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グリーン王国へ
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しおりを挟む俺たちが連れて行かれたのは、お城の最上階にある部屋だった。
まだ、レッド王国のユウト王子と、タツさん、ラオンは来ていない。
「では、皆さまが集まるまでしばらくお待ち下さい」
グリーン王国の従者さんはそう言うと、部屋に俺たちを残して出て行った。
俺は、思わず広い窓に近づいた。
そこは、グリーン王国を一望できるのではないかというくらい高い場所で、窓から見える景色も新鮮そのものだった。
俺たちの国と、全然違う。家が、木でできていないのだから。それに、二階以上の家なんて初めて見た。
「珍しいだろ」
ハッとして見ると、エミルさんが隣に立っていた。
「体の調子は?」
窓の外を見たまま、エミルさんは俺に聞いてきた。
「大丈夫です。二日くらい体が重くて、横になるとすぐ寝てしまっていたのですが、今はなんともありません」
「そうか。ここから見える世界、どう思う?」
突然、エミルさんに聞かれて、俺は戸惑った。どう思うか……?俺は、もう一度窓の外を見た。全てがブルー王国と違う、ここから見える世界を。
「どう……なんでしょう。全部がブルー王国と違いすぎて、不思議な感じです。ブルー王国にはこんなに高い位置から町を見渡せる場所なんてないかもしれないですし……。だけれど……」
「だけど?」
「俺は、ブルー王国の建物の方が好きです。ここから見える色は全部同じで……。ブルー王国のように、もっと色々な色にしないのかなと思いました」
これは、俺の正直な感想だった。
ブルー王国の家は、屋根の色を見れば誰の家か分かるくらい、沢山の色がある。だけれど、ここから見える建物の色は全部灰色で、どの建物がなんなのか、区別ができない。
くくくと、エミルさんが笑った。そして、そのまま俺を見た。
「今日、お前は、私以外の誰に何を問われても、発言しなくて良い。ただここにいて、しっかりと見ておくこと。……向こうのちびと顔を合わせるのは辛いだろうが、乗り越えなければいけない壁だ。分かったな」
エミルさんの言葉に、俺は黙って頷いた。
そのまま、俺はエミルさんに指示された席に座って、その時を待った。
部屋の中に、俺たちと、レッド王国の国王の息子、ユウト王子、タツさんとラオン、そして……グリーン王国のティーサ女王に、ティーサ女王の沢山の護衛の騎士団の人がいた。
俺とラオンは、一瞬目が合ったけれど、すぐにお互いそらしてしまった。
「では、平和交渉を始めましょう。今日は、両国の後継者の方がいらっしゃると聞いています。この話し合いで、ますます平和に近づけることでしょう」
ティーサ女王が、柔らかな声で言った。
この人が、ティーサ女王。グリーン王国は閉鎖的だから、ほとんど知らないけれど、この人が、戦闘時刻と場所を定める提案をしたことだけは知っている。
そのおかげで、一般の人の被害はなくなったし、俺たち騎士団も、休む時間がしっかりとれている。愛の女王と呼ばれるのも分かる気がした。
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