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しおりを挟む「――あっ、でもそういえば…」
と、一転。
どこか訝しげな表情を望月が見せてきたため、「……!?」俺はバッと再び望月のほうへと顔を向ける。
望月はえっとその…と、口をもごもごさせながらも「……いっつんと伊波くんがよくしゃべっているところを頻繁に見かけるようになって、それでちょうど先週らへんのことなんですけど…」話しだし始め。
『……へぇ、そうなんだ。ふふっ』
『ほんとそれがとってもかわいくってさぁ……って、もっちーお~い!』
『…えっ? あっいっつん! …と、いっ伊波くん…!』
『こんにちは、望月くん』
『こ、こんにちはです…えと、お二人は…』
『あっ、藤枝~! ちょっと今日の部活のことで聞きたいことあんだけどよぉ』
『えっ、あっわかった今行くよ…! ごめん二人とも、オレちょっと行ってくるねっ』
『うん、いってらっしゃい藤枝くん』
『あ、いってらっしゃいです…』
『…ふふ、藤枝くんって本当サッカーに一生懸命だよね』
『! そうですね……あの、以前から少し気になっていたのですが、伊波くんといっつんて』
『いっつん? ああ、藤枝くんのことか。いっつんってあだ名、なんだか藤枝くんにピッタリで可愛いよね』
『かわっ……あの、伊波くんはその…いっつんとどうして急にこんなに親しげな感じになっていったのでしょうか…?』
『え…?』
『あっすすすみませんっ差し出がましいことをいきなり不躾に聞いてしまいましてっ…!』
『ううん、気にしないで……そうだなぁ、しいて言うなら藤枝くんが面白くて、彼の反応がとってもかわいらしい
から…かな。それと……藤枝くんとは、すっごく気が合うっていうのもあるかもね、ふふっ♡』
『!!?』
「……ということが、あっありましてですね…」
「は~なんとまぁ、あの伊波くんがそんなことを」
「――…」
………なんだ、それは。
っ、いつぐが本人は外も中も地味男だっていいながらも、意外と面白い性格してることや、反応が…かっかわいいってことにはめちゃくちゃ同意だけども……何で、それを伊波が語尾にハートマークでも付いてそうな話し方で語ってやがるんだよっ!? しかも、すっごく気が合うって……キガアウって、何語だ???
ダメだ、衝撃やら混乱やら何やらで頭の中おかしなことになってやがる。
さらにそんな俺の横で、
「でもあれだよなぁ、伊波くんってマジで掴みどころないっていうか何か不思議なオーラ漂わせてるっていうか…」
「ああっわかります! あの綺麗な外見もそれをさらに加速させてるといいますかっ…」
「そうそうっ、そういやこの前なんか隣のクラスの男子たちが冗談なのか本気なのか、『オレ、伊波ならイケるからもしんねぇわ』とかなんとか話してたの聞いたな~」
「なんとっ、そういうのはBL漫画や小説の中だけのモブ男の放つ台詞かと思っておりましたが、本当にあるのですねっ! き、聞きたかった…!!」
「BLで思い出したけど、ななっちも前に言ってたなぁ。『伊波くんミステリアスな孤高の美人受けで最高だけど、でも今のところ相手がいないのよねぇ、惜しいわぁ…』ってさ。まぁ言ってる内容半分くらいわかんなかったけども、ははっ」
「は~さすが上杉さん、既に伊波くんは対象内でしたか。でも確かにお相手…というか、いつも教室内で静かに本を読んでいる姿がとっても絵になっているものの、どうしてか親しいご友人を今までお作りになってなかったみたいですからね。それなのに、何故かいっつんとは…」
「――…何故かいつぐとは、わざわざ自分のほうから声をかけて、仲良くなろうとしているんだよな……伊波は、」
「そうっ、そうなんですよ……ってハッ!?」
「…そう、自分から…すっごく気が合う…伊波なら、イケる…お相手…」
「ひええええっ!? ちがっ違うんですぅぅぅ矢代くんんんんっ!!」
「疾風っ、疾風っしっかりしろって!!」
……びーえるやらうけやらの単語は未だに何なのかよくわからなかったが、二人が話していた内容から言えば、やはり誰から見ても、伊波がいつぐと仲良くなろうとしている姿は……『謎』そのものであり。
アイツを、伊波コウを何故か即座に『危険なヤツ』として認識してしまったあの時の俺の勘は――間違いではなかった、ということなのか?
『うん、オレも疾風くんのことが大好きだよ♡♡♡』
っ……わかってる、
いつぐは何があろうとも、いつだって俺のことを想っていてくれてるってことは――ちゃんとわかってるんだ。
けれど、もしも……万が一にでも、伊波がいつぐを『そういう』目で見ていたとしたら……っ、だとしたら、
そんなの、
「あっあのあのっや、矢代くん…きっと伊波くんは本当にいっつんに純粋な友情を感じてそれでっ」
パシンっ!!
「ひょえっ…」
「――なぁ望月、放課後も顔…貸せるよな?」
「ぴ――…」
「あああっ望月がまた意識失ったーーっ!!?」
――俺が絶対に、阻止してみせる。
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