真の敵は愛にあり

Emi 松原

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違和感の理由

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 次の日から、俺はまた戦場に立っていた。
 ラオンとどんな顔をして刃を交えれば良いんだろう。
 今日も、もう一つの覚悟の魔法を使うべきなのだろうか。
 様々な考えが俺をよぎっていたけれど、ピアスから、タツさんとラオンが飛び込んでくるという報告と、ラオンを迎え撃つように指示が飛ぶ。
 俺は、考えがまとまらないまま、前線に飛び出した。
 いつものように、ラオンの刃をスピアで受け止める。気のせいだろうか、いつもより、力が入っていない気がする。
 俺たちは、外から見たら、激しい戦いをしているのだろうけれど、お互い、明らかにいつもと何かが違うのを感じていた。
 こんな時こそ、もう一つの覚悟の呪文を使うべきなのだろうか。だけれど、正直あの魔法を使うのが怖い。
 いつかアマナが言っていた。知るということには、責任と覚悟が伴う。その通りだ。その言葉の意味が、重みが、今になって分かる。
 そんな戦闘を続けていたら、エミルさんとタツさんの大将戦が始まった。
 エミルさんは、ずっとタツさんと、もう一つの覚悟の魔法を使っている。一度使っただけでも体にあれだけ負担がかかったのに、ずっと。それに、エリノア姫とユウト王子の仲介人もあの魔法でしていた。
 一体、どれだけ辛いんだろう。どれだけ覚悟が強いのだろう。
 もの凄く辛くなったけれど、このまま逃げていたらいけないのも分かった。
 それに、ラオンが平和交渉で何を思ったのかも知りたかった。
 仲良く話なんてできるわけないから、知るにはあの魔法を使わないといけない。
 俺は静かに、ラオンの方を見た。ラオンも俺を見ている。
 乗り越えないといけない。ここで何もしなかったら、俺は、俺の夢から逃げることになる。そんな気がした。
 だから、俺はスピアを投げ捨てて、ラオンの様子を見た。
 ラオンは一瞬驚いた顔をしたけれど、ラオンも武器を投げ捨てた。
 そして俺たちは、手に魔方陣を作り、勇気を出して、ぶつけ合った。

 世界が、また別の場所に変わった。
 色々なものが、流れ込んでくる。耐えられなくなる感情を抑えて、なんとか必要なことをやり取りしなくてはと思った。
 アマナの言っていたように、コントロールしなくては。
 俺は必死で、平和交渉について思い浮かべた。すると、平和交渉での俺からの目線の映像や、言葉を聞いたときの感情が、ラオンに流れ込んでいっているのが分かった。
 うん、上手くいっているはずだ。
 後は、ラオンの平和交渉で見て聞いて感じたものを、俺が上手く受け取るだけだ。
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