真の敵は愛にあり

Emi 松原

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終わらせる準備

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「そんなしけた顔してんじゃねぇよ。俺たちは時が来たら、必ずタツさん達から何かを言い渡される。それを完璧にこなすためには、今できることをするしかねぇだろ」
 ラオンがそう言って立ち上がった瞬間、戦闘終了の鐘が鳴り響いた。
 一瞬俺を見ると、目で合図して、レッド王国へ戻っていくラオン。
 もしかして……ラオンは、今、俺を励まそうとしたのか……??
「コル、お疲れ様」
 立ち上がらない俺を心配したのだろう。ブランが俺の隣に立って、手を差し出してくれていた。
「あぁ、ありがとう。……通信、聞いてたよな?」
 俺の言葉に、ブランがしっかりと頷いた。
「アマナも、通信を聞いていたはずだ。今必要なことは、教えてくれるだろう」
 戦闘区域の外に戻りながら、ブランが言った。
 モカとも合流して、俺たちは、戦闘区域の外へと戻った。
「おかえりなさい!コル!ブラン!モカちゃん!」
 アマナがいつものように笑顔で出迎えてくれた。
 俺も、いつものように膝をついてアマナに抱きついた。
 いや、恥ずかしいんだけれど、戦闘が終わったら、一番にアマナを抱きしめたくなるからしょうがない。いつもの光景だ。
 アマナも優しく、俺の頭を撫でてくれる。
「アマナ、テルさんについて、今知っておくべきことを教えてくれるかい?」
 ブランが、アマナに聞いた。
「えぇ、通信は聞いていたわ。そのつもりよ」
 アマナの優しい声が聞こえた。

 俺たち四人は、俺の部屋に戻ってきた。
 いや、正確には、もう俺たち四人の部屋だ。あの日から、全員この部屋で生活をしているし、勧誘者の部屋だけあって、そのスペースもあった。
 アマナが、ノートを開いた。
 俺たちは真剣に、アマナの言葉を待った。
「テルさんが、私たちを見に来たときがあったでしょう?あの時、ヒントをくれたの。それが、歴史。私ね、それまで、覚悟の魔法や、もう一つの覚悟の魔法についても、そのほかのことも、近代魔法を重点的に調べていたの。テルさんの言葉を聞いて、古代魔法に切り替えてから色々分かったのよ。もう一つの覚悟の魔法はね、古代魔法を基盤にしたものだったの。だから、テルさんが、今、歴史について何かをしているということは、必ず意味があると思っていたの」
 アマナの言葉に、俺たちは頷いた。そのまま次の言葉を待つ。
「そこから、歴史と、今の状況を分析しつつ調べていたんだけれどね。興味深い、前国王様が残した、現ブルー王国国王カナト様と、レッド王国国王アルト様二人に向けた、演説での一文を見つけたの。それが、ここ」
 アマナが、ノートを広げて見せてくれた。
 そのページには、当時の演説の一文が書かれていて、大事な所に線が引いてあった。


 アルト、カナト。私は今まで、お前達に、同じものを一つずつ与えたことはなかった。それでもお前達は、一度も争ったことはなく、一つのものを二人で仲良く分け合い、交代で使っていた。だから、それがなんであっても、お前達は一つのものを二人で分け合えると信じている


 一つのものを、二人で分け合える……?どういうことだろう。
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