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第二話
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「えっ?えっ……何が起こって……」
状況が把握できない真樹とカイ。すると「真樹!カイ!」っと聞き馴染みのある声が聞こえた。
「フェイ!レティ!」
「全然姿見せないから探したぞ!」
「君達は闇の迷宮って言う術にかかったんだよ」
そこに現れたのはレティとフェイ。どうしてここに二人がいるのか全くわからないでいると、助けてくれた男がこちらを向いた。
「この術はかけるのは簡単なのですが、解除は少し厄介でしてね。私がお手伝いしたのです」
その人物は優しげな表情を見せた。そして耳が尖っていたり、透けるような白い肌をしているのを見て、真樹は「エルフ!」と叫んだ。
「はい。私はエルフのリスティアムです」
本物ほエルフだと感動する真樹だが、レティは「状況見ろよ」と現実に引き戻す。
「さて、この状況でもまだ抵抗しますか?」
「うぐっ……」
リスティアムの言葉に何も言えないのか、フードの男は後ずさる。
「くそっ!今回はこれくらいにしてやる!僕は絶対諦めないからな!」
いかにもなセリフを残してその場から姿を消した男。すると周囲が歪み、そこはただの森となった。
「一体どうなってるんだ?」
「術者がいなくなった事に加え、私が施した術が作動したのです。これで元に戻りました」
「ありがとうございます。助かりました」
丁寧に礼を述べるカイとは違い、真樹はリスティアムを見ながらずっと目を輝かせている。
「凄い……補助魔法とか。やっぱりエルフは回復系の人なんだなぁ……」
「おい真樹!お前はもう少し危機感を持て」
コツンと真樹の頭を叩いたフェイに、真樹は膨れっ面で抵抗を見せる。そんなやり取りを見ながらリスティアムはくすくと笑った。
「確かにエルフは回復魔法などを得意とはしていますが、微力ですが攻撃魔法も使えますよ」
「す、凄い!」
「ちょっと真樹。僕に魔法教えてって言いながら、鞍替え?真樹って案外浮気者なんだ」
「ち、違う!レティの魔法だって凄いよ!」
あわあわする真樹の様子を見て、すっかり元の状態に戻ったのだと実感したカイ。するとリスティアムが四人に声をかけた。
「もう夜も遅いですし、私の館へ来てください。お二人もお腹が空いてますよね。温かいスープを用意しますよ」
「やったぁ!お腹空いていたんだよね」
「現金なやつ」
ボソリと呟くレティ。するとリスティアムは真樹の手を取った。
「さあ行きましょう」
「えっ?えっ?」
キョトンとする真樹だが、それを見ていたカイが「おい!」と声を出しかけたので、フェイがカイの肩を掴んだ。
「ライバル出現か?」
ニヤリと笑ったフェイに、カイは引きつった笑みを浮かべる。
皆がリスティアムの家に向かう中、レティが「先に行っていて」と言ってその場で足を止めた。
「レティどうしたんだろ?」
「さあな。何か見つけたんじゃないのか?」
「ほら、行きましょう」
「う、うん……」
真樹、フェイ、リスティアムが前を歩く中、ふいに後ろを振り返ったカイは、空を見上げるレティを見た。
「レティ?」
レティは何もない空に向かって何か呟いていた。それが一体何か、この時は全くわからなかったのだ。
状況が把握できない真樹とカイ。すると「真樹!カイ!」っと聞き馴染みのある声が聞こえた。
「フェイ!レティ!」
「全然姿見せないから探したぞ!」
「君達は闇の迷宮って言う術にかかったんだよ」
そこに現れたのはレティとフェイ。どうしてここに二人がいるのか全くわからないでいると、助けてくれた男がこちらを向いた。
「この術はかけるのは簡単なのですが、解除は少し厄介でしてね。私がお手伝いしたのです」
その人物は優しげな表情を見せた。そして耳が尖っていたり、透けるような白い肌をしているのを見て、真樹は「エルフ!」と叫んだ。
「はい。私はエルフのリスティアムです」
本物ほエルフだと感動する真樹だが、レティは「状況見ろよ」と現実に引き戻す。
「さて、この状況でもまだ抵抗しますか?」
「うぐっ……」
リスティアムの言葉に何も言えないのか、フードの男は後ずさる。
「くそっ!今回はこれくらいにしてやる!僕は絶対諦めないからな!」
いかにもなセリフを残してその場から姿を消した男。すると周囲が歪み、そこはただの森となった。
「一体どうなってるんだ?」
「術者がいなくなった事に加え、私が施した術が作動したのです。これで元に戻りました」
「ありがとうございます。助かりました」
丁寧に礼を述べるカイとは違い、真樹はリスティアムを見ながらずっと目を輝かせている。
「凄い……補助魔法とか。やっぱりエルフは回復系の人なんだなぁ……」
「おい真樹!お前はもう少し危機感を持て」
コツンと真樹の頭を叩いたフェイに、真樹は膨れっ面で抵抗を見せる。そんなやり取りを見ながらリスティアムはくすくと笑った。
「確かにエルフは回復魔法などを得意とはしていますが、微力ですが攻撃魔法も使えますよ」
「す、凄い!」
「ちょっと真樹。僕に魔法教えてって言いながら、鞍替え?真樹って案外浮気者なんだ」
「ち、違う!レティの魔法だって凄いよ!」
あわあわする真樹の様子を見て、すっかり元の状態に戻ったのだと実感したカイ。するとリスティアムが四人に声をかけた。
「もう夜も遅いですし、私の館へ来てください。お二人もお腹が空いてますよね。温かいスープを用意しますよ」
「やったぁ!お腹空いていたんだよね」
「現金なやつ」
ボソリと呟くレティ。するとリスティアムは真樹の手を取った。
「さあ行きましょう」
「えっ?えっ?」
キョトンとする真樹だが、それを見ていたカイが「おい!」と声を出しかけたので、フェイがカイの肩を掴んだ。
「ライバル出現か?」
ニヤリと笑ったフェイに、カイは引きつった笑みを浮かべる。
皆がリスティアムの家に向かう中、レティが「先に行っていて」と言ってその場で足を止めた。
「レティどうしたんだろ?」
「さあな。何か見つけたんじゃないのか?」
「ほら、行きましょう」
「う、うん……」
真樹、フェイ、リスティアムが前を歩く中、ふいに後ろを振り返ったカイは、空を見上げるレティを見た。
「レティ?」
レティは何もない空に向かって何か呟いていた。それが一体何か、この時は全くわからなかったのだ。
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