王様のいいなり!

まぁ

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 大変なのは翌日だった。昨日の事もあり、会社に行くのも億劫な加奈は、予想していた通り、いろいろな人から明人との関係を聞かれる羽目に。もちろんその中には詩織も含まれていた。
「霧島さん!いつ南条明人とお付き合い始めたんです?もしかしてあの骨折事件がきっかけですか?」
 付き合ってはない!まだお試しだ。そして骨折事件がきっかけなのは間違いないのだが、どれをどう答えていいのか正直困ったが、詩織は更に追求する。
「もう何もないじゃ通用しませんよ!教えてくださいよ!川田君の事どうするんです?」
 矢継ぎ早に問われ困惑する加奈。会社もプライベートも逃げ場を失った加奈は、大きなため息を漏らして勘弁してこれまでの経緯を詩織に話した。
「まだ正式にお付き合いってわけじゃないけど……とりあえずお試し期間?川田君の事はちゃんと謝るよ」
「そうなんですね。なんか霧島さんが羨ましいなぁ……それで?きっかけはあれだったかもしれませんけど、どういう経緯でそうなったんですか?食事に行った時に言ってた人って南条さんだったんですか?」
「じゅ、順を追って説明するから。とりあえず落ち着こう!」
 今日は朝から大変だ。加奈は詩織に一から説明をする。加奈が明人を骨折させた事など周囲の、特に女子社員は知っている事なので、付き合うに至っての経緯を説明する事に。中には真剣に明人を狙っていた人もいたようで、加奈は一部からは嫌味を含んだ陰口を言われたが、それも許容の範囲だったので無視をした。
 この件に対し、もっとも説明するのに気が重かったのは川田に対してだった。だが、川田は朝から外回りでいない。ホッとしたのだが、どちらにしても言わなくてはいけないのでとても気が重い。
 結局川田は夕方近く、退社時間間近に会社に戻ってきた。
「あの、川田君……」
 様子をうかがうように話しかけた加奈。川田からはいつもの元気がない。それもそうだ。
「あのね、これから時間あるかな?少し話したい事あるんだけど……」
 川田はしばらく返事を戸惑っていたようだが、「わかりました」と弱々しく言った。

 五時になり退社をすると、二人は会社近くにある公園に向かった。向かうまでの沈黙が正直とても重かったが、川田が缶コーヒーを買って来ると言ってその場を去った。
 先にベンチに腰を下ろした加奈は、朝からの気苦労で疲弊しきっていた。少し待っていると缶コーヒーを買ってきた川田が戻ってきた。
「どうぞ」
「……ありがとう……」
 気まずい……
 だがなんとかして話をしなくてはいけない。そう思っていると、川田の方から加奈に質問をしてきた。
「昨日の人って、この前駅で会った人ですよね?たしか上の階の外資会社の」
「そう……だね。てか知ってたんだ」
「はい。女子達がよく騒いでましたから」
 他の会社にまで知られる人物。たしかに顔はいい。普通の女子なら騒いで当たり前だろう。だが、そんな話をしなくてはいけないんじゃない。息を飲み加奈は川田を見た。
「川田君、ホントごめん!」
「…………」
「黙ってたとか騙したとか、そういうんじゃなくて。ただ、いろいろ事情がありまして……」
 加奈は明人と出会った経緯や、明人の家で介護と言う名の住み込みをしている事など、洗いざらい全てを話した。もちろんセクハラ紛いの意地悪などは省いたが……
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