王様のいいなり!

まぁ

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「んっ!」
 加奈の後頭部に手を置いた川田がグイッと加奈を自分の方へと寄せ、あっという間に唇を塞いでしまったのだ。突然の事に目を見開いたままの加奈。川田の唇は熱く、油断していた加奈の口内に舌がすんなりと侵入してきた。
「ちょ……川田く……」
「好きです…」
「んくっ……!」
 その激しいキスに息をつく間もない。ようやく解放された加奈は肩で息をした。
「霧島さん。俺、本当に霧島さんの事好きなんです。どうしてわかってくれないんですか……?」
「ちょっと待って!川田君。私はまだ明人とも付き合ってるわけでは」
「そうやってあの人の名前を呼ぶのも聞いてるも、俺は嫌なんです……」
 ぎゅっと力強く抱きしめられた加奈。その肩に顔を埋めた川田に加奈は戸惑うばかりだった。
「川田君……」
「浩平……霧島さんにはそう呼んでもらいたいです」
 今まで後輩でしかなかった川田だが、目の前にいるのはれっきとした男だ。それをまざまざと思い知った加奈は、逃げる術を失くしてしまった。
「俺も霧島さんの事を加奈って呼びたいです」
「えっとあの……」
「好きです!だから南条さんじゃなく俺を見てください」
「あの……あの」
「それとも俺の事なんて所詮後輩で、男にも見えませんか?」
 そんな事はない。だがそれを軽々と口に出来るほど加奈はしたたかではない。川田の事は嫌いではなく、むしろ好きの部類に入るだろう。なのに心が動かなかった。いつも頭に浮かぶのは、あのふてぶてしい男、明人の顔だ。だからといって明人の事が好きか?それもまた微妙だった。
 もし明人が川田のように熱烈にアプローチしてくれたのならばわからなくもないが、明人が加奈にする事は横柄な態度で勝手に恋人宣言や命令ばかりだ。だから今一歩進む事が躊躇われる。
「加奈……俺だけを見て」
「川田く……っ!」
 またも唇を塞がれた加奈だったが、自分の視界の先に明人がいたのを見た。ハッとなり全身が硬直した。
 その直後……ドカッという鈍い音がしたと思うと、至近距離にいた川田の身体が足元に転がっていた。
「明人……」
「加奈!来い!」
 有無を言わさず明人は強引に加奈の手を引っ張りその場から去った。去り際に見た川田は項垂れたような表情をしていた。
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