上 下
14 / 16

不穏な空気

しおりを挟む
 ニーアの元へ来て一週間程。そこから朝早く仕事先のカフェへ向かうのは少々大変だったが、私は毎日順風満帆な生活を送っていた。
 お店に顔を出すニーアは、時間を変え、私の勤務が終わる少し前に来る。そして一緒に買い物をして帰るのが日課のようになった。カイン達からは「羨ましいねぇ」「熱いね」などと言った冷やかしを受けるが、それでも満ち足りた生活だなと思った。
 おかげ様でつい乙女ゲームの中である事も、この話のハッピーエンドの区切りがどこなのかもわからなかった。
(もしかしてすでにハッピーエンドなのかな?これはその延長戦?)
 いつの間にこの物語のアフターなど登場したのだろうかと考えていた。だがもしそうであってもまだ解決していない事もある。このフラグを回収していないのにアフターに突入していいのだろうかとも考えた。回収していないフラグはもちろん黒いモヤだ。
 今の生活に満足していたからか、すっかり忘れていたが、あれ以来国内で黒いモヤを見る事はなかった。ではあれは幻だったのだろうか。このまま現れないならばそれでもいい。この生活を壊される事さえなければ。そう願っていた。
 しかし平穏とはそういつまでも続かないものだった。


 その日はカフェの営業が少し長引いた為、帰りは日が暮れてからとなった。しかも今日はニーアの迎えはない。と言うのも、仕事なのだと言っていた。ここで疑問になったのが、ニーアの仕事とは一体何か?一緒にいて私はニーアの事をあまり知らない気もした。
 帰り際に遅くまでやっているデリのお店で晩御飯を買い、家に戻ろうとした時だった。
「あれ?」
 人ごみに紛れ家とは違う方へと歩いて行くニーアの姿を発見したのだ。
「ニーア……?」
 なんだか気になった私は、ニーアにバレない様に距離を取りながら後を追った。
 しばらく歩くと人ごみから外れ、人の通りが少ない場所へとやって来た。何故こんな所にいるのだろうか?気になってニーアの様子をじっと見ていた。すると……
「あ、あれは……」
 ニーアの前に現れたのは黒いモヤ。どうしてニーアが黒いモヤといるのか。ニーアが危ない!そう思った時、ニーアはあろうことか黒いモヤに触れたのだ。
(ど、どういう事?ニーアは最初から黒いモヤの正体を知っていた?というよりは飼いならしてる?)
 黒いモヤの取り扱いに慣れているのか、ニーアは動揺する事なかった。この状況を見るに、黒いモヤはニーアによって操られている?でもどうして?わからない。とにかくわからなかった。
 このままここにいるのは危険かもしれない。そう思ってその場から去ろうとした時だった。
「んぐっ!」
 突然背後から口をふさがれたのだ。慌てた私は暴れるが、すぐに「静かにしろ」と聞きなれた声がした。振り返った先にいたのはノルトだった。どうしてここにいるのだろうか。
「やはりあの黒いモヤの犯人はあいつだったか……」
 どういう事だろう。私は聞き返したかったが、口をふさがれているので声が出せない。するとノルトが「声を出すなよ」と言って手を放してくれた。
「とりあえずここでは話せない。こっちに来い!」
 ノルトに連れられその場を後にした私。どうしてニーアが黒いモヤの犯人なのか。その真相を聞かなくてはいけない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの敵役の妹兼悪役令嬢に転生したので、今日もお兄様に媚を売ります。

下菊みこと
恋愛
自分だけ生き残ろうとしてた割にフラグクラッシャーになる子のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

三百年地縛霊だった伯爵夫人、今世でも虐げられてブチ切れる

村雨 霖
恋愛
父が腰巾着をしていた相手の家に、都合よく使われるために嫁がされたマリーゼ。 虐げられる日々の中、夫の愛人に殺されかけたのをきっかけに、古い記憶が蘇った。 そうだ! 私は前世で虐げられて殺されて、怒りで昇天できずに三百年ほど地縛霊になって、この世に留まっていたのだ。 せっかく生まれ変わったのに、私はまた虐げられている。 しかも大切な人の命まで奪われてしまうなんて……こうなったら亡霊時代の能力を生かして、私、復讐します! ※感想を下さったり、エールを送ってくださった方々、本当にありがとうございます!大感謝です!

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

婚約破棄された私。大嫌いなアイツと婚約することに。大嫌い!だったはずなのに……。

さくしゃ
恋愛
「婚約破棄だ!」 素直であるが故に嘘と見栄で塗り固められた貴族社会で嫌われ孤立していた"主人公「セシル」"は、そんな自分を初めて受け入れてくれた婚約者から捨てられた。 唯一自分を照らしてくれた光を失い絶望感に苛まれるセシルだったが、家の繁栄のためには次の婚約相手を見つけなければならず……しかし断られ続ける日々。 そんなある日、ようやく縁談が決まり乗り気ではなかったが指定されたレストランへ行くとそこには、、、 「れ、レント!」 「せ、セシル!」 大嫌いなアイツがいた。抵抗するが半ば強制的に婚約することになってしまい不服だった。不服だったのに……この気持ちはなんなの? 大嫌いから始まるかなり笑いが入っている不器用なヒロインと王子による恋物語。 15歳という子供から大人へ変わり始める時期は素直になりたいけど大人に見られたいが故に背伸びをして強がったりして素直になれないものーーそんな感じの物語です^_^

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...