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第一話
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カイと一緒にやって来たのは、アニメやゲームで見るような西洋風の建物が並ぶ町といった感じの場所だ。町の中央には噴水があり、その離れた場所では露店などが並んでいた。住宅や店舗などは、そこを中心にして大小様々な道が広がっている。
「す、凄い……」
本当に自分は異世界に来たのだ。アニメやゲームのような世界観が目の前に広がっていて、真樹は感動すら覚えた。カイはそんな真樹の顔を見てクスリと笑った。
「そんなに凄いのか?」
「凄いよ!だってゲームの世界みたいなんだよ!」
目を輝かせる真樹を見て、優しく微笑むカイに真樹はドキリとした。
「お前がそうやって楽しそうなの、久々に見たかも」
「そ、そう?」
「あぁ。昔みたいで凄く可愛い」
可愛い?こんなチビで、ガリな根暗。基、男に対して可愛いとはどういう事なのだろうか。
(確かに僕は男らしさのかけらもないけど、可愛いはないだろ)
頭を悩ます真樹とは違い、カイはあまり意識していなさそうに先へと進んでいった。
「ほら、ここがどこか聞かないといけないだろ?早く来いよ」
「う、うん……」
噴水のある広場で、カイは花屋の露店をしている人の好さそうな母親くらいの年齢の女性に声をかけた。
「すみません。僕達道に迷って……ここってどこですか?」
「ここはリュートの町だよ。なんだい二人とも。見慣れない恰好しているけどどこの国から来たんだい?」
見慣れない恰好と言われ、真樹とカイは顔を見合わせた。二人共制服のままなのだ。紺のブレザーに赤いタイ。元の世界では普通でも、こちらの世界では不思議な服装なのだろう。それに町の名前も聞いた事がない。やはりここは異世界なのだ。
「それについては……ちょっと言えないんですが、ここでは何が有名なんですか?」
「有名所って言ったら、果物だろうね。この場所は気候もいいし、年間を通して美味しい果物が沢山なるよ」
「そうですか。お仕事の邪魔をしてすみませんでした」
「いやいいのよ」
相手に怪しまれそうになっていたが、話を挿げ替えてなんとか難を逃れたカイ。さすがコミュ力が高いだけあって、真樹にはそんな事は出来ない。
花屋の露店から少し離れ、噴水広場で空いていたベンチに腰をかけた。
「とりあえずここは日本じゃないって事はわかったけど、これじゃあどうしようもないよなぁ」
「あ、あのさ……おそらく僕達、異世界にやって来たんだよ」
「異世界?あぁ、言われたらそうだろうけど、何でだ?」
「わ、わからないよ。でもあの事故がきっかけだったのは確かだよ」
きっとベタな異世界話をカイにした所でわかってもらえないだろう。だが真樹には一つだけ疑問もあったのだ。
「ここが異世界で、僕達がここに来たって事は、偶然じゃなくて誰かに呼ばれたんじゃないかな?」
「どういう事だ?転生したなら姿形変わっててもおかしくないけど、僕達二人共、事故に合う前のままじゃない。だから誰かに呼ばれたんだと思う」
「真樹の話が本当なら、俺達を呼んだ誰かがこの世界のどこかにいるって事だよな」
だが世界の規模も、歩き方も、右も左のわからない。そんな相手をどうやって探せばいいのか二人は頭を悩ませた。
「へぇ、おもしろそうな話してるね」
二人の前に突然現れた一人の男。男は二人と同じくらいの歳で、髪は茶色、皮の胸当てホルダーにマント。腰に帯剣をしている。見るからに剣士風の男に二人は見合って首を傾げた。
「す、凄い……」
本当に自分は異世界に来たのだ。アニメやゲームのような世界観が目の前に広がっていて、真樹は感動すら覚えた。カイはそんな真樹の顔を見てクスリと笑った。
「そんなに凄いのか?」
「凄いよ!だってゲームの世界みたいなんだよ!」
目を輝かせる真樹を見て、優しく微笑むカイに真樹はドキリとした。
「お前がそうやって楽しそうなの、久々に見たかも」
「そ、そう?」
「あぁ。昔みたいで凄く可愛い」
可愛い?こんなチビで、ガリな根暗。基、男に対して可愛いとはどういう事なのだろうか。
(確かに僕は男らしさのかけらもないけど、可愛いはないだろ)
頭を悩ます真樹とは違い、カイはあまり意識していなさそうに先へと進んでいった。
「ほら、ここがどこか聞かないといけないだろ?早く来いよ」
「う、うん……」
噴水のある広場で、カイは花屋の露店をしている人の好さそうな母親くらいの年齢の女性に声をかけた。
「すみません。僕達道に迷って……ここってどこですか?」
「ここはリュートの町だよ。なんだい二人とも。見慣れない恰好しているけどどこの国から来たんだい?」
見慣れない恰好と言われ、真樹とカイは顔を見合わせた。二人共制服のままなのだ。紺のブレザーに赤いタイ。元の世界では普通でも、こちらの世界では不思議な服装なのだろう。それに町の名前も聞いた事がない。やはりここは異世界なのだ。
「それについては……ちょっと言えないんですが、ここでは何が有名なんですか?」
「有名所って言ったら、果物だろうね。この場所は気候もいいし、年間を通して美味しい果物が沢山なるよ」
「そうですか。お仕事の邪魔をしてすみませんでした」
「いやいいのよ」
相手に怪しまれそうになっていたが、話を挿げ替えてなんとか難を逃れたカイ。さすがコミュ力が高いだけあって、真樹にはそんな事は出来ない。
花屋の露店から少し離れ、噴水広場で空いていたベンチに腰をかけた。
「とりあえずここは日本じゃないって事はわかったけど、これじゃあどうしようもないよなぁ」
「あ、あのさ……おそらく僕達、異世界にやって来たんだよ」
「異世界?あぁ、言われたらそうだろうけど、何でだ?」
「わ、わからないよ。でもあの事故がきっかけだったのは確かだよ」
きっとベタな異世界話をカイにした所でわかってもらえないだろう。だが真樹には一つだけ疑問もあったのだ。
「ここが異世界で、僕達がここに来たって事は、偶然じゃなくて誰かに呼ばれたんじゃないかな?」
「どういう事だ?転生したなら姿形変わっててもおかしくないけど、僕達二人共、事故に合う前のままじゃない。だから誰かに呼ばれたんだと思う」
「真樹の話が本当なら、俺達を呼んだ誰かがこの世界のどこかにいるって事だよな」
だが世界の規模も、歩き方も、右も左のわからない。そんな相手をどうやって探せばいいのか二人は頭を悩ませた。
「へぇ、おもしろそうな話してるね」
二人の前に突然現れた一人の男。男は二人と同じくらいの歳で、髪は茶色、皮の胸当てホルダーにマント。腰に帯剣をしている。見るからに剣士風の男に二人は見合って首を傾げた。
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