22 / 32
第二話
10
しおりを挟む
「はぁ……このシチュー美味しい」
「それは良かったです」
冷えた体にミルクとチーズのコクが効いたシチューは身に染みる。
真樹達はリスティアムの館へとやってきた。初めは小屋を想像していたが、わりと立派な一軒家、より少し大きいくらいで、五十年以上一人で住んでいるらしい。
「でもエルフって本当に長寿だし、背も高いし、漫画とかで描いてある通りだったんめすね」
「漫画……?」
「えっとわからないかな?絵本みたいなものかな?」
「そうですか。真樹の国にもエルフの存在は知られてるのですね」
この場合は漫画などの仮想人物としてなのだが、それを言っても理解はしてくれないだろう。だがリスティアムはニコニコしながら真樹の話を聞いている。どうやら真樹の事を気に入ったようだ。
しかしそれを見てカイは面白くなかった。
「カイは本当に真樹の事が好きなんだね」
そんなカイを見ていたレティはボソリと呟く。するとカイは「違う」と言って反論する。
「真樹は小さい頃からオレを頼ってたからな。突然現れた人物に頼られるとなんか複雑なだけだ」
「それを嫉妬と世間では言うけどね」
これまで真樹を守ってきただけに、ポッと出のリスティアムに頼ったり仲良くするのは面白くない。しかも長寿でカイよりもはるかに長く生きているからか、落ち着きもあるし聞き上手。大人の余裕を感じるのでまた引目を感じてしまう。
「そういえばレティ。さっき森で何してたんだ?」
「別になんでもいいでしょ?僕にだって用事はいろいろあるんだから」
レティが森で何かしていたのが気になったカイだが、レティ本人はその事を上手くはぐらかしたので、深追いする事をやめた。
「レティの目的はここで薬の調合だっけ?」
「そうだよ。もう話もつけてあるし、明日早速使わせてもらう」
「な、な。もしかして筋力増強の薬とかも出来るのか?」
「出来るけど、まだ筋力着ける気?」
錬金術による薬の調合に興味を持つフェイだが、レティは「筋肉バカ」と言い除ける。言うほどマッチョではないが、フェイは剣を振るうという事もありしっかりした体格だ。
「とりあえず嵐が治るのは一週間くらいだから、ここには一週間滞在させてもらうから。僕はまだしも、君達はしっかりリスティアムの下働きとして働くんだよ」
「はぁ?下働きってなんだよ!」
「交換条件。君達の事をこき使っていいから釜を貸してって頼んだの」
「オレ達を売ったな!」
レティのとんでも発言にフェイは声を荒げたが、嵐が治るまでは確かに動けない。この森はリスティアムによって清められている事もありモンスターもいないそうだ。つまりする事はない。
「僕は別に構わないよ。それに魔法とか知りたい事が多いし」
「でしたら私が教えてあげましょうね」
「いいの?」
「構いませんよ」
何故だか真樹とリスティアムの間では簡単に話がまとまっていた。
次までの一週間。リスティアムの館で過ごすが、まだまだ波乱は起こりそうな感じだった。
「それは良かったです」
冷えた体にミルクとチーズのコクが効いたシチューは身に染みる。
真樹達はリスティアムの館へとやってきた。初めは小屋を想像していたが、わりと立派な一軒家、より少し大きいくらいで、五十年以上一人で住んでいるらしい。
「でもエルフって本当に長寿だし、背も高いし、漫画とかで描いてある通りだったんめすね」
「漫画……?」
「えっとわからないかな?絵本みたいなものかな?」
「そうですか。真樹の国にもエルフの存在は知られてるのですね」
この場合は漫画などの仮想人物としてなのだが、それを言っても理解はしてくれないだろう。だがリスティアムはニコニコしながら真樹の話を聞いている。どうやら真樹の事を気に入ったようだ。
しかしそれを見てカイは面白くなかった。
「カイは本当に真樹の事が好きなんだね」
そんなカイを見ていたレティはボソリと呟く。するとカイは「違う」と言って反論する。
「真樹は小さい頃からオレを頼ってたからな。突然現れた人物に頼られるとなんか複雑なだけだ」
「それを嫉妬と世間では言うけどね」
これまで真樹を守ってきただけに、ポッと出のリスティアムに頼ったり仲良くするのは面白くない。しかも長寿でカイよりもはるかに長く生きているからか、落ち着きもあるし聞き上手。大人の余裕を感じるのでまた引目を感じてしまう。
「そういえばレティ。さっき森で何してたんだ?」
「別になんでもいいでしょ?僕にだって用事はいろいろあるんだから」
レティが森で何かしていたのが気になったカイだが、レティ本人はその事を上手くはぐらかしたので、深追いする事をやめた。
「レティの目的はここで薬の調合だっけ?」
「そうだよ。もう話もつけてあるし、明日早速使わせてもらう」
「な、な。もしかして筋力増強の薬とかも出来るのか?」
「出来るけど、まだ筋力着ける気?」
錬金術による薬の調合に興味を持つフェイだが、レティは「筋肉バカ」と言い除ける。言うほどマッチョではないが、フェイは剣を振るうという事もありしっかりした体格だ。
「とりあえず嵐が治るのは一週間くらいだから、ここには一週間滞在させてもらうから。僕はまだしも、君達はしっかりリスティアムの下働きとして働くんだよ」
「はぁ?下働きってなんだよ!」
「交換条件。君達の事をこき使っていいから釜を貸してって頼んだの」
「オレ達を売ったな!」
レティのとんでも発言にフェイは声を荒げたが、嵐が治るまでは確かに動けない。この森はリスティアムによって清められている事もありモンスターもいないそうだ。つまりする事はない。
「僕は別に構わないよ。それに魔法とか知りたい事が多いし」
「でしたら私が教えてあげましょうね」
「いいの?」
「構いませんよ」
何故だか真樹とリスティアムの間では簡単に話がまとまっていた。
次までの一週間。リスティアムの館で過ごすが、まだまだ波乱は起こりそうな感じだった。
1
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

初戀
槙野 シオ
BL
どうすることが正解で、どうすることが普通なのかわからなかった。
中三の時の進路相談で、おまえならどの高校でも大丈夫だと言われた。模試の結果はいつもA判定だった。進学校に行けば勉強で忙しく、他人に構ってる暇なんてないひとたちで溢れ返ってるだろうと思って選んだ学校には、桁違いのイケメンがいて大賑わいだった。
僕の高校生活は、嫌な予感とともに幕を開けた。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
【R18+BL】ハデな彼に、躾けられた、地味な僕
hosimure
BL
僕、大祇(たいし)永河(えいが)は自分で自覚するほど、地味で平凡だ。
それは容姿にも性格にも表れていた。
なのに…そんな僕を傍に置いているのは、学校で強いカリスマ性を持つ新真(しんま)紗神(さがみ)。
一年前から強制的に同棲までさせて…彼は僕を躾ける。
僕は彼のことが好きだけど、彼のことを本気で思うのならば別れた方が良いんじゃないだろうか?
★BL&R18です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる