真の敵は愛にあり

Emi 松原

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告げられた計画・最後の覚悟の呪文

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 朝、騎士団全員に伝達があった。
 それは、明日の朝、騎士団全員を集めて、重要な計画が告げられるということだった。
 俺とアマナ、ブラン、モカは顔を見合わせた。
 ついに、特別騎士団の人たちが動き出すのだろうか。
 全員が、同じことを思っていたと思う。
 だけれど、誰もそのことに触れず、俺たちは今日の戦闘に向かった。


 いつものように、ラオンと俺はぶつかり合っていた。
「ラオン、君たちの国では何か変わったことがあったかい?」
 俺は、スピアを回して周りに砂埃を起こし、周りからの視線を隠すようにしてラオンに聞いた。
「いや、なんもねぇけど。……お前の方ではあったんだな?」
 ラオンが、俺の後ろに回って、短剣を向けた。ブランが牽制の射撃をして、さらに砂埃が立つ。スピアを回しながら振り返る俺。
「あぁ。明日の朝、騎士団員全員に招集がかかったんだ」
 俺の振り上げたスピアを、短剣で跳ね返すラオン。
「……歴史がどうのこうのなるんだろ。多分、今日大将戦で、タツさん達が意思疎通を図るんだろう。そっちの人間が指揮をとってるんだからな。そうなれば、俺にも何か連絡があるはずだ」
 ラオンの短剣が、俺に迫る。俺はスピアの柄で受け止めた。
 俺は、ラオンだけに分かるように、黙って頷いた。
 程なくして、大将戦が始まった。
 俺たちは、黙ってその光景を見つめていた。

 
 その日の夜、俺たちはいつもより口数が少なかった。
 明日何を言われるのか、全く想像ができなくて、正直少し怖かった。
「もう!三人とも、元気ないわね!」
 アマナが、空気を切り裂くように明るく言った。
「コル、あなたの夢が叶うかも知れないのよ。それなのに、怯えている場合じゃないでしょう?」
 相変わらず、アマナは痛いところを突いてくる。
「だって……」
 言い返そうとしたけれど、何も言葉が出てこない。
「……コル。俺は、最後まで君の夢に向かって歩く。君は、俺の見たかった景色を見せてくれた。今なら、兄が命令に背いてでも子供をかばった理由が分かる。最初にコルがラオンに後ろをとられた時、コルがもう一つの覚悟の魔法で吹き飛ばされた時、俺は何もするなと命令されたとしても、牽制の射撃をしただろうし、君を受け止めに行っただろう。勿論、それは君が大切だからだ。だが、きっと兄は、外の人たちに対しても、同じ気持ちでいたのだろう。兄が、本当に優しい人間だったのだと、俺はやっと分かった。だから、明日どんなに計算外のことを言われようと、俺は君の思うように、君と歩く」
 ブランがハッキリと、以前より穏やかになったと感じる声で言った。
「ブラン……」
「私もですっ!私は、ただシルクさんに憧れて、貴族の考え方が違うと思ってっ、だけれどっ、自分が何をしたいのかわからないまま、ここに来ましたっ!そして、私はっ、二人の夢を応援したいと思ったのですっ!一緒に歩きたいと思ったのですっ!だから、最後までお供しますっ!!」
 モカが力強く言った。前は泣いてばかりだったのに……。
 そうだ。俺たちは、ここまで皆で歩いてきた。だから、大丈夫だ。
「ありがとう。アマナ、ブラン、モカ。俺、明日何を言われても、受け止めて前に進むよ。そして、全力で特別騎士団の人の力になるよ」
 俺がそう言うと、三人は笑顔で頷いてくれた。

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