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言えなった名前

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 亮平はその場に蹲る。

 自分がしている事、この世がゲームじゃない事。

 橙夜なんかに指摘されなくても悟っていた。だが認めてしまうと……あの娘が……あの娘の最後の叫びが、彼を粉々にしてしまう。

「やめてくれっ、俺の中から出て行け!」

 亮平は悲鳴を顔を覆った。

 目以外の感覚で周囲を窺う。

 がさがさと背後の森が鳴り、アグライアーの喘ぎ声が耳に届く。

 亮平の心が一瞬で黒く染まった。

 アグライアーは襲撃の後、もう一人と欲望を解放し抱き合っている。

 もう一人……ダークエルフの戦士アルゲス。

 アグライアーの昔からの知り合いだそうだ。

 亮平に苛立ちが生まれた、

 彼はアグライアーに指一本触れる事を禁じられている。

「下等な人間風情が」

 亮平が禁を破ろうとすると、アグライアーは彼を嘲笑う。

 もう何も出来ない。

 結局、アグライアーは人間を対等と見ていない。

 ダークエルフの戦士アルゲスに到っては、亮平を「猿」と呼ぶ。

 当初、亮平は反発した。

 だが武器を持った亮平は素手のアルゲスに一方的にぶちのめされ、反抗の意思を折られていた。

 ……澄香。

 ふと彼は思い出す。

 自分と橙夜が惹かれていた少女。

 通っていた学校では目立たなかったが、それが不思議なくらい魅力的な娘。

 今は足利橙夜といる。

 亮平は顔を歪ませて笑う。

 ……橙夜からあの女を奪ってやろう。

 心の中に黒い炎が燃え上がる。

  ……あいつの前で澄香の処女を奪い滅茶苦茶にしてやろう。

 橙夜の泣き顔を想像するだけで、亮平の荒れた心は少し楽になる。

 ……どうせ今でも手も握れてないんだろうからな。

 川中亮平は結局、足利橙夜と蒲生澄香について自分勝手な予測しか立てられなかった。
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