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「きゃー!それって完全にそういう意味での旅行じゃないですか!」
翌日の昼食で川田との旅行について詩織と春菜に話した加奈。春菜はとても楽しそうにしている。当事者の加奈よりも……
「やっぱそうだよね。てか緊張するんだけど」
「えぇ?そうですか?てかそれくらいの経験普通じゃないですか?」
そう問われた加奈は答えられなかった。すると詩織が「もしかして……」と気が付いたようだ。
「霧島さんって今までそういう経験ないんですか?」
「恥ずかしながら……ないです」
「やだ!聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた!」
二人はキャーと言って口元に手を当ててはしゃいだ。やっぱりこの歳で付き合った事もないというのはおかしいのだろうか?
「本当にそういうのなかったんですか?ほら、学生時代とか……」
「学生時代、女子高だったし、大学も女子大だったから縁がなかったんだ」
「へぇ、なんかお嬢様系の漫画とかでよくあるシュチュエーションですね」
「ははは……たしかに」
少々引きつり気味な笑みを浮かべた加奈だったが、昼食も終わり、三人は職場に戻ろうとした。すると戻る間際に詩織が声をかけてきた。
「霧島さん」
「何?」
「もう南条さんの事……なんとも思ってないですよね?」
「なんともって……そもそも付き合ってないし!あぁ、お試し期間ってのがあったけど、でもなんともないから!」
「そうですか……ならいいんですけど」
結局詩織は何を言いたかったのだろうか?わからないまま加奈は仕事に戻った。
「おーい明人!元気してる?って……汚い部屋だな」
「仕方ないだろ……風邪引いて動けないんだし」
明人の自宅にやって来た小峰は、床に散乱した衣類や、片づけられてないまま無造作にシンクに置いてある食器類などを見て盛大に表情をしかめた。どう見ても一日、二日の汚さではない。
昨日の夜に二人で飲みに行った直後から身体に違和感があった。全身を這うような寒気に気怠さ。風邪の引き始めと思い早々に切り上げて眠ったのだが、翌朝には身体を動かすのも億劫なほどの本格的な風邪を引いてしまった。
そしてさらに翌日、風邪薬や飲み物などを小峰に頼んだのだ。
「お前片づけも出来ないの?」
「出来る。わかった事を聞くな」
「けど、どう見ても旅行行った時のまんまっぽいのもあるぞ」
「俺はこう見えても忙しいんだ」
聞いた事にいちいち突っかかって来る明人。風邪だろうが病気だろうが、口だけは相変わらず達者なようだ。
「とりあえずここに置いとくぞ」
「あぁ……」
ソファに項垂れている明人は、ガラステーブルに置かれた薬やミネラルウォータに手を伸ばす。それにしても本当に汚い部屋だ。この高級マンションの一室にあってありえない状況なので、さすがに小峰は掃除したくなった。
翌日の昼食で川田との旅行について詩織と春菜に話した加奈。春菜はとても楽しそうにしている。当事者の加奈よりも……
「やっぱそうだよね。てか緊張するんだけど」
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そう問われた加奈は答えられなかった。すると詩織が「もしかして……」と気が付いたようだ。
「霧島さんって今までそういう経験ないんですか?」
「恥ずかしながら……ないです」
「やだ!聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた!」
二人はキャーと言って口元に手を当ててはしゃいだ。やっぱりこの歳で付き合った事もないというのはおかしいのだろうか?
「本当にそういうのなかったんですか?ほら、学生時代とか……」
「学生時代、女子高だったし、大学も女子大だったから縁がなかったんだ」
「へぇ、なんかお嬢様系の漫画とかでよくあるシュチュエーションですね」
「ははは……たしかに」
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「霧島さん」
「何?」
「もう南条さんの事……なんとも思ってないですよね?」
「なんともって……そもそも付き合ってないし!あぁ、お試し期間ってのがあったけど、でもなんともないから!」
「そうですか……ならいいんですけど」
結局詩織は何を言いたかったのだろうか?わからないまま加奈は仕事に戻った。
「おーい明人!元気してる?って……汚い部屋だな」
「仕方ないだろ……風邪引いて動けないんだし」
明人の自宅にやって来た小峰は、床に散乱した衣類や、片づけられてないまま無造作にシンクに置いてある食器類などを見て盛大に表情をしかめた。どう見ても一日、二日の汚さではない。
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そしてさらに翌日、風邪薬や飲み物などを小峰に頼んだのだ。
「お前片づけも出来ないの?」
「出来る。わかった事を聞くな」
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聞いた事にいちいち突っかかって来る明人。風邪だろうが病気だろうが、口だけは相変わらず達者なようだ。
「とりあえずここに置いとくぞ」
「あぁ……」
ソファに項垂れている明人は、ガラステーブルに置かれた薬やミネラルウォータに手を伸ばす。それにしても本当に汚い部屋だ。この高級マンションの一室にあってありえない状況なので、さすがに小峰は掃除したくなった。
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