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決闘

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「後はお前だけだなぁ、橙夜よぉ」

 亮平は薄笑いを浮かべて、橙夜を見下ろした。

「たよりになる仲間だな、ええ?」

 橙夜は怒りに震えた。大事な仲間を傷つけられた。

 もう、亮平への親しみはどこにもなかった。

「澄香!」亮平は怒鳴る。

「お前が大人しくこっちにくれば、コイツは傷つけないいでおく。どうする?」
「ダメだ! 澄香さん、こんな奴に従うことはない!」
「ああ?」亮平の目つきが剣呑になる。

「こんな奴だと? 何だテメー、イキりやがって。俺のパンチでいつも大人しくなった癖に」

 橙夜は思い出す。いつの頃から、多分幼い頃から、亮平は橙夜が意に添わぬと腹に拳を叩き込んだ。

 痛みと苦しさで橙夜はすぐに白旗を揚げたが、今はそうなってはならない。

「いいさ、また教えてやる」

 亮平はロングソードをひらひらと振った。

「どっちが王様だかよ!」

 亮平は素早く踏み込み、剣を振るった。

 間一髪でそれから逃れつつ、橙夜は己の不利を悟る。

 リーチだ。ロングソードとショートソードでは致命的にリーチが足りない。

 つまり橙夜はより亮平に近づかないとならないのだが、運動神経的に難問だった。

「はっ」と実際、亮平は軽やかにステップを踏みながら嘲弄するように剣を扱う。

 彼にとって遊びだろうが、大した防具もない橙夜はそれだけで少しずつ傷ついていった。

「橙夜君!」澄香が治癒でも考えたのか近寄ろうとするのが見え、

「ダメだ、来てはいけない! 君はそこで見ていてくれ」と橙夜は止めた。

「へぇー」亮平はにやにやと嘲笑する。

「やせ我慢しやがって、澄香の前だから格好着けたいのか?」

 亮平は顎をあげる。

「だとよ、アーレント、お前も俺を治すなよ、何があってもな……ま、何もないがな」

「はい」とアーレントと呼ばれた白ローブの可愛らしい金髪巻き毛少女が無表情で頷く。
「てめえなんかがこの俺に勝てる訳がないと、時間を掛けて再教育するのもいい、なっ」

 亮平の攻撃が再開される。

「くっ」防戦一方の橙夜は後退しながらも驚きを隠せない。

 彼もジュリエッタとの訓練でそれなりに力をつけたつもりだった。だが亮平はそれを易々と越えている。

「へ」と亮平は橙夜の内心を見抜いたようだ。
「俺はな、この世界にあの変なエルフに連れてこられてから、この世界が力の世界とすぐに理解し、ずっと戦って来たのさ。アグライアーに協力して貰ってな」

 アイオーンと対峙するダークエルフが笑みを零す。
「そうさ、お前は女々しいからできなかったろうが、俺は躊躇無く化け物や人間もぶっ殺してやったぜ!」

「それのどこが自慢になる!」

 橙夜は亮平の不用意な大降りを身をかがめてやり過ごし、地を蹴った。

 ショートソードを亮平の肩に振り下ろす。力加減をして……。

「ダメよ! それじゃあ!」

 ジュリエッタの警告が上がる。
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