真の敵は愛にあり

Emi 松原

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最後の戦いの始まり・それぞれの想い

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 最後の日の戦いの前日。家族に会いに帰っていた、ブランとモカが戻ってきた。
 明日、戦争を終わらせる。必ず。でも、その後は……?
 俺はずっと、戦争を終わらせたい。その一心で生きてきた。
「コル、どうしたんだい?緊張しているのか?」
 ブランが、黙っていた俺に、心配そうに聞いた。
「いや、違うんだ。戦争が終わった後の夢について考えていたんだ」
「戦争が終わった後の夢かい?」
 ブランが、不思議そうに俺を見ている。
「あぁ。ラオンに言われてさ。戦争が終わってからが、俺たちの人生の始まりだって」
「あら、ラオン、良いこと言うわね」
 アマナが明るく言った。
「戦争が終わった後ですかっ……私も考えたことなかったですっ」
「俺もだな」
 モカとブランが言った。
「戦争が終わって、この騎士団がどうなるか分からないけれど、俺、これからも四人で歩いて行けたら嬉しいな。それは変わらない」
 俺の言葉に、三人が頷いてくれた。
 さぁ、明日、ついに全てが終わるんだ。


 最後の戦いの日。
 俺たちは、特別騎士団の人にあらかじめ指示されていた場所でその時を待っていた。
 戦闘開始の合図と共に、俺たちはいつ終わるか分からない戦いに身を投じる。
 その時、何処からともなく、ティーサ女王の声が聞こえてきた。
『やめてください。アルト、カナト。こんな無茶な争いをしたら、騎士団の人々が死んでしまいます。掟を破るなんてなんということですか』
「ティーサ女王の言葉に耳を貸すな。予定通りにことを進めるよ」
 エミルさんの声が、続けてピアスから聞こえた。
 そして、戦闘時間を告げる鐘が鳴り響いた。
「いくぞ!!」
 俺は叫んだ。
 そして、一気に前線へと飛び出した。
 レッド王国が操る魔獣は、いつもよりも大きくて凶暴だった。
 俺とブランは、二人で走って行き、背中合わせになり、魔獣を倒していく。
 モカから魔力供給が開始された。
『おやめなさい。あなた達に愛はないのですか。やめるのです』
 ティーサ女王の拡張された声が聞こえるけれど、関係ない。
「《赤い竜巻》《赤い旋風》来ます!その後ろに、レッド王国の騎士団達が……!!」
 後方支援から、叫ぶような声が聞こえた。
「《赤い竜巻》の相手は私が。《赤い旋風》の相手はコルのチームが。第一騎士団第二部隊から第五部隊までは、レッド王国の騎士団の相手をしろ!」
 エミルさんの指示が飛ぶ。
 ブランが、後ろに下がって、いつでも援護と牽制ができる位置に行く。
 ラオンが一直線に俺を狙ってきた。
「うらぁぁぁ!!」
 ラオンが大きな声と共に、俺を狙う。
 俺は、スピアを回して、ラオンの短剣をはじき返すと、本気でラオンの腹部を狙った。
 体をひねってかわすラオン。
 レッド王国の騎士団の人たちは、近くまで来ると、見たことのない魔獣を召喚させて、ブルー王国騎士団の前を阻んだ。
「魔獣を倒すことを第一優先にするぞ!向こうの魔力切れを狙う!シューター部隊、構えろ!打て!」
 シルクさんの指示が飛んだ。
 一斉に放たれる魔法銃の音。
 エミルさんは、大剣を持つタツさんと本気で戦っている。
「おっと」
 ラオンの短剣が俺の首を狙った。体を反らせて避ける。
 いつもとは格段に違う戦い。
「魔力供給開始するぞ!構えろ!」
 シルクさんの声と共に、魔力供給が開始される。
 騎士団員達の覇気も、エミルさんや俺につられて上がっているようだった。
 戦闘終了の鐘が鳴り響いた。
 だけれど、俺たちは戦うことをやめなかった。
 今日、世界は動き出すんだ。歴史が変わるんだ。
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