真の敵は愛にあり

Emi 松原

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違和感の理由

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(ティーサ女王に違和感を感じたんだ。それに、あの場でエミルさん達はこの魔法を使った。エリノア姫とユウト王子は、ティーサ女王に分からないようにやり取りをしている。ラオン、君はどう思った?)
【あの女、俺たちの足下見やがって。俺たちが戦うには、あの国の援助がないと戦えないんだ。あいつがやってることは、戦争を止めることじゃねぇだろ】
(戦争を止めることじゃない?どういうことだ?)
【そんなこともわからねぇのかよ。まぁ、お前の彼女は気がついているようだけれどな。あいつがやってることは、戦争を止めることじゃない。戦争を長引かせることだ。だってそうだろう。本当に兄弟の戦争を止めたかったら、魔力供給を絶ってしまえば、俺たちは何もできないんだから】
 ラオンの感情で、違和感の意味が分かった。
(ティーサ女王は愛という言葉を使いながら、利益を優先していたのか……?)
【多分な。タツさん達はずっとそれに気がついていたんだろう。だから、あんな風にわざと決裂して、王族同士の情報伝達をする必要があった。少なくとも、ユウト王子と、そっちの姫は、話し合おうとしているようだな】
(ラオン……君も凄いな……。俺、双方が納得する形で戦争を終わらせるために自分が何をしたいのか見つけた。俺は、特別騎士団に全力で協力する)
【俺もタツさんの意志が分かったから、乗ってやるよ。あの女の思い通りにいかせるのもしゃくだしな】
 ここで、俺たちの魔法が乱れた。
 まだ、俺たちは、エミルさんほどコントロールも持続もできない。
 頭の中に流れ込んでくる。リーシャが青いバラの花束を笑顔で作っているところ。
 これは……。
【レッド王国では、プロポーズで青いバラの花束を渡すと永遠に幸せになると言われている。いつか……お前にも……】
 ここで、魔方陣が爆発して、俺は後ろに飛んだ。
「コル!!」
 ブランが、しっかりと俺の体を受け止めてくれた。
 また、一気にあの疲労感が襲う。
「コル!大丈夫か!!」
 ブランの言葉に、俺は力なく頷いた。
 そして、ブランの腕の中で安心して、そのまま眠りについたのだった。

 
 目が覚めると、アマナが心配そうに覗き込んでいた。
 また、俺がパニックになるんじゃないかと、心配してくれているのだろう。
 だけれど、俺は大丈夫だ。少しだけれど、ラオンと会話ができたおかげで、ずっと違和感を感じていた理由が分かったのだから。
「アマナ……俺、大丈夫だよ……」
 俺は、途切れ途切れに言った。
 この魔法を使うと、本当に体が言うことを聞かなくなる。
「えぇ、コル。私たちは側にいるわ。もう少し休んで」
 アマナが頭を撫でながら、優しく言ってくれた。
「アマナ……戦争で一番得をするのって、グリーン王国……ティーサ女王だったんだな」
 ベッドの上で、天井を見ながら、俺は言った。
「……えぇ、そうよ」
「どうして、ティーサ女王は、あんなに、愛、愛と言っているのだろう」
「愛にも色々な種類があるのよ」
 アマナが、俺をあやすように言った。
「でも……ティーサ女王は、愛を免罪符に使ってるよ。それに、グリーン王国には魔力の泉がある。俺たちが戦争をしていなくても、全く困らないはずだ……」
「えぇ、コル。その通りね。王族の人たちも……少なくともエリノア姫とユウト王子はそれに気がついている。私たちは、私たちのやるべきことをやりましょう」
「うん……」
 また、瞼が重くなって、俺は深い眠りについた。
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