王様のいいなり!

まぁ

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「お前って本当馬鹿だよなぁ……」
 明人の部屋にいた小峰は夜通し飲み続ける明人に付き合っていた。灰皿のたばこの吸い殻は山のようにこんもりとしており、今にも溢れそうだった。
「相手を思いやる、優しくするなんて、男として当然だろ?てか常識?」
「うるさいな」
「それが俺に対しての態度?俺はせっかく詩織ちゃんとあまぁい時間過ごしてたのに、電話で呼び出されるハメになってさぁ」
 隣から聞こえてくる喧嘩の声を聞いて予想はしていた。だが本当に呼び出されると思ってもみなかった小峰は、詩織に事情を説明し部屋から出した。詩織も「わかった。私の方も霧島さんの事見ておく」と言った。
「詩織ちゃんは物分りのいい子で助かったよぉ!それに比べてお前ときたら……何してんの?」
「俺はお前の惚気のろけと説教聞くために呼んだんじゃないんだが」
「説教されるのは当たり前だろ。加奈ちゃんの事傷つけたんだ。天罰だよ」
 クックと笑う小峰。会社では有能な人物も、一歩恋愛事となると有能ではなかったようだ。とはいえ、明人に言いよる女性の数も少なくはないし、明人自身もそれなりに場数は踏んでいる。そんな男が一人の女の子の言葉でここまで凹むとは、小峰としては見た事もない姿なのでおかしくて仕方なかった。
「要するにアレだな。お前は今まで本気の恋をした事がないから、勝手がわからず強引な手段をとったと……ホント子供だな」
「あぁもう!お前呼んだの失敗だったかもな」
「そりゃどうも。ならさ俺を解放してくれない?俺としては昨日の埋め合わせで詩織ちゃんに会いたいし」
「ふん!」
 こういう態度は相変わらずだ。表の明人も裏の明人も知っているのはこの会社では小峰くらいだろう。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?どうしたらあいつを振り向かかせられるんだ?」
「そんなのは自分で考えろよ。ホントお前って頭はいいのにそういうとこにはとことん馬鹿なんだな」
 さて、こうして一日を無駄にする男をどうしたものかと小峰は思ったが、ちょうどその時明人のケータイが鳴った。
「電話だぞ」
「知ってる……」
 そう言ってケータイを手にした明人が眉をしかめた。そして大きなため息を漏らし電話に出た。
「なんだ?」
『あっ、明人……あのね。私もうマンション出るから』
 声の主は加奈だ。だが明人自身それは予測していたのか、驚きもせず無表情でいた。
『もしもし?』
「あ、あぁ、そうか。わかった。荷物はどうする?送った方がいいか?」
『うぅん……旅行終わった帰りに取りに行く。そうたいした量じゃないし』
「わかった。鍵はポストにでも入れとけ……」
 そう言うと電話を切った。加奈の声は怒ってはいなかったが、もう明人に興味もなければ一緒にいたくないというのがありありと伝わって来た。手に持ったケータイをベッドに放り投げる。電話の相手が誰だったのか小峰にもわかったのだろう。小峰は「いいのか?」と尋ねた。
「これ以上加奈に嫌われたくはないからな」
「あぁ……こりゃ相当重症だな。まっ、お前だったらすぐ女捕まえられるだろ」
 その言葉に明人は何も言わなかった。本当は嫌だった。加奈が出て行くことを止めたかったが、これ以上はもう無理なのだろう。残り一本になったたばこを箱から取り出し火を付けた。
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