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心はいつもはじめ○のおつかい
しおりを挟むいっとくさんは基本的に過保護だ。
過保護で心配性である。
この厳つい顔で。
普段一人で外に出ない(出られない)私が一人で外に出るとなると、それはそれは心配するのだ。
まあ、過保護にさせているのは私の病気も関係しているのだが……。
私は、空間認知と視野に問題がある。
視野については気をつけていれば問題ないが、問題は空間認知だ。
階段の感覚がわからなかったり、慣れた道のはずが迷ったり。
昔はただの超絶方向音痴だと思っていた。
それに加えてパニック障害などがあるため、電車に乗るのが難しいのである。
さて、いっとくさんの私にとっては嬉しい過保護エピソードを二つ。
その日私は郵便局に行く用事があった。
郵便局までは一本道なので、さすがに迷わない。(不安になることはあるが)
いっとくさんは珍しくお昼に本社に行っていて、時間が合わず、私は一人でえっちらおっちらと歩いて郵便局へ出かけた。
そして郵便局に入った途端、後ろから見知った人が入ってきた。
そう、いっとくさんである。
バスの中で、位置情報アプリを見て私が郵便局へ向かっているのを確認したいっとくさん。
郵便局近くで私を目視確認。
いつも降りるバス停の数駅前で降りて、追いかけてきてくれたのだ。
これが他人だと、ひえええっ!? となるだろうが、相手がいっとくさんなので私は嬉しかった。
疲れているだろうに、わざわざ降りて歩いて追いかけてきてくれたのだから。
お陰で帰りは安心して帰ることができたのだ。
もう一つは、まさにはじめ○のおつかい的エピソードである。
その日もいっとくさんが仕事で昼間に出かける用事があり(普段いっとくさんは夜勤専門)私は一人でどうしても外せない用事へと向かった。
行きはちゃんとタクシーに乗り、用事を済ませる。
本来なら帰りもタクシーを使うのに、その日私は何故か思ったのだ。
調子も良いし、一人で電車に乗れるんじゃね? と。
そう、これが全ての間違いであった。
駅のホームで電車を待つ間、既に心細くなる。
本当にこっちの方向であってたっけ。
なんか人多くないか?
あれ? ちゃんと帰れるよね?
その時家に到着したいっとくさんに確認をとりながら、なんとか最寄り駅に到着。
不安から解放されたものの、まだ家までの道のりがあり、トボトボと歩く。
そんな視線の先に、これまた見知った姿が。
これまた位置情報で見て、もうすぐ着くだろうと、いっとくさんがマンションの下まで出てきて待っていてくれたのだ。
しょげないでよべいべー。
頭の中で歌が流れる。
泣くのを必死で堪えて、いっとくさんの元へ。
一緒にエレベーターに乗った途端、泣きながら縋りついた。
どう見てもはじめ○のおつかいだ。
何故あんな無茶をしたのか未だに謎であるが、いっとくさんのおかげで安心した出来事であった。
他にも、昼間寝ないといけないのに、これまた私が郵便局へ行っていたら寝ずに帰ってくるのを待っていたりと、ものすごく心配性のいっとくさん。
上記を見て貰えば分かるように、私の突拍子もない行動のせいでもあるのだが……。
だがそんな過保護で心配症のいっとくさんの行動が、私は嬉しくてたまらないのである。
一人で外に出ることは不安だが、もし何かあっても必ずいっとくさんが見つけてくれる。
そう思えるくらいの愛情を受けているのであった。
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