王様のいいなり!

まぁ

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 バタンと部屋のドアを閉めると、明人は加奈の唇を塞ぐ。キスは角度を変え何度も降り注いだ。次第に舌が侵入し口内を冒し始めた。
「ちょ、明人……まっ……」
 キスされる度、くぐもった息が漏れ、その合間に言葉を発しようとしたが、言葉は最後まで紡がれない。明人が怒っている事はわかる。それも相当だ。
「んっ!……ぁっ!あぁ……」
 淫靡いんびな音が鼓膜こまくを刺激する度、加奈の思考が快楽に飲まれそうになる。だがここで飲まれてはいけない。そう自分に言い聞かせ……
「明人!」
 両手で明人の胸を押し、なんとかキスから逃れた加奈は明人を見た。氷のように冷たい目が加奈を射抜く。手足が震える程怖い。
「勝手に戻って今度はあいつと逢引きか?」
「違う!川田君は体調が悪かったから介抱してて……」
「介抱ついでにキスをするのか?随分と小意気な介抱だな。俺もあやかりたいくらいだな」
「だから違うって!」
 正直な言葉を述べるが、明人は全然聞いてくれない。
「お前は俺の女だと何度言ったらわかるんだ!」
「だから私の話を少しでも聞いてよ!」
「いつも聞いてやってるだろ?なのにお前は俺を裏切る事ばかり。正直俺だって我慢の限界はある!」
 そうじゃない!そう叫びたかった加奈の目には涙が溜まっていた。むしろいつも加奈の話を聞いてると明人は言ったが、本気でふざけるなと言いたかった。
「あんたはどうしていつもいつも私を振り回すのよ……」
「何言ってる!それに今怒っているのは俺だろう!」
「知らないわよ!あんたはいつも強引で誠意がないのよ!少しは私の言葉に耳を傾けてよ!」
「聞いてるだろ!」
「聞いてない!それに本当に私の事好きなら……ちゃんと私にわかるように言ってよ!」
 もう限界だった。溜まった涙は次々と頬を伝い落ちて言った。ここぞとばかりに加奈は明人に言い放つ。
「傲慢でいっつも私を振り回して……あんたの言葉の人からでも誠意が伝われば、いつだってあんたの彼女になるわよ!そんなんだからあんたの彼女になりたいって思わないのよ!」
「加奈!」
「もうやだ……あんたなんか大っ嫌い!」
 掴まれている腕を強引に引き離した加奈は、逃げるように走って部屋を後にした。

 部屋に戻った加奈はベッドに俯せて泣き崩れた。幸い同室の女子達はまだ帰って来てない。
我ながら女優のようなセリフが出たものだと思った。きっと他の女子が聞けば加奈に対し激怒するだろう。だがそれでも加奈には譲れないものがあった。強引ではなく優しい言葉が欲しかったのだ。
その優しさがあれば加奈は明人になびいたはずだ。
それがないから川田の言葉は余計にでも加奈の心をくすぐる。それでも川田にいけない自分がなんとももどかしい。川田を目の前にして明人の顔がちらつく。
 日付も変わり、深夜遅くになって同室の女子達は帰って来たが、加奈は寝たふりをして同室の子達とは顔も合さなかった。むしろ合わせられなかった。
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