真の敵は愛にあり

Emi 松原

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最後の戦いの始まり・それぞれの想い

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※※※

 エミルとタツは、コル達が走ってグリーン王国の騎士団の元へ向かう姿を見守っていた。
「さぁ、俺たちは俺たちのやるべきことをやろうか。召喚魔法、飛行系魔獣召喚!」
 タツが叫ぶと、強大な鳥のような魔獣が召喚された。
「さぁ、お姫様、どうぞ」
 タツが、エミルに手を差し出した。
 その手をエミルが取ろうとした瞬間、ヨネルがエミルを引き寄せた。
「全く、冗談なのに」
 タツが笑った。
 ヨネルは、無言で左目の包帯をとった。現れる、赤い瞳。
「……ふざけてないで、いくぞ」
 ヨネルの言葉に、タツとエミルは顔を見合わせて笑うと、三人で魔獣の上に乗った。
 魔獣が飛び立つ。グリーン王国に向けて。

 シルクは、広範囲に魔力供給を続けながら、その光景を見つめていた。
「エミル……。この戦争がなければ、俺たちは今でも恋人同士でいられただろうか。もう、君が俺のものにならないのは分かっている。だけれど、俺はきっとずっと君を愛している。だから、俺はここで俺の戦いをして、君たちの帰る場所を作っておくよ」
 シルクは独り言のようにつぶやくと、広範囲の魔力供給を続けた。


※※※

「姉さん、始まったようだね。両国とも、スムーズに魔力供給を行ってくれ!」
 テルが、魔力の泉の側で叫んだ。
「俺は、ここで最後まで待っているよ。絆の魔法の準備もできている。姉さん、どうか無事に帰ってきてくれ」
 テルも独り言のようにつぶやくと、また指示に戻った。


※※※

「国境の中に、グリーン王国の騎士団を入れたら駄目よ!ここで食い止めるわ!」
 アマナが叫ぶように指示を出した。
 そして、巨大な魔法銃を構える。
「グリーン王国は、その発展によって、長距離の戦いに長けているはずよ!一度武器を見て分かったわ!飛んでくる魔法の玉は任せて!その代わり、接近戦は苦手なはず!私たちブルー王国は、ずっと接近戦を学んできた。ここで全てを終わらせて、戦闘じゃない、もっと素敵な勉強ができるようにするわよ!そして、みんなの帰ってくる場所を守るのよ!」
 アマナが、魔法銃を何発も連続で放った。
 それを合図に、構えていたシューター部隊が魔法銃を放つ。
 ハヤテとフユは、前線で、グリーン王国の騎士団を相手取っていた。
「アマナ、本当に、エミル姉様みたい。私は、エミル姉様の夢を叶える為に戦う」
 フユが、淡々と、しかし何処か笑顔で、グリーン王国の騎士団を倒していく。
「お兄さんも、頑張っちゃうよー」
 ハヤテも、至近距離で魔力の弓矢を放つ。

 全員が、それぞれの場所でそれぞれの想いを持ち、戦いが始まった。

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