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まだまだルートは消滅していない

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 もはや過去のデータは役に立たなくなっている。それならば自由に動こう。そう思った私は、先日カインやアルビーが話していた黒いモヤの正体を突きとめようと思った。
 元々ハンターでもなければ武器類は一切使えない私だが、ほぼ好奇心の塊で原因究明しようとしている。怖いし危険なのはわかっている。だが気になるものは仕方ないのだ。


 という事で、護衛を付けずは危険なのだが、カフェの休みを利用してリ・グリエターナ国郊外の森でベリー採取に行く名目で国の外に出た。
 別に閉じ込められているわけではないので、国内外に出入りするのは自由だ。ただ普通の人は護衛を付けるというだけだ。私は日が暮れる前までには国に戻ろうと思っていた。まぁ、そう簡単に出会えるとも思えないが、出会った時どうするのか……一応果物ナイフだが持参はしている。
 郊外にある森は奥に進めば進むほど深くなるので、そこまで行かないように気を付け、周囲を歩く。
 初めて外に出て思ったが、辺り一面は森に囲まれた国なのだと思った。そして国に近い場所でも日があまり届かず暗い。
「こんなものなのかな?普通はもっと明るい気もするけど……」
 これは日が暮れるのも早い。用事を済ませさっさと帰ろうと思った時だった。
「えっ?あれって?」
 なんともタイムリー……いつから乙女ゲームからファンタジーゲームになったのかと思った。目の前、とは言っても少し遠いのだが、人の形をして歩く黒いモヤのようなものが見えた。
 これは気になる。ちょっとばかり怖いが、黒いモヤに近づこうと思った時、強い力で腕を引かれた。
「何をしている?」
「えっ?」
 現れたのはノルトだった。
「アレには近づくな!」
「えっと……はい。でもなんでここに?」
「巡回だ。森を見回っていたらお前が一人でいるのを見つけてな」
 成程っと納得した。だがこうもタイミングがいいと、これはまだノルト攻略ルートが消滅していないのではと思ってしまった。いやいや……そうであってもあっちこっち行ってはいけない!
「護衛は着けてないのか?」
「はい……」
「ここは昼でも日が差し込まない森だ。一般人は護衛を付けるのが決まりなんだぞ」
「す、すみません。次からは気を付けます」
「全く……」
 どうやらノルトはスリ被害に会った時の出会いは忘れているようだ。
「とりあえず名前を聞いておこうか?」
 そう聞かれ名前を言うと、「危険行動をとる要注意人物だな」と言ってノルトは笑みを見せる。世のノルト推し達はこの無表情と笑顔のギャップにやられたのだろう。正直私もくらりとしたから間違いが起こったのだ。
 結局何もわからぬまま私はノルトに連行され国の方へと戻って行った。そしてあの黒いモヤも気が付かない内に消えていた。
 カインの話では何かに擬態していたと言っていた。では私が見たのは擬態ではないのでは?そうなると一層その黒いモヤが何か気になってしまった。
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