真の敵は愛にあり

Emi 松原

文字の大きさ
上 下
80 / 83
戦いの終わり・絆の魔法

1-2

しおりを挟む


※※※

「あははは!!見た!?あのティーサ女王の顔!!」
 エミルが魔獣の上で、腹を抱えて笑っていた。
「自分が殺されると思ったんだろうね。戦力全部集めちゃってさ。私たちに協力してくれてるようなもんじゃん!」
 笑い続けているエミルに、タツが笑顔を向ける。
「余裕のようだね、お姫様」
「……その言い方やめろ……」
 タツの言葉に、ヨネルが魔法銃を撃ちながら言った。
「怒らないでくれよ。奪うつもりなんかないからさ。お、目的地が見えたよ」
 タツの言葉に、エミルが真顔になった。
 そこは、魔力の泉。魔力が吹き出している。
 魔獣はそこに着地すると、三人は魔力の泉の前に降り立った。
「……すぐにグリーン王国の奴らが集まってくるだろ。周りは俺に任せろ。エミルに傷一つでもつけたら、許さないからな」
 ヨネルが、タツに言った。
 タツが大剣を構える。
「あぁ、安心してくれ」
 タツが言った。
「俺とエミルは、毎日ぶつかり合ってきた。この大剣で、何度もエミルと直接ぶつかってきた。直接ぶつかってこない奴らに、この剣は崩せやしないさ」
 タツが笑って、エミルを守るように大剣を持った。
 エミルは、深呼吸して、ヨネルを見た。頷き合う二人。そして、タツとも頷き合う。
「絆魔法発動!ここから、この魔力を全てテルの元へ!!」
 エミルが叫んで、地面にバンと両手をついた。
 その瞬間、その場に青い魔方陣ができ、魔力の泉からどんどん魔力が吸い込まれていった。
 この三人の目的は、グリーン王国から魔力の泉を奪うことだったのだ。


※※※

「姉さんから、絆魔法が発動された!こちらも準備してくれ!絆魔法発動!姉さんからの魔力を、この造り上げてきた魔力の保管庫へ!!」
 テルが大声で叫ぶと、大きな青い魔方陣ができ、エミルから送られてくる魔力を受け取り、歴史的建造物という名で長い時間をかけて造り上げてきた、魔力を保管する場所に魔力を送り込む。
「この魔法は、俺と姉さんにしかできない絆の魔法。解読もまだできていない。分かっているのは、血が繋がったものでないと使えない魔法だということ。姉さん、俺はずっと辛かった。後方で動くのは。でも、それは全てこの時のため。姉さんの全てを、俺は受け止めるよ」
 テルは笑って言いながら、どんどん流れてくる魔力を受け止めた。


※※※

 グリーン王国の騎士団が、魔力の泉付近に集まってきて、三人を囲む。
 だが、三人とも動じていなかった。
 ヨネルが、武器を変えた。近距離用の、剣を持つ。
 そして、一気にグリーン王国の騎士団に切り込んだ。
 戦闘に慣れていないグリーン王国の騎士団は、一気に乱れた。
 タツは、飛んでくる魔法の玉を大剣で受け止めている。
 エミルは、魔力の泉から、魔力をテルに送り続けていた。
「テルの調査では、魔力の泉は無限ではあるけれど、底から少しずつ少しずつ魔力が吹き出して今の状態になっている。だから、底が見えるまで一気に魔力を使えば、グリーン王国はしばらく魔力供給ができなくなるはず!」
 エミルが、絆の魔法を使いながら、ヨネルとタツに叫んだ。
 グリーン王国の騎士団が魔力を使うことも、魔力を奪うエミル達にとって好都合だ。

 ヨネルが、グリーン王国騎士団の中で暴れている。今までの鬱憤をはらすかのように。
「俺に覚悟の魔法がかけられているせいで、俺は今までたいしたことは何もできなかった。やっとこの手で、エミルを守れるんだ」
 オッドアイをあらわにしたヨネルは、少し笑うと、剣を振るう。
「このくらいの威力、エミルがぶつかってきた時の威力に比べたらなんともないね」
 タツは、余裕の表情で魔法の玉を受け止めている。
「見えた!魔力の泉の底が!!」
 エミルが叫んだ。
「これで最後だ!!」
 エミルが、一気に魔力を吸い上げて、テルに送る。
 そして、タツはまた飛行用の魔獣を召喚させ、三人はグリーン王国の騎士団を牽制しながら、魔獣に飛び乗った。
「じゃあねー!」
 エミルが、グリーン王国騎士団に向けて手を振った。
 魔獣が一気に飛び上がる。
 そのまま、エミル達はグリーン王国の国境を抜けて、戦闘区域へと戻っていった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全
ファンタジー
小国の公爵家長男で王女の婿になるはずだったが……

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...