真の敵は愛にあり

Emi 松原

文字の大きさ
上 下
71 / 83
告げられた計画・最後の覚悟の呪文

1-1

しおりを挟む


 朝、騎士団全員に伝達があった。
 それは、明日の朝、騎士団全員を集めて、重要な計画が告げられるということだった。
 俺とアマナ、ブラン、モカは顔を見合わせた。
 ついに、特別騎士団の人たちが動き出すのだろうか。
 全員が、同じことを思っていたと思う。
 だけれど、誰もそのことに触れず、俺たちは今日の戦闘に向かった。


 いつものように、ラオンと俺はぶつかり合っていた。
「ラオン、君たちの国では何か変わったことがあったかい?」
 俺は、スピアを回して周りに砂埃を起こし、周りからの視線を隠すようにしてラオンに聞いた。
「いや、なんもねぇけど。……お前の方ではあったんだな?」
 ラオンが、俺の後ろに回って、短剣を向けた。ブランが牽制の射撃をして、さらに砂埃が立つ。スピアを回しながら振り返る俺。
「あぁ。明日の朝、騎士団員全員に招集がかかったんだ」
 俺の振り上げたスピアを、短剣で跳ね返すラオン。
「……歴史がどうのこうのなるんだろ。多分、今日大将戦で、タツさん達が意思疎通を図るんだろう。そっちの人間が指揮をとってるんだからな。そうなれば、俺にも何か連絡があるはずだ」
 ラオンの短剣が、俺に迫る。俺はスピアの柄で受け止めた。
 俺は、ラオンだけに分かるように、黙って頷いた。
 程なくして、大将戦が始まった。
 俺たちは、黙ってその光景を見つめていた。

 
 その日の夜、俺たちはいつもより口数が少なかった。
 明日何を言われるのか、全く想像ができなくて、正直少し怖かった。
「もう!三人とも、元気ないわね!」
 アマナが、空気を切り裂くように明るく言った。
「コル、あなたの夢が叶うかも知れないのよ。それなのに、怯えている場合じゃないでしょう?」
 相変わらず、アマナは痛いところを突いてくる。
「だって……」
 言い返そうとしたけれど、何も言葉が出てこない。
「……コル。俺は、最後まで君の夢に向かって歩く。君は、俺の見たかった景色を見せてくれた。今なら、兄が命令に背いてでも子供をかばった理由が分かる。最初にコルがラオンに後ろをとられた時、コルがもう一つの覚悟の魔法で吹き飛ばされた時、俺は何もするなと命令されたとしても、牽制の射撃をしただろうし、君を受け止めに行っただろう。勿論、それは君が大切だからだ。だが、きっと兄は、外の人たちに対しても、同じ気持ちでいたのだろう。兄が、本当に優しい人間だったのだと、俺はやっと分かった。だから、明日どんなに計算外のことを言われようと、俺は君の思うように、君と歩く」
 ブランがハッキリと、以前より穏やかになったと感じる声で言った。
「ブラン……」
「私もですっ!私は、ただシルクさんに憧れて、貴族の考え方が違うと思ってっ、だけれどっ、自分が何をしたいのかわからないまま、ここに来ましたっ!そして、私はっ、二人の夢を応援したいと思ったのですっ!一緒に歩きたいと思ったのですっ!だから、最後までお供しますっ!!」
 モカが力強く言った。前は泣いてばかりだったのに……。
 そうだ。俺たちは、ここまで皆で歩いてきた。だから、大丈夫だ。
「ありがとう。アマナ、ブラン、モカ。俺、明日何を言われても、受け止めて前に進むよ。そして、全力で特別騎士団の人の力になるよ」
 俺がそう言うと、三人は笑顔で頷いてくれた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...