王様のいいなり!

まぁ

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「それじゃ今日の会議はこれまでで……佐伯、これ次までにまとめてて」
「わかりました」
 大きな円卓に巨大プロジェクターがあり、プロジェクターの電源を消すと部屋の明かりが灯された。会議が終わり出席者がぞろぞろと元の場所に戻る中、明人は椅子に座り背もたれに深く身を預けた。
「お疲れ!」
 大きなため息を漏らす明人の元に小峰がやって来た。
「あぁ……」
「なんだよ。せっかく順調に会議が終わったんだから安堵しろよ」
「安堵してる」
「そっか?どうせ今日はこれで終わりだろ?ならどっか行くか?」
「そうだな」
 ここ一週間この調子の明人に小峰は困り果てていた。明人がこんな風に仕事はちゃんとやるが、それ以外が腑抜けになってしまった本当の事情は彼女である詩織から聞いていたが、ここまで絵に描いたような腑抜けになるとは思ってもみなかった。
 社員旅行で加奈と喧嘩別れした際に言われた事は、明人の心にグサッと刺さったのだろう。しかもそれに追い打ちをかけるかのように川田と付き合う事になったという事実。
 会社では有能でクール。プライベートでは自信家で傲慢な明人も、相当堪えたようでその性格がなりを潜めている始末だ。
「まっ、元気出せって!お前だったら他の子見つけるのなんてすぐだろ?」
「うるさいな。それにまだ仕事中だろ」
「何言ってるんだよ。もう終わるっての。ほら、さっさと帰る支度しろよ!」
 バシバシと明人の肩を叩いた小峰。それから二人はそれから帰る準備をしてビルを後にしようとした。
「いい店見つけたんだよ。そこにしようぜ!」
「お前に任せるよ……」
 意気消沈の明人に何かと気を使う小峰だが、今日ほど気を使った事はないだろう。それもそうだ。実は朝、加奈が川田と出勤しているのをたまたま見つけてしまったのだ。いろんな意味で目撃者となった小峰は、明人の悲しそうな表情を見て気にかかってしまったのだ。
「あのさ明人……」
「何だ?」
「お前はこのままでいいのか?」
「……あぁ」
「本当にか?」
「あぁ、もう終わったんだ」
 これまでにこんな潔い明人を見た事があっただろうか?いやない。いつも傲慢で自分のする事に真っ直ぐな男だ。例えそれが無理難題の仕事だろうと何だろうと明人はやってのける。なのに今はどうだ?それに詩織から聞いた話では、加奈自身も明人に未練があるかのような感じらしい。これを本人に言うべきか……
「こんな事聞くのあれと思うんだけど。お前、今まで本気で誰かを愛した事ある?」
「なんだいきなり。お前の口からそんな言葉を聞くと気持ち悪い」
「気持ち悪くて悪かったな!俺なりにお前に気を使ってるんだぞ!ありがたく思え!」
「別にそんな事頼んでない」
 こういうとこはいつも通りの明人だ。だが、この男が本気の恋をしたのだと悟った小峰は、「これは重症だな」と口には出さなかったが、心の中でしばし呟いた。
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