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時計塔高校の怪人 2
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熊谷が見た目と裏腹な素早い動きでたどり着いたのは、時計塔高校の屋上だった。
ごうごうと夜風が鳴く中、熊谷はコンクリートの床に立ちつくす。
「で?」
彼は尋ねた。給水タンクの横で腕を組みながらだ。熊谷の様子から行き先を見破り、先回りをしていた。
「これからどうするつもりだ? お前はもう詰んでいるんだよ、人生がな」
ごきゅごきゅ、とガソリンを飲む音が返ってくる。
「それが答えか? いいだろう、お前が『怪人』なのかイマイチわからんが、どうせもう終わりだしな」
両腕に装着した鋼鉄製のグラブを胸の上に持ち上る。それが彼の『武器』だ。絶対なる硬度を持ち、死と破壊を司る両手のグラブと両足のブーツ。
それらに殴られた者は砕け、蹴られた者は潰される、髑髏王の鉄の牙だ。
「死ね」
彼は跳び、駆けた。一直線に熊谷へと突っ込む。
炎が吹かれた、しかしそれを頭を振ってかわして右拳を突き出す。
熊谷は刹那、左腕で体を庇った。
がきゅり、容易く骨が砕け肉が潰れる。
「ぐわわわわぁぁぁ!」熊谷は絶叫し、一歩退いた。
「お別れだ」彼は熊谷の胸に向かって左拳を振る。ひしゃげた左腕が持ち上がってたが、気にもしなかった。
爆発と閃光に包まれ、右肩から鉄柵に叩きつけられた。
「ぐう……」何が起こったか、一瞬後に彼は理解した。
熊谷には左腕がない、そして戦闘で露出した右腕にもびっしりと包帯が巻かれていた。 光に眩んだ視界ながら『それ』を確認した彼の血が痺れる。体中に流れる血、指先の毛細血管の先まで電流が走った。
愉悦、という感情だ。
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
髑髏の仮面の下、つい歯を剥いて笑ってしまう。
「見でいだ……花火の光の中、橋爪くんは美しがっだぁぁ。だからゆるざないっ、橋爪ぐんをごろじだ、びうらぁぁぁぁ」
「認めるぞ! お前は『怪人』だ! 怪人・火廻り!」
肩の痛みなど無いかのように彼は宣言して、歪んだ鉄柵から身を起こした。
「怪人と人殺しの違いを知っているか? 人殺しは所詮自分の保身も考えて行動するただの人間だ、だが怪人は違う、目標を殺すために手段を選ばない、人であることを辞める……精神の歪みが肉体を凌駕する……お前のように、自分の肉をえぐって、そこに花火の火薬を詰め、炸裂させる……そうだ!」
真っ直ぐ熊谷に、人差し指を向ける。
「お前は怪人だ、故に名乗ろう」
拳を作った彼は、己の胸を親指で指す。
「俺は怪人・髑髏喰(どくろぐい)……怪人を喰う怪人だ! だからお前を喰らう、怪人であるお前は俺にとってご馳走だ」
ごうごうと夜風が鳴く中、熊谷はコンクリートの床に立ちつくす。
「で?」
彼は尋ねた。給水タンクの横で腕を組みながらだ。熊谷の様子から行き先を見破り、先回りをしていた。
「これからどうするつもりだ? お前はもう詰んでいるんだよ、人生がな」
ごきゅごきゅ、とガソリンを飲む音が返ってくる。
「それが答えか? いいだろう、お前が『怪人』なのかイマイチわからんが、どうせもう終わりだしな」
両腕に装着した鋼鉄製のグラブを胸の上に持ち上る。それが彼の『武器』だ。絶対なる硬度を持ち、死と破壊を司る両手のグラブと両足のブーツ。
それらに殴られた者は砕け、蹴られた者は潰される、髑髏王の鉄の牙だ。
「死ね」
彼は跳び、駆けた。一直線に熊谷へと突っ込む。
炎が吹かれた、しかしそれを頭を振ってかわして右拳を突き出す。
熊谷は刹那、左腕で体を庇った。
がきゅり、容易く骨が砕け肉が潰れる。
「ぐわわわわぁぁぁ!」熊谷は絶叫し、一歩退いた。
「お別れだ」彼は熊谷の胸に向かって左拳を振る。ひしゃげた左腕が持ち上がってたが、気にもしなかった。
爆発と閃光に包まれ、右肩から鉄柵に叩きつけられた。
「ぐう……」何が起こったか、一瞬後に彼は理解した。
熊谷には左腕がない、そして戦闘で露出した右腕にもびっしりと包帯が巻かれていた。 光に眩んだ視界ながら『それ』を確認した彼の血が痺れる。体中に流れる血、指先の毛細血管の先まで電流が走った。
愉悦、という感情だ。
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
髑髏の仮面の下、つい歯を剥いて笑ってしまう。
「見でいだ……花火の光の中、橋爪くんは美しがっだぁぁ。だからゆるざないっ、橋爪ぐんをごろじだ、びうらぁぁぁぁ」
「認めるぞ! お前は『怪人』だ! 怪人・火廻り!」
肩の痛みなど無いかのように彼は宣言して、歪んだ鉄柵から身を起こした。
「怪人と人殺しの違いを知っているか? 人殺しは所詮自分の保身も考えて行動するただの人間だ、だが怪人は違う、目標を殺すために手段を選ばない、人であることを辞める……精神の歪みが肉体を凌駕する……お前のように、自分の肉をえぐって、そこに花火の火薬を詰め、炸裂させる……そうだ!」
真っ直ぐ熊谷に、人差し指を向ける。
「お前は怪人だ、故に名乗ろう」
拳を作った彼は、己の胸を親指で指す。
「俺は怪人・髑髏喰(どくろぐい)……怪人を喰う怪人だ! だからお前を喰らう、怪人であるお前は俺にとってご馳走だ」
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