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第一話
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(えっ?何で誰も助けてくれないの?)
立ち尽くすカイとフェイの姿を見た真樹は涙をぽろぽろと流していた。巨大スライムの下ではレティが何かしている。どうして誰も助けてくれないのか。もしかして自分がこんな目にあっているのを皆嘲笑っているのだろうか。
「ひ、酷いよぉ……誰も助けてくれない……」
その間にもぬるつく触手は真樹の体中を這っている。もはや服の原型などほとんどない。あられもない姿を三人に見せつけてるのだ。そのみじめな姿に真樹は更に泣きじゃくった。
「ふえっ……助けてよぉ……」
見るも無残な姿の真樹を見てカイは動き出したい衝動に駆られる。だが下手には動けないのだ。興奮中に手を出せば、体液が消化液に変わり真樹を溶かすかもしれない。だがわかっていても駄目だ。
「カイ……助けてぇ……」
その一言がカイの心を突き動かした。
「ちょ、カイ!ダメだ!」
だが動き出したカイは勢いよく走りだし、真樹を捕らえている触手を斬ろうとした。その時だった。
カイの振り下ろした剣が激しく閃光した。一瞬の事で何があったのか、その場にいた誰もがわからなかった。だが真樹を捕らえていた巨大スライムは一瞬にして消え、囚われの真樹は解放された。
「真樹!大丈夫か?」
「えっ?う、ん……カイ、今のは?」
「えっ?さぁ、わかんない。真樹を助けるのに必死だったから」
カイはマントを真樹にかける。だがそんな二人の間に割って入ったのはレティだった。
「いい感じの所悪いんだけどさぁ……どうしてくれるの?巨大スライムの体液ちょっとしか手に入らなかったんだけど……」
「そんなの知らない。それよりもお前はこうなる事がわかっていて、真樹をこんな目に合わせたんだよな」
「物を得るには多少の犠牲は必要だよ。どうせ採取した後は助けてあげるつもりだんだし」
「そういう事じゃない!真樹を傷つける事は許さない!」
その一言に場はシーンとなった。真樹自身もポカンと口を開けたままだ。聞いていたフェイに関してはクスクス笑いだした。
「まるで真樹は王子様に守られるお姫様みたいだな」
「本当に恥ずっ。そんなセリフよく言えるよね」
「はっ?別に普通だろう。真樹は幼馴染なんだ」
だがそれは聞きようによっては凄いセリフだし、これを真樹が言ったとしても成立しない。イケメンが言うからこその迫力だ。
「それにしても君、凄いね。さっきの技どうやって出したの?」
「そんなの知らない」
「成程。無意識で技を出したのかぁ……」
ここに来てカイのレベルが上がったどころか、必殺技まで出している。異世界に来てなにかと開花しているカイと、片や何も開眼していない真樹。
(なんでイケメンばっかりいい思いしてるんだ?)
こうして助けられ、守られる状況が恥ずかしくなってきた真樹。
「それよりも、どうしてこんなとこに一人で来たんだ?真樹」
「それは……レティに魔法を教えてもらう為に、度胸試しだって洞窟の中へ行くよう言われて……」
チラリとレティを見た真樹だが、当の本人はプイっとそっぽ向いた。
「魔法って……じゃあお前魔法使いなのか?」
そう訊ねたフェイに「そうだよ」と言った。
「はぁ、そりゃ真樹が驚くのもわかるな。オレもそうだし」
「えっ?どういう事?」
「魔法使いってのはこの世界では貴重な存在なんだ。実際にオレも初めて見たし」
ツンと澄まして悪びれる様子もないレティは、この世界ではそういう存在なのかと改めて思った真樹。散々な目に合っていながら更に目を輝かせた。
立ち尽くすカイとフェイの姿を見た真樹は涙をぽろぽろと流していた。巨大スライムの下ではレティが何かしている。どうして誰も助けてくれないのか。もしかして自分がこんな目にあっているのを皆嘲笑っているのだろうか。
「ひ、酷いよぉ……誰も助けてくれない……」
その間にもぬるつく触手は真樹の体中を這っている。もはや服の原型などほとんどない。あられもない姿を三人に見せつけてるのだ。そのみじめな姿に真樹は更に泣きじゃくった。
「ふえっ……助けてよぉ……」
見るも無残な姿の真樹を見てカイは動き出したい衝動に駆られる。だが下手には動けないのだ。興奮中に手を出せば、体液が消化液に変わり真樹を溶かすかもしれない。だがわかっていても駄目だ。
「カイ……助けてぇ……」
その一言がカイの心を突き動かした。
「ちょ、カイ!ダメだ!」
だが動き出したカイは勢いよく走りだし、真樹を捕らえている触手を斬ろうとした。その時だった。
カイの振り下ろした剣が激しく閃光した。一瞬の事で何があったのか、その場にいた誰もがわからなかった。だが真樹を捕らえていた巨大スライムは一瞬にして消え、囚われの真樹は解放された。
「真樹!大丈夫か?」
「えっ?う、ん……カイ、今のは?」
「えっ?さぁ、わかんない。真樹を助けるのに必死だったから」
カイはマントを真樹にかける。だがそんな二人の間に割って入ったのはレティだった。
「いい感じの所悪いんだけどさぁ……どうしてくれるの?巨大スライムの体液ちょっとしか手に入らなかったんだけど……」
「そんなの知らない。それよりもお前はこうなる事がわかっていて、真樹をこんな目に合わせたんだよな」
「物を得るには多少の犠牲は必要だよ。どうせ採取した後は助けてあげるつもりだんだし」
「そういう事じゃない!真樹を傷つける事は許さない!」
その一言に場はシーンとなった。真樹自身もポカンと口を開けたままだ。聞いていたフェイに関してはクスクス笑いだした。
「まるで真樹は王子様に守られるお姫様みたいだな」
「本当に恥ずっ。そんなセリフよく言えるよね」
「はっ?別に普通だろう。真樹は幼馴染なんだ」
だがそれは聞きようによっては凄いセリフだし、これを真樹が言ったとしても成立しない。イケメンが言うからこその迫力だ。
「それにしても君、凄いね。さっきの技どうやって出したの?」
「そんなの知らない」
「成程。無意識で技を出したのかぁ……」
ここに来てカイのレベルが上がったどころか、必殺技まで出している。異世界に来てなにかと開花しているカイと、片や何も開眼していない真樹。
(なんでイケメンばっかりいい思いしてるんだ?)
こうして助けられ、守られる状況が恥ずかしくなってきた真樹。
「それよりも、どうしてこんなとこに一人で来たんだ?真樹」
「それは……レティに魔法を教えてもらう為に、度胸試しだって洞窟の中へ行くよう言われて……」
チラリとレティを見た真樹だが、当の本人はプイっとそっぽ向いた。
「魔法って……じゃあお前魔法使いなのか?」
そう訊ねたフェイに「そうだよ」と言った。
「はぁ、そりゃ真樹が驚くのもわかるな。オレもそうだし」
「えっ?どういう事?」
「魔法使いってのはこの世界では貴重な存在なんだ。実際にオレも初めて見たし」
ツンと澄まして悪びれる様子もないレティは、この世界ではそういう存在なのかと改めて思った真樹。散々な目に合っていながら更に目を輝かせた。
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