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第三話

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 翌日は宣言通り、真樹も書庫の整理を手伝った。だが……
「この本はエルフがどういう存在なのかを記した本です」
「へぇ……」
「こっちはこの世界の成り立ちなど。後は……」
 一冊一冊、丁寧に何の本かを真樹に教えるリスティアム。それに目を輝かせる真樹を見てフェイが声を上げる。
「おい!あれじゃ整理じゃなくてただの邪魔じゃないか!」
 先程から二人の周囲だけは何も片付かない。むしろ余計本が散らばっている気もする。
「真樹!お前今日はオレ達の手伝いするんじゃなかったのか?」
「ご、ごめん!」
 我に返った真樹が本を手に本棚へ収納しようとした時、リスティアムが「真樹はやらなくて大丈夫ですよ」と割って入る。
「この蔵書も、こちらも重いですから、真樹はやらなくてもいいです」
「で、でも……」
 わたわたとする真樹を見かねて、フェイが大きなため息と共にリスティアムに詰め寄る。
「おいおいリスティアムさんよ。真樹の事気に入ってるのはわかるが、こいつだって男なんだ。これくらい持てる。それに今日はここの手伝いをするって言ってたんだぜ」
「ですが真樹は皆さんに比べて非力ではあります。私が守ってあげないと」
「なんでそこであんたが守る事になるんだよ!」
 聞いていて呆れるほどの過保護だ。リスティアムの何に真樹という存在が引っ掛かったのかは謎だが、カイとしてはリスティアムの言っている事に納得は出来るが、その役目はリスティアムではなく自分だと思っている。
 そんな二人の会話を聞きながら、真樹本人は誰の目からも非力な事に愕然とした。
「確かに僕は運動も出来ないけど……」
「真樹。気にしなくてもいいのですよ。真樹はここで私と暮らせばいいのですから」
「何だって!」
 その言葉だけはいただけない。黙っていたカイが遂に声を出した。初耳だったのか、真樹も目を点にさせている。
「真樹に旅は似合いません。ここにいればいつでも魔法を教える事も出来ます。それに私は真樹がいてくれると嬉しいです」
「魔法習い放題……」
 確かにそれは魅力的な話だ。しかし魔法は習っても使わなければ意味がない。自分が夢見る異世界はチートハーレムだ。この世界で魔法は希少。それを使い世界を救い……と、いろいろなプランが頭にある中で、真樹はちらりとカイを見た。
(僕がここに残れば、僕はカイと離れ離れになる)
 召喚された当初は嫌だった。だが本当に嫌かと聞かれたら首を傾げる。それでいいのかという気持ちが湧いていた。
「オレと真樹は元の世界に戻る為に旅するんだ!ここに真樹を置いてはいけない!」
「ですが決めるのは真樹ですよ」
「ぼ、僕は……」
 答えを出そうとしたその時だった。
 近くからドカンという大きな音が鳴っり、一瞬地震のような揺れが起きた。
「な、何だ?」
「敵の襲撃?」
 一体何がと思ったカイやフェイ。するとリスティアムは「地下ですね」と言ったので、四人は地下へと向かう。


「ゲホッゲホッ……」
 周囲は煙に包まれている。中ではレティが薬を作っていた。何か失敗したのか、それとも……とりあえずレティの安否が心配だ。しかし。
「ちょ、冗談じゃないよ!何だよコレ!」
 もくもくと立ち込める煙で中の様子が見えないが、レティが健在なことだけはわかった。
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