たとえ地球が滅びても

Emi 松原

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たとえ地球が滅びても

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覚悟~強くなりたい理由~

 特別訓練当日。俺たちは指定された時間に、訓練室に行った。そこには、前と同じでシールドを張る線が引いてあった。違ったのは、円がなかったことと、救護機もない。代わりにイノセントロボが何台か置いてあった。全部、智が操れるものだ。パソコン数台の前には幸多さんと健人がいた。明さんはその横で、ぽっぽにブラシをかけている。明さんには全く緊張感が感じられない。イノセントロボの間から、照さんが顔を覗かて、俺たちに気が付くと笑顔で近くに来た。無言で頭を下げる俺たち。
「皆、来たようだね。智、智が扱えるロボはこれで全部だよね?一応確認して。」
「・・・・・はい。大丈夫です。」
「じゃあ、みんなイノセントアームをセットして。」
 照さんに言われた通り、俺たちはイノセントアームをセットした。
「始めても大丈夫だよ。」
 照さんが笑顔で言った。明さんが、ブラシを置いて立ち上がった。今までにないくらい怖い笑顔で、俺たちを見ている。
「訓練の説明はあたしから直々にする。」
 明さんが言った。
「最初の特別訓練と同じように、線の場所にシールドを張る。その中で、あたし対お前たち全員で戦う。サポートナンバー1は、好きなロボで好きなタイミングで出撃していい。その代り使えるロボは一つ。十分間戦闘が続けられる、もしくはあたしを戦闘不能にできたら合格。十分以内にお前たち全員が戦闘不能になったら、不合格。自分たちの中で一番邪魔だと思う奴を自分たちで決めて、そいつに特別訓練の対象者から外れてもらう。」
 明さんの言葉に、俺たちはショックで誰も何も言えなかった。当たり前だ。最初の特別訓練の時、戦闘ハイパーは誰一人・・・一分以上戦闘を続けられなかったんだから。それより、不合格になったら自分たちで誰かを外さないといけない・・・。
「激しい順位変動もこの訓練で起きたこと。ちなみに、他のチームは五分で合格か、あたしに一撃でも食らわせることができたら合格にしてたんだけど・・・あんた達、戦闘シミュレーション訓練室を使ったからには、それなりに楽しめるようになってるんだろ?まぁ、ついでに言っておくとこの訓練に合格したチームは今のところゼロ。」
 そう言うと、明さんはイノセントアームをセットした。相変わらず、戦闘服には見えないけれど、圧倒的な強さを感じる。
「いきなりやるのもかわいそうだから、五分間時間をやるから作戦会議でもしな。少しでも合格できる可能性があると思うことなら、要望や質問も聞いてやらないことはない。他のチームは十分間も時間をやったんだけどね。やるからにはとことんやらせてもらう。」
 明さんがニヤリと笑った。
 俺たちは全員顔を見合わせた。桜も、智も不安そうな顔をしている。もちろん、俺も・・・。でも、栄喜は違った。栄喜はいきなり明さんの方を向いた。
「一つ要望を聞いて下さい。」
 栄喜がはっきりと言った。
「なんだ?」
「健人も、一緒にやらせてください。」
 健人が驚いた顔をした。俺たちも、突然の栄喜の言葉にびっくりしていた。
「それは、前の特別訓練で健人があたしと戦ったのを見たからか?健人が戦闘員として入れば、間違いなく合格の確率が上がる。見事な分析だな。」
「違います。健人には、オペレーターとして入ってほしいんです。それが、一番合格できる可能性が上がると思うからです。」
 明さんの笑顔が消えた。
「健人、入りたいなら入っていいけど。自分で決めな。」
 明さんが健人の方を見ずに、俺たちを見たまま言った。
「やらせてください!戦闘シミュレーション訓練室を使う提案をしたのは俺ですから!」
 明さんは無言であごを動かした。それを見て、健人が俺たちの所に走ってきた。すぐにイノセントアームをセットする健人。
「ごめんな。突然。」
 栄喜が健人に言った。
「いや・・・正直、嬉しい。」
 健人が言った。それを聞いた栄喜はいきなり笑うと右手で健人、左手で俺の肩を組んだ。それを見た智も、すぐに何かを察して笑顔になると、桜を抱き寄せて健人の肩に手をまわした。やっと理解した俺は、栄喜と肩をしっかり組んで、桜と肩を組んだ。桜の手にも、確かに力が入っている。全員で肩を組んで、丸くなる俺たち。
「俺たち、やれることは全部やっただろ。だから、どういう結果になってもいつも通り思いっきりやろう。質問は?」
 栄喜の言葉に、全員が笑顔になった。
「ない!俺、いつものように勝手に動くからな。でも、ちゃんと皆の声聞くから。」
 笑って俺は言った。
「私も・・・皆がいるから頑張れる!」
 桜は、前の訓練の時のようにおびえてなかった。
「私だって!しっかりサポートするからね!」
 智のいつもの笑顔。
「・・・俺にオペレーターを頼んでくれて、本当にありがとう。」
 健人も、いつもより顔が笑っていた。
「俺たちは家族・・・だろ?」
 笑顔で言った栄喜の言葉に、皆本当に嬉しそうな顔でうなずいた。もちろん、俺も。その時、栄喜と桜の戦闘服が光った。驚く俺たち。光が消えたとき、二人の胸には黄色が追加されていた。
「なんで・・・?」
 桜が言った。
「今考えてる暇はない。健人、最初はどういくのがいいと思う?」
 栄喜が言った。
「明さんが本気になった時の動きは読めない。俺は今できることを全部出してオペレーションするから。いつものようにメイン攻撃を泉に任せて、栄喜と桜は援護を。とっさの判断は、皆できるはず。それと智は、どの機体で出撃するか俺に判断させてくれ。少しでも可能性を上げるため、俺が言うまでどのロボで行くか分からないように待機してくれ。・・・良いかな?」
「了解!」
 智がうなずいた。俺たちもうなずく。俺たちは手を離した。健人はシールドが張られる外に行くと、急いでパソコンを準備している。俺たちは、明さんの方を見た。
「まだ、あと二分あるけど。」
 幸多さんが言った。
「作戦会議は終わりました。」
 栄喜が答える。
「あの・・・!一つ要望させてください!」
 智が、明さんに言った。
「なんだ?」
「もし、イノセントロボが制御不能になっても、私に戦える力が残っていたら、ロボに乗らずに戦っていいですか!?」
「あんた、ロボ以外の戦闘経験ないんじゃない?」
「実践ではありません。でも、皆との訓練で少しはできるようになったと思います!」
「別にかまわないけど。」
 明さんの言葉を聞いて、智は明さんに頭を下げるとイノセントロボの後ろに回った。栄喜が健人を見た。うなずく健人。
「準備できました。」
 栄喜が明さん達に言った。
「五分たってないけど。本当に良いんだな?」
 幸多さんの言葉に、俺たちはうなずいた。
 俺は、イノセントソードを右手に持った。赤く光るソード。栄喜と桜はイノセントガンをセットした。
「じゃあ、一分ごとに伝えるから。よーい、スタート。」
 幸多さんの声と同時に、俺たち三人は動いた。一番に前に出る俺。明さんがすぐに動こうとしたけれど、俺は、思いっきりソードを縦に振った。ソードからかなりのスピードで炎の壁が明さんに向かう。明さんは、一瞬止まって俺の放った技を見たけれど、すぐに姿を消した。
「泉の右だ!栄喜、桜、ダブルシールドで泉を!」
 健人が早口で言った。
「了解!」
すぐに二人が動く。栄喜と桜が同時にイノセントガンを打った。明さんの足が俺にせまったけれど、俺のすぐ目の前には栄喜の青いシールドが。その向こうには桜の緑のシールドが張られた。桜のシールドに明さんの足が当たる。その瞬間に動く俺。すぐに明さんと距離をとり、今度はソードを目の前でまわして横に振った。丸い炎の壁が明さんにせまったけれど、明さんが右手を振ると、青い光が放たれ炎が凍った。それに向かって距離をつめる俺。明さんが動く。
「泉!その氷の壁で方向転換してよけろ!栄喜と桜は両側に足場を!」
「わかった!」
「了解!」
 俺は健人の言う通り、氷を足場にして栄喜と桜が作ってくれた足場のどちらでも使える方に方向転換した。反動でスピードが上がり、ギリギリの所で明さんの攻撃をよけた。でも、明さんの動きは止まらない。
「泉、桜の方だ!」
「おう!」
 健人に答えて、俺はすぐに桜の作ってくれた足場を使ってまた方向転換する。俺が離れた瞬間、明さんの攻撃で桜の作った足場が粉砕した。
「栄喜、桜、泉をドームで!」
「了解!」
 栄喜と桜が俺の両側に瞬時に動くと、二人で反対方向にいつも桜が作っていたドームのようなシールドを張った。二人のシールドが混ざって、強度が強くなる。見事に、明さんの放った赤い攻撃を跳ね返した。
「泉、上だ!」
 俺は、ソードを上に突き上げた。ソードから、四方八方に炎の球が飛ぶ。俺の上にせまっていた明さんが、それをよけて少し距離ができた。その瞬間、栄喜が明さんの方にイノセントガンを打つ。わざとはずして何発か打つと、明さんを囲むように氷の壁ができた。氷の壊れ方で、明さんの動く方向が分かる。
「一分経過。」
 幸多さんの声が聞こえた。まだ一分か・・・。
「泉、左だ!」
 健人の声で、俺はとっさに左をガードした。思いっきり蹴っ飛ばされた俺だけど、桜が瞬時に、ピンクの弾力性のあるシールドを張る。そのシールドに体が当たったおかげで俺は全く痛みを感じず、またすぐに動いた。俺たちは健人の声を聞きながら、明さんの攻撃をよけつつ俺は必死で色んな技を使って攻撃した。明さんは難なくかわしていたけれど、すぐに栄喜が援護してくれる。明さんからの攻撃も、桜がメインで栄喜も一緒にガードできている。全く止まらないその状態が続いた。
「四分経過。」
 幸多さんの声を聞いた瞬間、明さんがスピードを上げたけれど、健人の判断も早かった。
「智、四番だ!」
「了解!」
 俺たちはその声を聞いてすぐにイノセントロボの方に下がった。直後に四番のイノセントロボが動いて、俺たちの前に強いシールドを張った。明さんが瞬時にそのシールドを足場に一回転する。四番のイノセントロボは、攻撃力は弱いけれど防御と強度が強くて、スピードも速い方だ。健人が、守りを固めるつもりだということが分かった。つまり、攻撃は俺がメインになる。
「一旦、ロボのシールドの中へ!」
「おう!」
「了解!」
 俺たちはロボのすぐそばに行った。俺たち全員を守るように、ロボの周り全体にシールドが張られる。
「泉、後ろからだ!思いっきりいけ!」
「よっしゃ!!」
 健人の言葉を聞いた瞬間、俺は左手にもソードを持った。俺から離れる二人とロボ。俺は、二本のソードを思いっきり右と左の反対に回して、炎の竜巻を作った。竜巻が明さんを襲ったけれど、明さんが手を振った瞬間に黒いイノセントの風で竜巻が消された。そのまま俺に攻撃がくると思ったけれど、フェイクだった。
「栄喜!」
 すぐに健人が言った。栄喜はシールドを作ったけれど、黒いイノセントの球が栄喜を襲い栄喜のシールドが粉砕した。飛ばされそうになった栄喜を桜がピンクのシールドで守る。でも攻撃が栄喜に集中して、俺たちが見えないスピードで栄喜が下に向かって蹴られた。
「智!」
「うん!」
 智が健人に答えたと同時に、ロボから防護マットが飛ぶ。マットの上に落ちる栄喜。栄喜はすぐに立ち上がった。桜が瞬時の判断で栄喜の腕を引っ張る。明さんの攻撃が栄喜をかすったけれど、なんとか無事のようだ。明さんは動きを止めない。栄喜と桜に攻撃しようとしたけれど、智のロボがすぐに間に入ってシールドを張った。明さんが智のロボに向かって黒いイノセントを放ったけれど、智は一気によけて栄喜達もそれを見て動く。
「六分経過。」
 幸多さんの声を聞いた瞬間、明さんのスピードがさらに上がった。
「智!」
 健人が瞬時に判断したけれど、明さんは両手から黒いイノセントをロボに放っていた。ロボが爆発した。でも、智は健人の声を聞いた瞬間に間に合わないと判断してロボから脱出していた。智の体が青く光っていたけれど、そんなこと気にしている場合じゃなかった。明さんは、一気に終わらせるつもりだ。
「桜!来るぞ!」
 健人の言葉で桜が瞬時にシールドを張ったけれど、黒いイノセントを放っている明さんの手が桜のシールドを壊し、イノセントガンを蹴り飛ばすと桜の腕を持って思いっきり投げ飛ばした。桜が動けなくなったら、防御が一気に下がる!それに、桜が!俺の体は勝手に動いていて、桜を受け止めようとしたけれど、間に合わない!そう思った瞬間、俺のスピードが上がって、桜をシールドのギリギリの所で受け止めた。
「桜、一旦防護マットに降りろ!泉、回転!」
「おう!」
 桜は体力が切れてきたようで、答えはしなかったけれどすぐに言う通りにした。俺はその場でソードを広げて回転した。炎の壁が俺を包む。明さんが瞬間的に俺から離れたのが分かった。でも、直後に黒い光が俺に当たって、俺はシールドに叩きつけられて落下した。
「泉!立てるか!?」
 健人の声。
「立てる・・・いや、立つ!」
 そう言って立ち上がって飛ぼうとした瞬間目の前にまた黒い光が来たけれど、ピンクの壁が俺の前にできた。桜が、イノセントソードを振っていた。その隙によけようとしたけれど、すぐに明さんが反対の手を振った。ピンクの壁がさっきより強い黒い球で粉砕して、明さんが俺に距離を詰めて蹴り飛ばす。俺はまたすぐ後ろのシールドに叩きつけられた。最後の一撃を覚悟した時、明さんに赤い球が飛んできた。後ろに下がってよける明さん。
「泉、動けるか!?」
 栄喜の声がしたと思ったら「うわぁ!!」と栄喜が攻撃を受ける音が聞こえた。栄喜が明さんに真上に蹴り飛ばされていた。そのまま下に叩きつけるつもりだ。
「栄喜!!」
 智の声と共に、赤い球が明さんを襲う。明さんはそれをするりと避けると、栄喜を下に叩きつけた。栄喜が落ちた所には、智がいた。智が、体を張って栄喜をかばっていた。
「智!・・・智は戦闘不能だ!栄喜、泉、動けるか!?」
 栄喜は答えずにすぐ動いた。でもスピードは全く出せていない。俺たちは答えられる状況じゃなかった。
「八分経過。」
 俺は必死で動いた。体中痛かったけれど、あと二分・・・!!そう思った時には明さんが真横にせまっていた。やばい!次くらったら、終わりだ!
「泉!!」
 桜が明さんに接近してソードを振った。桜のソードが赤くなっていた。明さんはよけると同時に桜を蹴りつけた。防護マットの上に叩きつけられた桜だったが、もう桜に体力は残っていなかった。
「桜も戦闘不能だ!二人とも、あと少しだ!」
 健人の声を聞いて、俺はなんとか攻撃したかったけれど、明さんはまったくスピードを緩めずに、俺と栄喜を両手で同時に黒い光で攻撃した。
「泉!栄喜!」
 健人の声が聞こえたけれど、俺は動けなくなっていた。
「全員戦闘不能だな。八分四十七秒。不合格だ。」
 幸多さんの声が聞こえた。不合格・・・・。あと少しだったのに・・・。
「泉、これ、飲めるか!?」
 健人が、俺の所に来ていた。水とサプリを持っている。俺は軽くうなずくと、そのサプリを飲んだ。途端に、体から痛みが引いた。健人は俺が飲んだのを確認すると、すぐに栄喜に同じものを持って行っている。桜と智も、照さんが同じものを飲ませていた。俺たちは動けるようになると、すぐに皆で集まった。
「皆、大丈夫か!?」
 健人が心配そうに言った。
「体の痛みはサプリのおかげで引いてる。大丈夫だ。」
 栄喜が苦笑しながら言った。
「智、大丈夫だったか?あの勢いで俺を受け止めるなんて、無茶して・・・。」
「だって、体が勝手に・・・。」
 智も苦笑しながら言った。
「皆が大丈夫そうで・・・よかった・・・。」
 桜もほほ笑んでいる。
 俺もうなずいたけれど、落ち着いた俺たちは全員の変化に驚いていた。
「健人・・・お前、紫のイノセントが・・・。」
 俺が健人に言った。健人は気が付いてなかったみたいで、驚いて自分の戦闘服を見た。これで健人は五色のイノセントを使えることになったことになる。残りはあと一色だ。
「泉、お前こそ緑が・・・。」
 健人が俺に返してきて、俺も自分の戦闘服をみて驚いた。緑が追加されている。俺は三色のイノセントを使えるようになっていた。
「栄喜と桜には、赤が追加されてる!」
 智が言った。栄喜と桜は訓練前に黄色も追加されている。
「智も・・・青と・・・赤が・・・。」
 桜が智の戦闘服を見ながら言った。智も驚いて自分の戦闘服を見ている。三人は四色のイノセントを使えるようになったってことだ。
 みんな必死になっていたから自分のイノセントが増えたことにも気が付いていなかったんだ。でも、それ以上に俺は皆が元気で俺の周りにいることが嬉しかった。

「全員、新しいイノセントの出現おめでとう。でも、お楽しみの所悪いけど、あんた達四人は不合格だよ。最初に言った通り、誰が特別訓練から抜けるか決めてもらう。」
 俺たちは明さんを見た。明さんは無表情で俺たちを見ている。でも、俺はもう覚悟を決めていた。
「俺が抜けます!順位は落ちても良いです!」
 大声で俺は言った。俺の言葉に、全員が驚いてるのが分かった。だって、特別訓練を元々誰よりも楽しみにしていたのが俺だってことを皆知ってるから。
「ちょっと、泉!何言ってるの!?泉は、本当にすごかったよ!抜けるなら、元々対象者じゃない私だよ!」
 すぐに智が言った。栄喜と桜も何か言おうとしたけれど、明さんがそれをさえぎった。
「あんた、戦闘レジェントになりたいんじゃなかったのか?」
 明さんが俺を真っ直ぐに見ながら言った。
「なりたかったです!でも、今はならなくても良いです!」
 俺も明さんを真っ直ぐに見ながら答えた。
「理由は?」
「俺・・・俺は・・・皆が、本当にすごいと思います!栄喜は、分析・研究と両立させて、立派な考えを持っていて、沢山の技を考えたりアドバイスをくれました!健人も、皆のできることをすぐに覚えてくれて、戦闘シミュレーション訓練室を使うことを提案してくれました!智は、誰よりもサポートロボを確実に動かして、それに加えて戦闘訓練もやって、何より普段から皆のサポートをしてくれていつも助けてくれます!桜は、あまり口には出さないけれど本当にいつも皆を見ていて、誰よりも優しくて、誰よりも努力していました!桜がいつでも守ってくれるから、俺は突っ走って戦えるんです!俺は、一人じゃ何もできませんでした!今でも強くなりたいです!でも、この中の誰かが抜けるのは嫌だから、俺が抜けます!順位が下がっても、いつものように皆と訓練できたらそれで良いです!」
「・・・こいつらを、守りたいってことか?」
 明さんの言葉で、俺は突然気が付いた。俺は強くなりたい。前はただそれだけだった。だけど、今は・・・桜と同じだ。皆が大好きだから、守りたいんだ。いつも守られているから、守れるように、強くなりたいんだ。
「はい。」
 俺ははっきりと明さんに言った。
「・・・お前に二つ選択肢をやる。自分で抜けると言ったからには、このアース・ライト自体から去るか。それとも、死を覚悟するか。」
「俺・・・俺は・・・ここを去るのは嫌です!」
「ふーん。じゃあ、命をかけれるんだな。こいつ以外、全員シールドの中に入りな。」
 皆、動かなかった。俺には今皆が考えていることが分かっていた。智は、自分は元々対象者じゃないから抜けるって思っているし、きっと栄喜は研究に専念したいから抜けても良いって言う。桜は皆が第一だから自分の事は後回しにする。
「さっさとしてくれない?メンドクサイな。」
 明さんが、俺たちに向かって手を振り上げた。
「よけろ!あのレベルの黒いイノセントに当たったら、気絶する!」
 健人が桜と智をつかんで後ろに下がった。栄喜も健人の言う通りにしていた。俺と皆の間に、黒いけれど透けている壁ができた。
「さすが健人。よく分かってるな。前みたいにはいかない。この壁に当たると確実に気絶するから。」
 明さんは不気味に笑っていた。
「仮にここで死亡者が出ても、政府にはいくらでも隠すことができる。覚悟はいいな?」
 明さんが俺に手を向けた。俺は、うなずくと目を閉じた。俺は絶対に死なない。どんなに大怪我を負っても、必ず治して強くなる。必ず皆を守れるようになる。それが、今の俺の夢だ!
 桜が何か叫んでいる声が、遠くに聞こえる。その時、俺の後ろで大きな爆発音がした。俺は、ゆっくりと目を開けた。
 明さんは手を下していた。壁は消えていて、桜が座り込んで涙を流している。俺は何が起きているのか分からなかった。
「あんた達のチームが初めてだ。最後まで全員で連携をとって信頼し合い、怯えず、そして諦めずにあたしに向かってきたのは。さらに全員新しいイノセントまで出現させたあげく、全員が抜けても良いと思っただろ。自分で気が付いているか知らないけど、お前がここの本質を理解するとは思わなかった。お前の覚悟も見させてもらった。」
 どういうことだろう?俺はよくわからなかった。
「戦闘シミュレーション訓練室に、お前たち五人の専用のプログラムを用意する。用意ができたら連絡するから、そのプログラムをこれからこなしな。データは常に幸多に送れよ。」
 明さんはそう言うと、幸多さんを見た。
「今日の特別訓練は終了だ。さっき飲んだサプリはあくまでも応急処置の痛み止めだから、四人全員すぐに救護室に行け。健人、ここは俺たちで片づけるからお前も行っていいぞ。」
 俺たちは、イノセントアームを解除した。桜が、俺に飛びついてきた。
「泉の馬鹿!大馬鹿!」
 泣きながら怒っている。俺は謝らないといけないのか分からなかったけど、照さんが笑顔で俺たちが外に出れるように促してくれた。俺たちは、軽く頭を下げると訓練室を後にした。

 明はイノセントアームを解除すると、一気に力が抜けた。すぐに幸多が立ち上がって受け止めると、ぽっぽの体に明をもたれかけさせる。
「黒いイノセントの使い過ぎだ。体に負担がかかりすぎてる。すぐ片づけて第二研究所に連れて帰ってやるから。」
 幸多が言った。
「あいつら・・・他の奴らが使わない武器の使い方覚えて、なおかつそれを応用して使ってたね。しかも、ろくに作戦会議の時間もかけずにあそこまで連携して動いて。その上、全員に新しいイノセントが出現。しかも健人とあいつに続き全員に黄色が出た・・・。」
 明が息を切らしながら言った。
「あのチームは、俺たちの予想をはるかに超えた成長をしてくれたね。しかもロボに番号をつけて覚えるなんて、面白い。本人たちは気が付いてないけれど、あの方法なら、実践での効率もかなりよくなるね。」
 照が急いで片づけを手伝いながら答えた。
「照の言う通りだったね。あいつが、あそこまでの覚悟を決めるようになるなんて思わなかった・・・・。それもこの短期間で。しかも、強くなることを望みレジェントを夢見ていたはずが赤の次に出たのが黄色と緑・・・。しかもレジェントにならなくても良いとまで言いやがって・・・。」
 明がふっと笑った。
「あいつらが円陣組んでた時さ、なんだか希望を見た気がしたよ。もっと早く片づけることもできたけれど、どこまで食いついてくるか見たかった。・・・あたしも、色々と覚悟が決まったよ。」
 明がそう言って笑った時、片づけを終えた幸多が明を抱え上げた。
「その覚悟は、回復した後にゆっくりと聞かせてもらう。あんなに黒いイノセントを出さなくても、勝負はついたはずだ。それも、最後にあんなに一気に黒いイノセントを出すなんて体がもつわけないだろ。」
 怒った声で言う幸多。
「・・・ごめんね。でも、その価値はあったよ。もう少し考えさせたら・・・過去を見せてもいいかもね。健人が、同い年の奴とあんなに楽しそうにする日が来るなんて思わなかった・・・。やっぱ、寂しいなぁ・・・・。」
「分かったから、もう今はしゃべるな。照、悪いけどこいつを連れていくから、マスターへの報告頼む。」
「肯定しました。」
「ぽっぽ、行くぞ。」
 幸多が明を抱えて外に出た。ぽっぽも大人しくついていく。
「覚悟・・・か。俺はこれ以上、誰も・・・。俺にはまだ覚悟はできないよ・・・。」
 残った照は、一人悲しそうにつぶやいた。

 救護室で手当てしてもらった俺たちは、しばらく休むように言われたから皆でベットの上に座って話をしていた。桜は、まだ機嫌を直してくれない。というか、俺と腕を組んだ状態のまま怒ったような顔をしているから、謝った方がいいのかも分からない。
「皆、本当にすごいよ!他のチームは、ほんの最初は連携をとろうとしていたけれど、すぐに自分たちが得意なことで好きなように動いていて、明さんが三分経過までデータをとるためにもたせた後はすぐに全滅したんだから!もちろん、皆その後は大ゲンカだったし・・・。それなのに、他のチームより本気でかかってきた明さんと八分も!」
 健人が興奮したように話しているけれど、今の、話しちゃいけないんじゃ・・・。
「健人、それ、俺たちに言ってもいいのか?」
 栄喜も同じことを思ったようで、健人に聞いた。
「外で言ったらいけないとは言われてないから。他のチームのデータは見せたらいけないけれど、話したい人には話しても良いって明さんに言われたんだ。」
 健人が笑って言った。俺は、なんだか健人が笑っているのが嬉しかった。だって、つい最近まで俺と健人は対立していて、笑っている顔なんて見たことなかったから。
「それにしても、戦いの最中に新しいイノセントが出現するのはなんとなく分かるけれど、どうしてみんな黄色が出たんだろうね?」
 智が不思議そうに言った。
「それって、元々黄色を持っている智が一番分かるんじゃ・・・。」
 俺はそう言ったけれど、さらに困っていた。俺が話し出した途端、桜が、ぴったりとくっついてきていたから。一瞬機嫌を直してくれたのかと思ったけれど、でも、顔は機嫌が悪そうだし・・・。謝った方がいいのか、でも、くっついてるってことは怒ってないのか、全くわからない。俺は助けを求めるように三人を見たけれど、三人は笑ったままでいつもと違って誰も助け船を出してくれなかった。
「私が黄色いイノセントを持っている理由は、正直分からないよ。だって、ここの試験って、各部署ごとの筆記が第一次、第二次が適性試験に、最終試験は全部署同じで、イノセントアームをセットできるかだったでしょ?私、その時から黄色だから。それにサポート部隊には黄色が多いから、違和感を覚えたこともなかったし。」
 智が、俺の事は何事もないとでもいうように普通に言った。
「黄色は調和を望み周りのことをよく考えられることが特徴だから、元々の智の性格にぴったりだからな・・・。一番最初に出る色って、その人の一番の根本にある性格を表すって言われているしな。質問は?」
 栄喜が言った。元々の性格・・・それなら栄喜が青だったのも分かるし、桜が緑だったのも俺が赤だったのも分かる気がする。でも・・・健人も赤だ。普段の健人は青のイメージが強いけど・・・。
 昔の自分を見ているよう・・・・。健人が明さんに言っていた言葉がよみがえった。
「明さんも、教えてくれなかったから・・・。気分が乗ったら教えるとは言われたけれど、あの人の気分は自由だから・・・。」
 健人が少しため息をつきながら言った。
「そういえば、健人、今日の俺たちの戦いの映像とデータは俺たち見ても良いのか?」
「うん。自分たちのチームは映像を見て分析することができるよ。でも、自分たちからそれを言ってこないと、映像が見れたりすることも教えたら駄目だって幸多さんに言われてるんだ。栄喜は今自分から言ったから、幸多さんの言う所の問題なく送れるな。」
 そう言って健人はパソコンを出すと栄喜にデータを送りはじめた。
「なぁ、俺にも送ってもらっていいか?俺、皆の声は聞いていたけれど、明さんの動きとか全く分からなかったから。見て分かるかも分からないけれど、見てみたい。」
 俺の言葉に、健人はパソコンをいじりながらうなずいた。
「泉の、バカ・・・。」
 桜がつぶやいた。やっぱり、怒ってるのかな?でも、皆笑ってるし・・・・。
「あの・・・桜・・・。」
「なに・・・・。」
「機嫌、直してほしいんだけれど・・・・。」
「直さない・・・・。」
 機嫌が悪いということは分かったけれど、直さないと言われても・・・。そういえば、桜って昔から意外と怒ったら頑固だったような・・・。俺が喧嘩して負けたときも、怒りながら手当てしてくれて、こうやってくっついてずっと怒っていた。そこまでは思い出せるんだけれど、どうやったら機嫌が直っていたのか思い出せない。俺は助けを求めて皆を見たけれど、皆笑うだけで助けてくれない。特に頼みの智が楽しそうにしてるから、どうしようもない。困っている俺の所に、メールが届いた。全員同時に届いたようだ。右に桜がくっついたままだったから、ちょっと見にくかったけれど、これ以上桜の機嫌を悪くするのも嫌だったから黙って俺はメールを読んだ。幸多さんからだ。戦闘シミュレーション訓練室に俺たち専用プログラムの準備ができたから、明日から一日最低三回はシュミレーションすることって書いてあった。
「どんなプログラムか分からないからな・・・。でも、今までのペースを崩さずに、午前中は自主訓練、午後からは訓練室で始めた方が良いと思うんだけど。質問は?」
「そうだな。俺も、他のチームの分析とかして勉強しないといけないしね。」
「了解!じゃあ、そろそろ行こうか?」
 栄喜と健人と智は、そう言って立ち上がった。俺たちも立ち上がったけれど、桜が離れる様子はない。でも、誰もそのことに触れず俺たちは救護室を出た。結局、その日は食事中以外は消灯までずっと桜がくっついていた。

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