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最後の戦いの始まり・それぞれの想い
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しおりを挟む『…………』
ティーサ女王が、また何か言っているようだ。
だけれど、そんな声も聞こえないほどに、俺たちは全力で戦っていた。
レッド王国の人たちが、後ろに下がった。前線に出ていたブルー王国の俺たち以外の部隊も、後ろに下がるように指示が出ている。
魔力供給が、両国共、間に合っていないのだろう。
残り少ない魔力で、勝負を決めないといけない。
エミルさんとタツさんもぶつかるのを止めて、お互い後ろに下がっていた。
今、立って戦っているのは、俺たちのチームとラオンだけになった。
つまり、俺たちの勝敗で全てが決まる。周りもそれが分かったのだろう。
騎士団の人たちの、声援が聞こえてくる。
俺とラオンは、初めて会ったときのように本気で。だけれどあの頃よりも強くなった刃をお互いぶつけ合っていた。
俺の魔力供給も、もう少なくなってきている。当たり前だ。こんなに長時間の戦闘をしたことなんてないんだから。
ラオンもそうなんだろう。動きにキレがなくなってきている。
俺とラオンは、目の前で刃を交えた瞬間、二人で膝から崩れ落ちた。
息を切らして、お互いを見つめる。
「勝敗はどうなったんだ!?」
騎士団員達の騒ぐ声が聞こえる。
その時、またティーサ女王の声が聞こえた。
『あなた達は、なんということをしてしまったのです。愛のない行動によって、騎士団員の命を危険に晒し、無理矢理決着をつけようとするなんて。アルト、カナト、あなた達に国を任せるわけにはいきません。両国とも、愛を持つ私が統べます。これから、両国にグリーン王国の騎士団が制圧に向かいます。愛を持って、私たちの言うことを聞きなさい』
ティーサ女王の言葉に、俺とラオンは顔を見合わせた。
そして、思わず笑い出した。
最後の戦いのパターンは……一番困難だと思われていた、俺たちにとって、最悪なパターンになったのだから。
ティーサ女王は、この日のために、準備していたのだろう。
自分が、全ての国を統べる女王になるために。
グリーン王国の騎士団が、遠くに歩いてくるのが見えた。
俺たちは、それでも笑っていた。
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