一進一退夫婦道

Emi 松原

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今時そんなの当たり前!の荒技

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いっとくさんが退院してから、本当に買っておいて良かったというものがある。


それが男性用の日傘である。


透析患者さんは水分が取れない、その他諸々の理由で夏バテや熱中症になりやすい。

いっとくさんも熱中症で去年運ばれて入院した。


いや、透析患者さんでなくとも、近年の暑さは危ない。若いからなんていうのも関係ない。命に関わる暑さだ。



そんな中、なんとしてでもいっとくさんを守らなければ! と思い、男性用の日傘を提案したのだ。



だがいっとくさんは言う。

「日傘って、男性もさすの?」

と。


確かに私もそんなイメージを持っていた。

なんなら20代までは、もっと歳を重ねた女性が持つものだとすら思っていた時期がある。



そんな私だが、今は日傘がないと倒れるくらいだ。



なので今、私は猛烈に思っている。



性別年齢問わず、この暑さから身を守る為に日傘は必需品だ!! と。




そんな私がいっとくさんを丸めこむ……いや、説得する時に使った言葉が、


「今時、男性でも日傘をさすのは普通だよ」


である。



外を見ていて、男性で日傘をさしている人や、若い人で日傘をさしている人が少ないのは事実だ。


だが、いかにも最近では当たり前ですけど? というような口調で言うと、そういうものなのか、といっとくさんは納得してくれた。


これはある意味、歳の差婚で、私の年齢が下だからできる荒技でもあると言えよう。



その後、アマ○ンさんで男性用日傘のページを出して、

「ほらね?」

とドヤ顔する。これで完璧だ。


実際は、その数とデザインの少なさに少し焦ったのだが……。



こうして日傘(今回購入したものは雨天兼用)が無事届き、いっとくさんはきちんと透析に行くときにさして行ってくれた。


効果はすぐに実感したようだ。


そう、日傘とは馬鹿にできないものなのである。

直射日光を浴びるのと浴びないのでは天と地の差だ。



こうして日常的に日傘をさしているいっとくさんだが、先日透析の帰りに駅まで迎えに行き、二人でそれぞれ日傘をさしながら暑い暑いと帰っている最中。


日傘ないとやばいね、とお互い言いつつ、ぼそっといっとくさんが言った。



「でも、やっぱり男性でさしてる人はいないなあ……」



当たり前だがすぐバレた。




だが良いのである。

日傘の有能性を分かって貰えたのだから。


近年のこの暑さは、本当に危ないと感じている。


去年いっとくさんが運ばれて、今年はなんとかしなくてはと考えた結果の日傘であるが、透析患者さんに関わらず、もっとみんな気軽に日傘を使えれば良いのになと純粋に思った。


片手が塞がる、というデメリットはあるが……。


もっと男性用の日傘の種類が増えたり、若い人向けのデザインの日傘が増えれば良いのになあ……。



いっとくさんの見た目は厳ついおじさんである。

そんないっとくさんが日傘をさしている姿を見て、男性も若い人も気軽に日傘をさすのが「今時そんなの当たり前だ」になれば良いなぁと、既に我が家では稼働しているエアコンの風を浴びながら思うのであった。
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