王様のいいなり!

まぁ

文字の大きさ
上 下
33 / 69

33

しおりを挟む
「私は……」
「なんだ?」
「正直わからない。逃げようと思えば逃げる事だってできたのに……なのに逃げられないし、いつもあんたの言葉に翻弄されるし。なのに……」
 最後まで言い切れなかった。自分は何を言いたかったのか?もうわからなくなるほど頭の中が混乱していた。明人はまたも加奈の唇を塞ぐ。次のキスは触れるだけのものではなく深く、そして舌を絡ませる濃厚なものだった。
「っふ、ん……」
 初めは嫌だったキスも、いつしか慣れてしまった。それだけでなく、される度に加奈の中で感じたこともない衝動が身体の中を駆け巡った。
「ふあっ!……っ……」
 口内の粘膜が擦れ合う淫靡いんびな音が部屋中に響き渡る。もっとしてほしいと身体がせがんでいる。
「んっ……はふっ……」
 だが加奈の思いと裏腹に、明人の唇は加奈から離れた。
「ならこれから確かめていけばいい。今はそれで許してやるよ」
「……明人……?」
「そうだな?これからお試し期間でどうだ?」
「お試し?」
「そうだ。お前が俺に溺愛しているとわかるまではキスだけで我慢してやるさ。けど、俺に溺愛しているとわかった時点でお前の身体もらうからな」
 話がてんで思わぬ方向に行ってしまったと思った。だが、加奈はその案にコクリと頷いた。それを見て明人はクスッといつもの嫌味満載の笑みを見せる。
「これでも俺なりに譲歩してやってる。本当ならすぐにでもセックスしたいとこだが、ありがたく思えよ」
「んなっ!」
 カーッと頭に血が上る。それを見て明人はさらに意地悪い笑みを浮かべた。
「よし、これで下僕生活は確保。そして川田とかいう男は諦めろよ」
「あんたねぇ……」
「どうせお前は俺以外好きになれないさ」
 どこからそんな自身が溢れるのだろうか?完全に加奈の気持ちなど無視なのは相変わらずとして、綺麗に明人のペースに巻き込まれた自分がとても情けなく思えた。
「し、仕方ないから、あんたの我がままに付き合ってあげるわよ……」
 本当に自分は馬鹿だと思った。これでは明人のいいなりだ。
 加奈の言葉を聞いた明人が加奈の鼻を摘まむ。摘ままれた加奈は「んぎゃ!」と情けない声を漏らした。
「何気取ってやがる。どこのツンデレだ」
「う、うるさい……」
 いつもならかんかんに怒るところだが、明人の気持ちを聞いたのでとりあえずはよしとする事にした。
「そうだ!小峰さんって人から書類預かってるんだった」
 バックの中から書類の入った封筒を取り出し明人に渡した。
「ったく、相変わらず色気のないやつだな」
 そう言いながら袋を手にした明人は、袋の中の書類に目を通した。
「そうだ!ご飯作らなきゃ!」
 いそいそと立ち上がった加奈は夕食の準備に取り掛かることにした。
 明人とこれから恋人としてお試し期間付き合う。なんだか今までにないケースに加奈は拍子抜けしつつも、自分が明人のような押しに弱い事に壁々としてしまった。
(これからどうなるんだろ……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

ニューハーフ学園

フロイライン
恋愛
自分の性に違和感を持つ人達を救うために作られた学校「GL学園高校」 しかし、ある日転校してきた森下光瑠だけは、他の生徒とは明らかに違っていた。

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

エリート課長の脳内は想像の斜め上でした!? ~一夜の過ちにはしてもらえなかった話~

えっちゃん
恋愛
飲み会に参加した夜、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の性癖をくすぐり、執着されたらしい私には彼の思考は斜め上過ぎて理解不能です。 性描写がある話には*がついています。 シリアスにみせかけた変態課長との純愛?話。 前半はヒロイン視点、後半は課長視点。 課長は特殊な変態です。 課長視点は下品で変態描写が多いため、苦手な方はごめんなさい。 他サイトにも投稿しています。

処理中です...