真の敵は愛にあり

Emi 松原

文字の大きさ
上 下
82 / 83
人生の始まり

1-1

しおりを挟む


 最後の戦いの日から、一週間が過ぎた。
 この間、色々なことがあったけれど、どれも俺たちには直接的に関係がないもので、俺たちはいつも通り、訓練の日常に戻っていた。
 まず、ヨネルさん達両親のように、幽閉されていた人たちは解放されたらしい。
 そして、ヨネルさん達にかけられた、覚悟の魔法も解かれたと聞いた。
 三つの国は、王族が会談を設けた。
 そして、しばらくはブルー王国とレッド王国から、必要最低限の魔力をグリーン王国に供給することが決定した。
 だけれど、魔力の泉はいつかまた一杯になる。その時、グリーン王国がどういう動きにでるかは分からないと、アマナが教えてくれた。


 今日、俺たちは、国境近くのトロッコ列車の駅の側にある丘の上に、四人で来ていた。
 エミルさんから、レッド王国とブルー王国を自由に繋ぐトロッコ列車の第一号がやってくるからと誘われたのと、ラオンから、その列車に乗ってタツさんとリーシャさんと一緒に、俺たちに会いに来るという文が届いたのだ。
 エミルさんが、少し離れた木の上にいるのが見えた。ヨネルさんが隣にいて、シルクさんは木の根元に立っていた。
 特別騎士団は、このまま継続して残ることになった。だけれど、戦争は終わったから、もう、エミルさんは、もう一つの覚悟の呪文を使う必要はないんだ。
 フユさんとハヤテさんの姿は見えなかった。
 テルさんは、このまま魔力の泉の管理者の一人になるそうだ。

 四人で話をしていると、大きな歓声が聞こえた。
 トロッコ列車が、レッド王国から駅の中に入ってきたのだ。
 その時、俺たちの目に、ミリさんが映った。
「あなた!!」
 泣きながら、列車から降りてきた男の人に抱きついて、抱きしめられている。
 俺たちは、その光景を見て泣きそうになった。
 エミルさんを見ると、木の上でその光景を見ながら、嬉しそうに笑っていた。
 タツさんと、ラオンと、リーシャさんが列車から降りてくるのが見えた。
 俺は、ラオンに手を上げて合図をした。タツさんは、エミルさん達の元に行った。
 二人が、丘を登ってくる。
「やぁ、ようこそ、ブルー王国へ」
 俺は、ラオンに言った。
「やれやれ、すげぇ人だったぜ」
 ラオンが腕を回しながら言った。
 その場で、俺たち六人は、改めて自己紹介をした。
 もう一つの覚悟の呪文ではなくて、ちゃんとお互いの目を見ながら。
 そして、俺はこっそりとリーシャさんに連れ出されて、あるものを受け取った。
 ラオンから提案された、俺の人生の第一歩だ。
 それを後ろに隠して、みんなの元に戻る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

2人の幼馴染が私を離しません

ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。 私に残されたのは幼馴染という立場だけ。 代わりにもう一人の幼馴染は 相変わらず私のことが大嫌いなくせに 付き纏う。 八つ当たりからの大人の関係に 困惑する令嬢の話。 * 作り話です * 大人の表現は最小限 * 執筆中のため、文字数は定まらず  念のため長編設定にします * 暇つぶしにどうぞ

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

悪役令嬢はどうしてこうなったと唸る

黒木メイ
恋愛
私の婚約者は乙女ゲームの攻略対象でした。 ヒロインはどうやら、逆ハー狙いのよう。 でも、キースの初めての初恋と友情を邪魔する気もない。 キースが幸せになるならと思ってさっさと婚約破棄して退場したのに……どうしてこうなったのかしら。 ※同様の内容をカクヨムやなろうでも掲載しています。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

転生リンゴは破滅のフラグを退ける

古森真朝
ファンタジー
 ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。  今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。  何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする! ※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける) ※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^ ※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...