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第二の異世界人生スタート

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 さて、何故自分が乙女ゲームの世界に転生したのかは置いておこう。戻れるのかそうでないのかは今のところ不明で、手段がないからだ。
 せっかくゲームの神様?的な存在にリセットチャンスを与えられたのだ。次は慎重に物事を考えよう。


 そもそも私は極々普通の人生を歩んでいた。元々ゲームやアニメに興味はなかったが、友達に勧められてやった乙女ゲームが中々に面白かった。
 ゲームやアニメが好きな人には必ずその物語毎に「推し」というものが存在するらしいが、なんとなくでやった私にはこれという推しはいなかった。
 それがおそらくバッドエンドの敗因なのだろう。
「だってお話の中の男の人ってみんな顔と性格セットだし」
 全てにおいて私が悪いわけではないのでは?こうならない為に、もっとリアル寄りなキャラ作ればいいだけだし。
 だがそれをすると女性側からは飽きられるのだろう。このコンテンツも中々に難しいところだ。


 いろいろ考えながら街の中を歩いていると、メイン攻略キャラのカインが現れた。
「あの、もしかして何か困った事でもあるの?」
 あの時と同じセリフ。つまり選択するまでは同じ流れなのだ。正直面倒なのでここはスキップしたいところだが、そんな機能はない。
 少々面倒でもちゃんと物語を進める事にしよう。
「えっと……ここ初めてで、これからどうしようかと……」
「それだったら俺が働き口探す場所とか案内してあげるよ。あっ、オレはカイン。君は?」
 自分の名をカインに名乗る。カインは白い歯を覗かせながら「よろしくね」と言った。
 王道の明るいキャラだ。正直笑顔の瞬間後光がさしていた。


 私はカインに連れられ一軒のカフェに入る。
「いらっしゃいませ……ってカインさんですか」
 中から聞こえて来た声はこのカフェのマスターで白髭のダンディなジュードさん。
「マスター!オレはカフェオレの砂糖抜き。何か飲む?」
「そしたらカプチーノで」
「かしこまりました。珍しいですね。カインさんが女の子を連れて来るなんて」
「ちょっといろいろあってね」
 今のところ客は私達と、テーブル席に座る常連のおじいさんだけ。ここの人達は皆顔見知りなので、おじいさんはカインに対し「彼女か?」と聞き、「違う違う」と会話をした。なんとも平和で穏やかだ。このキラキラ感を後に壊したのは私なのだが……
 そうこうしているとカインには砂糖抜きのカフェオレ。私にはカプチーノが出された。
「折り入ってマスターに相談なんだけど」
「どうせろくでもない相談なのでしょ?」
「それはマスター次第?あのさ、この子をここで雇ってくれない?」
 えぇ!と驚きたいところだが知っている会話なので驚くフリくらいはしておく。
「どうやら出稼ぎでここに来たらしいんだけど、右も左もわからないみたい。ここならその辺で働くよりマシだしさ」
「うーん……うちは今ルカもいるからねぇ……」
 困るマスター。私は「お願いします!雑用でも何でもやります!」と懇願した。
 だがもしここで「いいです。自分で探すので」と言ったらどんな結末になるのか、それはそれで面白そうだが、リセットは一回こっきり。ここで出鼻を挫くわけにもいかないのでルート通りのセリフを言う。
「ただいま戻りました」
 タイミングよくやって来たのは、人形のように綺麗な顔立ちにさらさらの髪をした攻略キャラ二人目のルカだった。
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