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拾玖ノ章
世民、公主に失望す(貞観二十二(六四八)年、八月)
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「皇室に連なる者として、恥ずかしいとは思わぬのか!?」
家臣らも居並ぶ公の場である。なるべく声を荒げることは避けようと思っていたのに、どうしても感情だけが先走り、怒りを抑えることができない。どこか不貞腐れてみえる公主の表情が、否が応でも昂ぶる気持ちを増幅させるのだ。
このところ体調は思わしくなく、気分のすぐれぬ鬱々とした日々がずっと続いている。そこに加えて、房玄齢の死だ。政治上の伴侶ともいえる彼の死は、皇后を失ったあの時にも匹敵するほどの心痛を世民に与えている。
(せめて『晋書』がもう少し早く完成していたなら、なにか最期の餞をしてやることもできたのだが、……)
そんな繰り言にもならない思いまで浮かんでくる。それほど自分は後悔や哀悼の気持ちで溢れているのに、よりにもよって房家に嫁した自分の娘が、舅の死と同時に、遺産争いの醜態とは、
(公主よ、どうしてそこまで儂を悩ませる!?)
世民の懊悩は絶望的なまでに深かった。
宗正寺(※一)を通じて、遺直が訴え出てきたとき、世民はまさかと思ったのだ。その内容と云うのが、公主が家産の分割を一方的に進め、遺愛が有利になるよう取り図ろうとするばかりか、一族うち揃った場で、嫡男である遺直を侮辱したというものだったからである。
どのような家でもままありそうな話ではあるが、
(儂の娘に限って、そんな愚かしい真似をするはずが、……)
そう公主を信じたい気持ちが、世民にはまだどこかに残っていた。
公主に関しては、遺愛に嫁して以降、良からぬ噂が巷に流れていることを世民は知っている。自分に忖度して、周囲の者がいくら隠そうとしても、悪い話ほど千里を走るものだ。しかし、それでも、世民にとって公主は、「我が掌中の珠」ともいうべき鍾愛の娘だった。己の腹を痛めた娘ではなかったが、公主にはどこかしら、いまは亡き文徳皇后の面影があったからだ。
皇后は四人の皇女を残したが、あまりその容姿を受け継いだ者はおらず、唯一、その面差しを残していた第十九皇女、兕子(晋陽公主)も、幼くして世を去っている。そのため、娘に対する世民の愛情は、ほぼ高陽公主が独占していたと云っても間違いではない。齢の近い他の公主らが、それを僻んでいたことも認識している。それほど愛情を注いできたつもりなのに、眼前のような有様をみせつけられてしまうと、遺直の訴えも事実だと受け取らざるを得ない。
(やはり、似ているのは外見だけか、……)
内面の出来があまりに違いすぎている。と、世民は落胆していた。これまでの寵愛が深かった分だけ、いまの公主に対する感情には、その反動としての失望しかない。
世民にとって、皇室の女性のあるべき姿とは、まさに文徳皇后だった。いまあえて皇女らのなかで、少しでもそれに近い者を探すとすれば、長公主である襄城公主ということになるだろうか。慎ましやかな性格で、義理の親となる者に対しても孝心厚く、降嫁してなおその徳を失わない謙虚さを世民は称えて、他の公主にもその姿勢を見習うよう命じたほどである。
襄城公主が先日没した蕭瑀の子、蕭鋭に降嫁した際、ある役人が公主のために別邸を造営することを公主に告げたことがあった。この当時、公主は降嫁しても、降嫁先に同居するのではなく、別邸を営んで世帯を別にすることが一般的だったからだ。だが、公主はこれを固く辞退し、
「婦人は舅や姑に対して、父母に対するよう仕えなくてはなりません。邸宅を別にして暮らすようになれば、いままでのように蕭家の面倒を見ることができなくなります」
そう云って、その申し出を受けなかった。この態度に世民は深く感じ入っており、
(皇室の子女は、すべからくこうあるべきだ。なぜ、それが判らない、……)
と、高陽公主への苛立ちがさらに増してくる。
ある意味、いまは亡き文徳皇后を基準にして、単に己の価値観を押し付けているだけなのだが、それに気づくことのできないまま、世民の怒りの沸点は限界に近づきつつあった。
一方、高陽公主もまた、そんな父帝の一方的な決めつけに不信感しか覚えない。
(父上こそ判っておられない!?)
房家の遺産配分で遺愛有利に図ろうとするのは、決して欲に駆られてのことだけではない。あくまでも、その第一は、皇室の面目を守るためなのだ。皇室は臣下に対して、常に絶対的な立場にいなければならない。
(嫡男でないからと云って、皇帝の娘が嫁いだ相手が、単なる家臣の風下に立つことなど、絶対にあってはならない‼)
少々極端ではある。しかし、公主がこのような偏った考えを持つに至ったのには、実は世民にも幾分かの責任はあった。本朝で長年培われてきた貴族主義的風潮を覆すべく、世民が強引に皇室(=李氏)至上主義を朝廷内に持ち込んだことは周知の事実だ。令狐徳棻らに命じて編纂させた『貞観氏族誌』などその最たる例だが、そうした感覚を幼年期から刷り込まれていたからこそ、こうした歪な価値観が形成されてしまったのである。
このどうしようもない矛盾に双方ともに気づいていないことが、この父と娘にとって最大の不幸だったと云えるのかもしれない。
(これ以上、なにを云っても無駄か、……)
怒りを通り越して、ようやく諦めの境地が世民には生まれかけていた。公主の姿を見ているだけで悲しく、早々に対面を打ち切ろうという思いが強くなる。
「おまえの考えは判った。だが、これだけは云っておく。房家の家督を継ぐべき者は遺直だ。遺愛ではない。したがって、遺産の配分もそれに沿って行うよう、宗正寺には命じておく。決して、諸子の嫁如きが口を差し挟んだりはせぬように。よいな、きつく申し付けたぞ」
伝えることはそれだけだと、世民が訣別の辞を告げると、公主は下唇を噛みしめ、全身を震わせている。そして、再び口を開こうとしたその刹那、主上の傍らに居並んでいた侍女の一人が素早く近寄り、そっと公主の左腕をつかむと、耳元で一言囁いた。
「お気持ちはお察しいたしますが、本日はここまでになさいませ。これ以上陛下の気を昂らせてしまわれては、二度と拝謁が叶わなくなりましょう」
その一言で、公主の意識も一瞬にして醒めた。
(そうだ、この父に何を告げたとしても、私の気持ちの欠片も伝わりはしない)
それを瞬時に悟らせてくれた、自分よりは少々年嵩であろう侍女が何者であるかを、公主は知りたくなった。
「そなた、名は?」
「媚娘と申します」
「そうか、覚えておこう」
これだけの短い会話を交わすと、公主は主上に対して拱手の礼を示し、軽く叩頭する。そしてそのまま踵を返すと、足音も高く御前から退出していく。その後姿が見えなくなった瞬間、その場にいた者は皆、ほっと安堵の吐息を洩らしていた。
もし、あの場で公主がなにか一言語ろうものなら、主上が怒りにまかせて公主を処罰せよと云い出しかねないと、そう誰もが案じていたからだ。『綸言、汗の如し』、一旦、天子の口から出されてしまった言葉は、もう何人であろうともそれを覆すことはできない。しかし、
(きっとまた主上はそのことを後悔され、悩んでしまわれるにちがいない)
それが判っているので、この場に居並んでいた者はみな、媚娘の機転に感謝の視線を送る。しかし、主上だけは違った。媚娘に厳しい眼差しを向けると、一言、「僭越であるぞ」、そう叱責の言葉を投げつけたのである。
それに対して、媚娘もまた大仰に恐縮の意を示すと、深々と一礼してみせる。
(もしかして陛下は、本気で公主様になにか罰を与えようと考えておられるのではないか?)
そんな予感が媚娘には頭を擡げ始めていた。何者かは判らないが、御史台の有司から主上にあてて、公主に関する情報がこのところ頻繁に届けられていることに、媚娘は気付いている。もし、公主を罰するのだとしたら、それはどういう形になるのだろうか。
(一罰百戒、他の皇族の方々への範を示す意味も込めて、相当厳しいものになるのか、それとも、結局、私情に負けて、適当にお茶を濁すのか、……)
これは面白くなりそうだと、媚娘は勝手に自分だけ盛り上がっていく。しかし、これが媚娘の想像もつかない形で決着することになるのは、この三ヶ月後のことだった。
【注】
※一 「宗正寺」
宗室の属籍を管掌する役所。『唐』代には、長官として宗正寺卿(従三品)、
次官に宗正寺少卿(従四品上)が置かれた。その下に宗正寺丞(従六品上)二
名、宗正寺主簿(従七品上)一名・宗正寺録事(従九品上)一名がそれぞれ置
かれた。
家臣らも居並ぶ公の場である。なるべく声を荒げることは避けようと思っていたのに、どうしても感情だけが先走り、怒りを抑えることができない。どこか不貞腐れてみえる公主の表情が、否が応でも昂ぶる気持ちを増幅させるのだ。
このところ体調は思わしくなく、気分のすぐれぬ鬱々とした日々がずっと続いている。そこに加えて、房玄齢の死だ。政治上の伴侶ともいえる彼の死は、皇后を失ったあの時にも匹敵するほどの心痛を世民に与えている。
(せめて『晋書』がもう少し早く完成していたなら、なにか最期の餞をしてやることもできたのだが、……)
そんな繰り言にもならない思いまで浮かんでくる。それほど自分は後悔や哀悼の気持ちで溢れているのに、よりにもよって房家に嫁した自分の娘が、舅の死と同時に、遺産争いの醜態とは、
(公主よ、どうしてそこまで儂を悩ませる!?)
世民の懊悩は絶望的なまでに深かった。
宗正寺(※一)を通じて、遺直が訴え出てきたとき、世民はまさかと思ったのだ。その内容と云うのが、公主が家産の分割を一方的に進め、遺愛が有利になるよう取り図ろうとするばかりか、一族うち揃った場で、嫡男である遺直を侮辱したというものだったからである。
どのような家でもままありそうな話ではあるが、
(儂の娘に限って、そんな愚かしい真似をするはずが、……)
そう公主を信じたい気持ちが、世民にはまだどこかに残っていた。
公主に関しては、遺愛に嫁して以降、良からぬ噂が巷に流れていることを世民は知っている。自分に忖度して、周囲の者がいくら隠そうとしても、悪い話ほど千里を走るものだ。しかし、それでも、世民にとって公主は、「我が掌中の珠」ともいうべき鍾愛の娘だった。己の腹を痛めた娘ではなかったが、公主にはどこかしら、いまは亡き文徳皇后の面影があったからだ。
皇后は四人の皇女を残したが、あまりその容姿を受け継いだ者はおらず、唯一、その面差しを残していた第十九皇女、兕子(晋陽公主)も、幼くして世を去っている。そのため、娘に対する世民の愛情は、ほぼ高陽公主が独占していたと云っても間違いではない。齢の近い他の公主らが、それを僻んでいたことも認識している。それほど愛情を注いできたつもりなのに、眼前のような有様をみせつけられてしまうと、遺直の訴えも事実だと受け取らざるを得ない。
(やはり、似ているのは外見だけか、……)
内面の出来があまりに違いすぎている。と、世民は落胆していた。これまでの寵愛が深かった分だけ、いまの公主に対する感情には、その反動としての失望しかない。
世民にとって、皇室の女性のあるべき姿とは、まさに文徳皇后だった。いまあえて皇女らのなかで、少しでもそれに近い者を探すとすれば、長公主である襄城公主ということになるだろうか。慎ましやかな性格で、義理の親となる者に対しても孝心厚く、降嫁してなおその徳を失わない謙虚さを世民は称えて、他の公主にもその姿勢を見習うよう命じたほどである。
襄城公主が先日没した蕭瑀の子、蕭鋭に降嫁した際、ある役人が公主のために別邸を造営することを公主に告げたことがあった。この当時、公主は降嫁しても、降嫁先に同居するのではなく、別邸を営んで世帯を別にすることが一般的だったからだ。だが、公主はこれを固く辞退し、
「婦人は舅や姑に対して、父母に対するよう仕えなくてはなりません。邸宅を別にして暮らすようになれば、いままでのように蕭家の面倒を見ることができなくなります」
そう云って、その申し出を受けなかった。この態度に世民は深く感じ入っており、
(皇室の子女は、すべからくこうあるべきだ。なぜ、それが判らない、……)
と、高陽公主への苛立ちがさらに増してくる。
ある意味、いまは亡き文徳皇后を基準にして、単に己の価値観を押し付けているだけなのだが、それに気づくことのできないまま、世民の怒りの沸点は限界に近づきつつあった。
一方、高陽公主もまた、そんな父帝の一方的な決めつけに不信感しか覚えない。
(父上こそ判っておられない!?)
房家の遺産配分で遺愛有利に図ろうとするのは、決して欲に駆られてのことだけではない。あくまでも、その第一は、皇室の面目を守るためなのだ。皇室は臣下に対して、常に絶対的な立場にいなければならない。
(嫡男でないからと云って、皇帝の娘が嫁いだ相手が、単なる家臣の風下に立つことなど、絶対にあってはならない‼)
少々極端ではある。しかし、公主がこのような偏った考えを持つに至ったのには、実は世民にも幾分かの責任はあった。本朝で長年培われてきた貴族主義的風潮を覆すべく、世民が強引に皇室(=李氏)至上主義を朝廷内に持ち込んだことは周知の事実だ。令狐徳棻らに命じて編纂させた『貞観氏族誌』などその最たる例だが、そうした感覚を幼年期から刷り込まれていたからこそ、こうした歪な価値観が形成されてしまったのである。
このどうしようもない矛盾に双方ともに気づいていないことが、この父と娘にとって最大の不幸だったと云えるのかもしれない。
(これ以上、なにを云っても無駄か、……)
怒りを通り越して、ようやく諦めの境地が世民には生まれかけていた。公主の姿を見ているだけで悲しく、早々に対面を打ち切ろうという思いが強くなる。
「おまえの考えは判った。だが、これだけは云っておく。房家の家督を継ぐべき者は遺直だ。遺愛ではない。したがって、遺産の配分もそれに沿って行うよう、宗正寺には命じておく。決して、諸子の嫁如きが口を差し挟んだりはせぬように。よいな、きつく申し付けたぞ」
伝えることはそれだけだと、世民が訣別の辞を告げると、公主は下唇を噛みしめ、全身を震わせている。そして、再び口を開こうとしたその刹那、主上の傍らに居並んでいた侍女の一人が素早く近寄り、そっと公主の左腕をつかむと、耳元で一言囁いた。
「お気持ちはお察しいたしますが、本日はここまでになさいませ。これ以上陛下の気を昂らせてしまわれては、二度と拝謁が叶わなくなりましょう」
その一言で、公主の意識も一瞬にして醒めた。
(そうだ、この父に何を告げたとしても、私の気持ちの欠片も伝わりはしない)
それを瞬時に悟らせてくれた、自分よりは少々年嵩であろう侍女が何者であるかを、公主は知りたくなった。
「そなた、名は?」
「媚娘と申します」
「そうか、覚えておこう」
これだけの短い会話を交わすと、公主は主上に対して拱手の礼を示し、軽く叩頭する。そしてそのまま踵を返すと、足音も高く御前から退出していく。その後姿が見えなくなった瞬間、その場にいた者は皆、ほっと安堵の吐息を洩らしていた。
もし、あの場で公主がなにか一言語ろうものなら、主上が怒りにまかせて公主を処罰せよと云い出しかねないと、そう誰もが案じていたからだ。『綸言、汗の如し』、一旦、天子の口から出されてしまった言葉は、もう何人であろうともそれを覆すことはできない。しかし、
(きっとまた主上はそのことを後悔され、悩んでしまわれるにちがいない)
それが判っているので、この場に居並んでいた者はみな、媚娘の機転に感謝の視線を送る。しかし、主上だけは違った。媚娘に厳しい眼差しを向けると、一言、「僭越であるぞ」、そう叱責の言葉を投げつけたのである。
それに対して、媚娘もまた大仰に恐縮の意を示すと、深々と一礼してみせる。
(もしかして陛下は、本気で公主様になにか罰を与えようと考えておられるのではないか?)
そんな予感が媚娘には頭を擡げ始めていた。何者かは判らないが、御史台の有司から主上にあてて、公主に関する情報がこのところ頻繁に届けられていることに、媚娘は気付いている。もし、公主を罰するのだとしたら、それはどういう形になるのだろうか。
(一罰百戒、他の皇族の方々への範を示す意味も込めて、相当厳しいものになるのか、それとも、結局、私情に負けて、適当にお茶を濁すのか、……)
これは面白くなりそうだと、媚娘は勝手に自分だけ盛り上がっていく。しかし、これが媚娘の想像もつかない形で決着することになるのは、この三ヶ月後のことだった。
【注】
※一 「宗正寺」
宗室の属籍を管掌する役所。『唐』代には、長官として宗正寺卿(従三品)、
次官に宗正寺少卿(従四品上)が置かれた。その下に宗正寺丞(従六品上)二
名、宗正寺主簿(従七品上)一名・宗正寺録事(従九品上)一名がそれぞれ置
かれた。
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