるで極楽にでもやって来たかのような心地になった。
「わぁ!このお茶おいしい」
お茶も飲んだ事のないような深い味わい。出された菓子もまた甘く、莉春が知らない味わいがした。やはり都に来て正解だったと思った。そんな一人百面相をしていると、先ほどの女官が深緑の服を着て、何本もの簪など、髪飾りを施した人物が現れた。
「我はこの紫水殿の最高神官、景美と申す。そなたがこの神殿の女官志望かえ?」
「は、はい!私は楊李春と申します!」
流石に学のない莉春でも膝をつかなくてはいけない相手だとわかる。椅子から降り、膝をつくと「立ち上がれよ」と言われた。景美は一切の感情が読めない微笑みを莉春に向ける。
「ここで働くにはそれなりの試験が必要じゃ。いきなり来てなれる物でもない」
「そうですか……でもそれなりの試験を受ければ女官にしてくれるんですよね?」
食い入るように聞く莉春に、袖で口元を抑えながら景美は笑った。
「そうじゃな。だがそれは簡単ではないゆえ。莉春はそれに耐えられるかえ?」
「大丈夫!私やります!」
「ではまずここの下働きとして雇ってみようかの」
「本当ですか?」
「ふむ。ちょうど下働きは人手不足だったんじゃ。そこでしっかり務めよ」
「はい!」
こうして莉春はなんとか紫水殿に入る事が叶った。
「こらっ!なんと品のない事を!」
「だってあなた達が全然取り合ってくれないからじゃない!すみませーん!どなたかいませんか?」
「えぇいやめい!ここで捕らえられたくなければ去れ!」
門扉前で悶着を起こした莉春。流石にこれには中にいた女官達も気が付いたのか、神殿から人が数名姿を見せた。そして一人の女官が近づいた。
「どうなさいましたか?」
「あぁ、この娘が紫水殿の女官になりたいとぬかして……」
「そうでしたが。流石に人が集まってきましたので、一旦こちらの方を中に入れてはくれませんか?」
「ですが……」
「この件に関しては景美様に聞いてみますので」
男は渋々と言った感じで「はぁ……」と言って莉春を中に入れた。
「貴女の事はどうするかお尋ねします。ここではあれなので、神殿の中へといらしてもらえますか?」
「はい!」
女官に導かれるようにして神殿に向かった莉春。
(うわぁ、凄く綺麗!)
優美なしなにぴんとした背筋。見た事のないような綺麗な服に莉春は目を輝かせた。どうしてもここで働きたいと思った。
「それではここでしばらくお待ちください」
通された場所は天井が高く赤いにすで塗られた柱や金装飾。まるで極楽にでもやって来たかのような心地になった。
「わぁ!このお茶おいしい」
お茶も飲んだ事のないような深い味わい。出された菓子もまた甘く、莉春が知らない味わいがした。やはり都に来て正解だったと思った。そんな一人百面相をしていると、先ほどの女官が深緑の服を着て、何本もの簪など、髪飾りを施した人物が現れた。
「我はこの紫水殿の最高神官、景美と申す。そなたがこの神殿の女官志望かえ?」
「は、はい!私は楊李春と申します!」
流石に学のない莉春でも膝をつかなくてはいけない相手だとわかる。椅子から降り、膝をつくと「立ち上がれよ」と言われた。景美は一切の感情が読めない微笑みを莉春に向ける。
「ここで働くにはそれなりの試験が必要じゃ。いきなり来てなれる物でもない」
「そうですか……でもそれなりの試験を受ければ女官にしてくれるんですよね?」
食い入るように聞く莉春に、袖で口元を抑えながら景美は笑った。
「そうじゃな。だがそれは簡単ではないゆえ。莉春はそれに耐えられるかえ?」
「大丈夫!私やります!」
「ではまずここの下働きとして雇ってみようかの」
「本当ですか?」
「ふむ。ちょうど下働きは人手不足だったんじゃ。そこでしっかり務めよ」
「はい!」
こうして莉春はなんとか紫水殿に入る事が叶った。
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