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ロリータ少女と戦姫
しおりを挟む将来なんてわからないじゃん。
「あ、このフリルのワンピース安い!さすがはフリマサイトだね。もうすぐバイト代も出るし買いでしょ!」
私、志乃はパソコンの前で喜びの声を上げた。
「さて、今日は久しぶりにバイトも休みだし、加奈のところに遊びに行こう!」
立ち上がってクローゼットを開く。
「今日はリボンの沢山ついたピンクのワンピースに、ボレロを着て、えーっと・・・ヘッドドレスはこれがいいかな?カバンはこれ。よし、準備完了!」
私はいきいきと部屋を出た。
私の名前は桜野志乃。お姫様服、ロリータ大好きの高校三年生。一応今年から受験生。だけど私は、バイトに勤しみ、サイトで安いロリータ服を買ってそれを少しアレンジしてお姫様の気分になって毎日を楽しんでる。それなのに・・・・。
「志乃!またそんな恰好をして!勉強はどうしたの?」
「お母さん・・・。うるさいなぁ。加奈の所に勉強しに行くんだよ。それに、格好に文句言うのいい加減やめてよ!」
「だってあんた・・・。こんな田舎でそんな恰好をして・・・!近所でも奇抜だの変わってるだの言われてるのよ!」
「ここが田舎だからよ!!こんな田舎、大っ嫌い!お母さんも、もう知らない!」
私は飛び出すように家を出た。
そのまま山道を通って幼馴染の加奈の家へ向かう。
その途中、大きな岩があり、そばで一本の大きな桜が咲いていた。
この岩は【天狗岩】と地元では呼ばれている。
子供が一人で遊んでいると、天狗に連れていかれるらしい。
この近所に住む子供たちはそう言われて育った。
昔は本当に怖かったけれど、私も高校生。天狗岩にのそばで咲く桜を少し見ると、そのまま小さな山を越えた加奈の元へ向かった。
「また喧嘩したんだ。」
加奈があきれた声で言った。いつものように分厚い本を読んでいる。
「だって。どんな服着たって私の自由じゃん!」
「まぁね。だけど、本気で進路どうする気?」
「・・・・・加奈はどうするの?」
「私はここから通える地元の大学で歴史を深く勉強したいんだ。行きたい大学は決めたし、学部も決めた。後は受かるように勉強するだけ。推薦ももらえそう。」
「歴史・・・?」
「うん。歴史。」
「歴史って、例えば?」
「例えば、戦国時代前期にあったこの山を挟んだ二つのお城のこととか。」
「あぁ、桜野城と梅田城跡地ね。だけど、あそこただの空き地じゃん。」
「今はね。当時は立派なお城があって、山を下りた城下町も、ものすごく栄えてたのよ。この山に住んでいる人は、桜野と梅田って苗字が多いでしょ?私も梅田だし。それは、昔お城に仕えていた人たちの子孫じゃないかって言われてるの。」
「ふーん・・・・。」
「興味なさそうだね。」
「うん、ない。」
「私は楽しいけどね。昔の文化とか面白いものがいっぱい。桜野城と梅田城も残ってたらよかったのにって思うよ。」
「残ってないってことは、壊れたの?」
「桜野城は謀反で焼け落ちたって文献には残ってるね。梅田城も敵の攻撃によって落とされたみたいだね。元々他のお城に比べたら小さいし、権力争いには勝てるほどじゃなかったんだろうね。」
「よくわかんないや。」
すると加奈がため息をついた。
「別に歴史を好きになれとは言わないよ?私だってあなたの恰好をしろって言われても無理だし。でもさ、バイトするのもいいけどいい加減進路のこと本気で考えなよ。」
「加奈までそんなこと言う。将来のことなんてわかるわけないじゃん。今で精一杯だし、今が楽しいんだもん。これが続けばいいなって思うもん。」
「じゃあ、高校卒業しても、ずっとバイトして過ごすの?」
「それの何が悪いの?」
「悪くはないよ。生き方は自由だから。だけど、後悔しない?」
「後悔?」
「うん。そりゃ、学ぼうと思ったら何歳になっても学べるけど、今しかできないこと、今だからできることがあると思うよ。」
「私は何歳になってもお姫様服着るもん。」
「・・・・そう。」
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